この記事では「一も二もなく」について解説する。
端的に言えば一も二もなくの意味は「とやかく言うまでもなく」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「一も二もなく」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ヤマトススム
10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。
「一も二もなく」には、次のような意味があります。まずは国語辞典で正確な意味をチェックしたあと、さらに詳しい意味まで見ていきましょう。
1.提示されたことに対して、とやかく言うまでもなく。即座に。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「一も二もなく」
提示されたことや指示されたことに対して、とくに反応することもなくそのまま受けれ入れるということです。提示や指示に対しては、場合によっては確認したいことや疑問に感じること、反論したいと思うこともあります。しかし、何も言わずに無条件で受け入れるという意味合いになっていますよ。
次に「一も二もなく」の語源を確認しておきましょう。
「一も二もなく」の「一」や「二」は、何かを言うことです。そこから、確認や疑問、不平不満などを一つや二つさえ言うことなく受け入れるという意味につながっていますよ。また、「四の五の言う」という表現もありますが、こちらの意味はなんらかのことを四つも五つも言うことです。そのため、あれこれと意見や不平不満などを言うという意味合いになっています。
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「一も二もなく」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.学習に便利なスマホアプリを紹介してほしいとお願いされたので、クラスみんなのためになるならと一も二もなく引き受けた。
2.書籍の編集から出版まで期限や時間を厳守してすすめているので、一も二もなく賛成せざるを得なかった。
3.一も二もなく受け入れる態度は先輩受けするかもしれないが、それが正しくて意義のある行動なのかは自分で判断すべきだ。
3つの例文全て、状況に違いはあるものの、何も言わずに無条件に受け入れるようすを表している文になっています。
例文1.は、お願いされたことに対して、クラスのためにと自分で調べた学習に役立つ情報を紹介するという内容です。例文の2.では、仕事における時間の制約から、周囲の提案に承知せざるを得なかったということを表しています。最後の例文については、何でも人の言うとおりにして帰属する意識を持つばかりでなく、自分でもよく考えることが大切であるという文です。
「一も二もなく」の類義語には、「鵜呑みにする(うのみにする)」があります。意味は、物ごとの真意をよく理解せずに受け入れることです。もともとは、鵜が魚を丸呑みにしてしまうことに由来し、かまないで飲み込むことから吟味しないで受け入れるということにつながっています。
とにかく何も言わないで受け入れる「一も二もなく」に対し、言うか言わないかではなく理解していないという「鵜呑みにする」ですが、類似している表現と言えますよ。
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もう一つの類義語には、「真に受ける(まにうける)」があります。相手の言葉通りに、本当であると信じて受け止めるという意味です。「真」は嘘や偽りでなく本当のことを表すので、それを受け入れるということから、言葉通りに信じるという意味につながっています。
「真に受ける」は幅広く使うことができる表現であり、「彼の自慢話を真に受けて聞いていたが、あとでかなり盛られた話であることがわかった」などとして使うことができますよ。
次に、「一も二もなく」の対義語についての説明です。提示されたことに何も言わないということの反対の意味を表す慣用句について、一緒に見ていきましょう。
「一も二もなく」の対義語には、「待ったをかける(まったをかける)」があります。意味は、物ごとの進行をとどめることです。もとは、将棋や碁で相手の手を待ってもらうことや相撲の立ち会いにおいて待ってもらうことを表しており、そこから一般的な表現に広がっています。
相手のアクションに対して、そのまま受け入れるのではなくストップをかけるという意味合いがあるので、ちょうど「一も二もなく」の反対の意味になっていますよ。
もう一つの対義語には、「切り返す(きりかえす)」があります。議論などで、相手に対して素早くやり返すという意味です。もとの意味には、切りつけてきた相手に逆に切ってかかること、格闘技で相手に技をかけられたところに技をかけ返すことなどがあります。
言葉で相手にやり返すという意味では「一も二もなく」とは反対の意味になりますが、状況としては何かを提示されたわけではなく相手に追及などに対する反応という意味では少し違いがありますよ。
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最後に、「一も二もなく」の英訳についての説明です。日本語と言語の違いはありますが、キーワードとなる英単語を使って似た意味を表す英語表現を見ていきましょう。
「一も二もなく」の英訳には、「without question」があります。直訳すると「質問なく」ということで、「疑うことなく」という意味です。「question」は「質問」という意味が代表的ですが、「疑問、疑い」といった意味もあります。
その他、「readily」があり「快く、ちゅうちょなく」といった意味合いです。品詞は副詞なので、動詞に係る形で使う表現になっています。
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今回の記事では「一も二もなく」の意味・使い方・類語などを説明しました。
「一も二もなく」の基本の意味は、あれこれいうまでもなく、異議なくということです。また、無条件に受け入れたあとは、受け入れたり引き受けたりする場合によく使われます。引き受けるかどうかとは関係なく使える類義語の「鵜呑みにする」や「真に受ける」と使い分けるといいですね。