今回は「テロメア」について勉強していこう。

どんな動物にも寿命の目安というものがある。もちろん種や個体、環境等によっての差はありますがな。

動物の寿命を決定づけるものは何か、生化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.動物の寿命

私たちの命には限りがあります。それは人間に限らず、命をもって生まれたものにはいつか終わりが来るのです。今回は動物の寿命について考えてみましょう。

1-1.ヒト

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世界的に見て、日本は長寿の国であることを知っていますか?厚生労働省による最新の調査では、日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳であるという結果が出ています。平均寿命の長さで、日本の女性は世界1位、男性は世界2位という結果です。

どの国の結果を見ても男性より女性の方が長生きな傾向にあるのが気になりますね。これはホルモンのはたらきや新陳代謝に違いがあること、男女でかかりやすい病気が異なること、女性の方が健康に気を遣う傾向にあることなどが要因とされているようです。

詳しい結果はこちら

(出典:厚生労働省)

1-2.イヌ・ネコ

ペットとして人気のイヌやネコについても、寿命に関する調査結果が出ています。一般社団法人ペットフード協会がまとめた「全国犬猫飼育実績調査」によると、イヌの平均寿命は14.44歳、ネコの平均寿命は15.03歳だそうです。イヌの場合はサイズによって結果が異なり、中・大型犬に比べ超小型犬の方が長生きの傾向にあります。ネコの場合、完全に屋内飼育の方がそうでないものよりも長生きする傾向にあるようですよ。

詳しい結果はこちら

(出典:一般社団法人ペットフード協会)

1-3.ゾウガメ

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鶴は千年亀は万年という言葉を知っているでしょうか。鶴や亀は縁起が良いとされる動物です。そのためお祝い事に関するデザインによく使用されています。しかしこの言葉通り鶴は千年亀は万年生きられるわけではありません。鶴の寿命は一般的に2, 30年といわれています。一方で亀、特にゾウガメが動物界でも長寿な生き物です。その寿命はなんと100年を超えるといわれていますよ。

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1-4.ベニクラゲ

全ての動物は老い、いずれは寿命を迎えます。しかしベニクラゲだけは例外です。ベニクラゲは若返りする不老不死の生き物であるといわれています。老いてしまいには溶けていくのがクラゲの最期ですが、ベニクラゲは幼生の姿に戻ることで生まれ変わるのです。ヒトに例えると、死ぬ間際にカラダが溶け、もう一度胎児から人生をスタートさせるようなもの。つまり、永遠に老いることも死ぬこともないのです。捕食者に食べられてしまうまでは、の話ですが。

2.寿命を決める要因

ヒトと動物、種によって寿命には差があることがわかりました。では、その寿命は何によって決まるのでしょうか。

2-1.テロメア

寿命を決めるのは遺伝子レベルに要因がある可能性が大きいということが近年明らかになってきました。それはテロメアという構造の存在です。これはDNA中染色体の末端部分にある構造で、細胞分裂のためにDNAが複製されるにつれて短くなっていきます。分裂を繰り返すたびにテロメアは短くなり、ある一定の長さまで短くなってしまったとき、分裂が正常にされなくなるのです。分裂がされないということは新しい細胞がつくれないということ、細胞は老化した状態のままとなります。もし皮膚が老化した細胞のままになった場合、紫外線やほこりなどによるダメージは蓄積するばかり、乾燥してひどい状態になるでしょう。ではもし内臓の細胞がそうなった場合、どんなことが起きると思いますか?細胞が老化し不具合が起こったとしても修復機能を持たないのですから、いつ動かなくなってもおかしくないのです。

image by Study-Z編集部

いいえ、実はテロメアにも修復機能があるのです。それはがん化した細胞から発見されたテロメラーゼという酵素が関係しています。がん細胞では分裂するたびに短くなるはずのテロメアが修復されていることが明らかとなりました。つまり、テロメラーゼという酵素がテロメアのリミットをなくしたのです。もし体の一部、もしくは全体のテロメアの長さを自由にコントロールできれば、細胞の寿命を伸ばすことにつながるのではないかと期待してしまいますね。しかしそれは簡単ではありません。テロメラーゼが正常な細胞だけでなくがん細胞に機能してしまえば、それらの異常増殖につながってしまうのは明らかです。その微細なコントロールができるかどうかが今後の課題になりそうですね。

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2-2.心拍数

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哺乳類は一生で10~20億回の心拍があるとされ、ヒトの心拍数は1分間に60~100回です。また、一般的に小動物は心拍が速く、大型動物は心拍がゆっくりとされています。そして、小動物は寿命が短く、大型動物は寿命が長い傾向にあるというのも事実です。これらのことから、一生の間の心拍数には限りがあり、心拍がゆっくりであるほど寿命は伸びるのではないかという仮説が生まれました。しかし残念ながらこの説に関する実験がなされていないことから、あくまでも仮設止まりであるというのが事実のようです。

2-3.外的要因

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多くの動物にとって、心拍数よりも寿命に大きく影響を与えるのは環境などの外的要因でしょう。ヒトの場合、育った場所の衛生環境や治安が悪かったり、医療が未発達、貧困層の多い地域などでは乳幼児の死亡リスクが高まります。人間以外の動物では、生息地域や種によって十分なエサがあるか、親元を離れる時期、天候による影響や外敵の有無などが寿命に大きく影響するでしょう。イヌやネコも飼育下と野生では寿命が大きく異なりますが、それは人間によって与えられるエサや医療といったサポートの有無が寿命を左右しているのです。

テロメアの長さが寿命のカギ

命あるもの、いつかは寿命を迎えます。その寿命がどれだけあるかは生物種や生息地などの環境によって異なるでしょう。しかしながら環境などの外的要因による影響を除外したとしても、生物にはもともともっている命のリミットがあるとされています。大きな病気にかかることなく、衣食住が整った環境で生活していても、いつかは死が訪れるのです。これは身体そのものの限界を意味しています。この限界を決めるとされているのがテロメアです。テロメアは命の回数券ともいわれ、長ければ長いほど寿命が長くなると考えられています。これは細胞分裂によって短くなり、テロメラーゼという酵素によって長くなるのです。まだ研究段階ではありますが、ヒトの寿命が100年を超える日もそう遠くないかもしれませんね。

 

画像引用:いらすとや

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理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「テロメア」動物の寿命は何で決まる?元塾講師がわかりやすく解説

今回は「テロメア」について勉強していこう。

どんな動物にも寿命の目安というものがある。もちろん種や個体、環境等によっての差はありますがな。

動物の寿命を決定づけるものは何か、生化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.動物の寿命

私たちの命には限りがあります。それは人間に限らず、命をもって生まれたものにはいつか終わりが来るのです。今回は動物の寿命について考えてみましょう。

1-1.ヒト

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世界的に見て、日本は長寿の国であることを知っていますか?厚生労働省による最新の調査では、日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳であるという結果が出ています。平均寿命の長さで、日本の女性は世界1位、男性は世界2位という結果です。

どの国の結果を見ても男性より女性の方が長生きな傾向にあるのが気になりますね。これはホルモンのはたらきや新陳代謝に違いがあること、男女でかかりやすい病気が異なること、女性の方が健康に気を遣う傾向にあることなどが要因とされているようです。

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(出典:厚生労働省)

1-2.イヌ・ネコ

ペットとして人気のイヌやネコについても、寿命に関する調査結果が出ています。一般社団法人ペットフード協会がまとめた「全国犬猫飼育実績調査」によると、イヌの平均寿命は14.44歳、ネコの平均寿命は15.03歳だそうです。イヌの場合はサイズによって結果が異なり、中・大型犬に比べ超小型犬の方が長生きの傾向にあります。ネコの場合、完全に屋内飼育の方がそうでないものよりも長生きする傾向にあるようですよ。

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(出典:一般社団法人ペットフード協会)

1-3.ゾウガメ

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鶴は千年亀は万年という言葉を知っているでしょうか。鶴や亀は縁起が良いとされる動物です。そのためお祝い事に関するデザインによく使用されています。しかしこの言葉通り鶴は千年亀は万年生きられるわけではありません。鶴の寿命は一般的に2, 30年といわれています。一方で亀、特にゾウガメが動物界でも長寿な生き物です。その寿命はなんと100年を超えるといわれていますよ。

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