この記事では「気を回す」について解説する。

端的に言えば気を回すの意味は「あれこれ考える」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「気を回す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻していた。実は典型的な「本番前までに疲れる」タイプ。もちろん損な性格だと分かってはいるものの、どうしてもいろいろなことに「気を回す」ため、常にそうなってしまう。

「気を回す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「気を回す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「気を回す」の意味は?

「気を回す」には、次のような意味があります。

必要以上にあれこれ考える。よけいな憶測や邪推をする。「変に―・しすぎる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気(き)を回・す」

「気を回す」は、ちょっと考えてみるというよりは、あれこれ熟考するというニュアンスです。それも、次から次へと楽しいことを考えるというよりは、この後何か起こったらどうしようという心配や不安な気持ちがあります。ネガティブ思考という言葉を聞いたことはありますよね。最悪の事態を想定するといった意味合いですが、「気を回す」には、そういったイメージが重なるのではないでしょうか。

「気を回す」の語源は?

次に「気を回す」の語源を確認しておきましょう。「」とは、関心したりや心配したりなど、心の動きを表す言葉です。では、「回す」とはどういうことでしょうか。もちろん心をグルグル回転させるなんてことはできませんので、ちゃんとした意味があるはずです。辞書で確認してみましょう。

\次のページで「「気を回す」の使い方・例文」を解説!/

1、軸を中心にして、円を描くように動かす。回転させる。「腕を―・す」「プロペラを―・す」

2、周囲を取り巻くようにする。めぐらす。「敷地に柵を―・す」

3、順に送り渡す。「杯を―・す」「通知を―・す」

4、人や物を必要とする場所へ移す。「総務から営業へ人員を―・す」「出先に車を―・す」「預金の一部を学費に―・す」

5、その立場に置く。「敵に―・す」

6、配慮などを行き渡らせる。「気を―・す」「手を―・す」

7、利益を得るように金銭を運用する。「高利で―・す」

8、㋐自分の意のままに人を使う。「あの女に―・さるる女郎いとしや」〈浮・好色盛衰記〉 ㋑遊里で、客が遊女や幇間(ほうかん)を思うままに従わせる。「太鼓持ちは、ある知恵を隠して、我より鈍い客に―・さるるがよし」〈浮・禁短気・三〉

9、動詞の連用形に付いて、全体に…する、あちこち…する、また、さんざん…する、の意を表す。「いじくり―・す」「追っかけ―・す」「引っ張り―・す」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「回・す」

6に「気を回す」の記載がありました。「気を回す」の「回す」とは、「配慮などを行き渡らせる」という意味です。つまり、「心配事を頭の中で行き渡らせる」という意味となります。

辞書を検索すると、「回す」にはいろいろな意味があるように見えますが、「円を描く」という意味の他はみなイメージは「めぐらせる、循環させる」です。そういえば、「深夜の牛丼屋を1人で回す」「小さな店舗をフル回転させる」なんて見たことがあるのではあるのではないでしょうか。もちろんお店がくるくる回るはずもなく、「営業する、切り盛りする」などと同義です。お店側の配慮が隅から隅まで人体のように全身を循環していると考えれば、「回す」という言葉にも納得がいくのではないでしょうか。

「気を回す」の使い方・例文

「気を回す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.朝礼では、社長が朝から少しでも機嫌を損ねないようにと、会社のみんなが仕事以上に気を回す。
2.大切な友人があらかじめ気を回してくれたおかげで、初めて広島で単独行動しても戸惑うことはなかった。
3.このメーカーは予期せぬ事態に備えてかなり気を回しているせいか、不具合があった場合の対処法だとかサポートセンターへの連絡先だとかでマニュアルの量がすごい。

あれこれと考えている様子がイメージできますでしょうか。要らぬ心配や余計なお世話までもしている光景が目に浮かべば、「気を回す」という言葉の意味がなんとなくでもつかめています。ただ思いついているだけではない、いろいろと思いめぐらせているということが「気を回す」という言葉の意味です。

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「気を回す」の類義語は?違いは?

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ところで、「気を回す」の類義語は何になるのでしょうか。違いも合わせて説明します。

「懸念する」

懸念する」(けねんする)とは、「気にかかって不安に思う」という意味です。ネガティブな思考になるという点では、「気を回す」と共通していると言えます。

ただ、「懸念する」ではなんだか不安な気持ちになることにとどまるのに対し、「気を回す」ではさらに不安に思っていろいろと考え込むところまでに至るのです。「懸念(する)」は不安な気持ち、「気を回す」は不安になってあれこれ考える、ともう1段階あることに注目してください。

「気を回す」の対義語は?

では、「気を回す」の対義語は何でしょうか。

「安心する」「安堵する」

「気を回す」を、いわゆる対義語辞典を利用して検索しても、検索結果が得られません。ならば、どうすればいいのでしょうか。それは「気を回す」の意味を再確認することです。

「必要以上にあれこれ考える、よけいな憶測や邪推をする」、これが「気を回す」の意味でしたよね。つまり、何事かが起こらなければいいのにと思うことですので、「心配する」「危惧する」「憂慮する」などと言い換えることができます。すると、「心配」と「危惧」には対義語があるので、それらを「気を回す」の対義語とすればよいのです。よって、「心配(する)」の対義語「安心(する)」(あんしんする)や「危惧(する)」の対義語「安堵(する)」(あんどする)が当てはまります。

「気を回す」の英訳は?

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ならば、「気を回す」の英訳はどうなるのでしょうか。

「suspect」

「気を回す」には、「suspect」(サスペクト)という動詞がピッタリです。「疑う、怪しむ、うすうす気付く」などの和訳も当てられます。

ちなみに、「suspect」は名詞だと「容疑者」という意味で使われ、「murder suspect」とは「殺人容疑者」のことです。彼が犯人なのではとあれこれ考える、まさに「気を回す」という場面ですよね。

\次のページで「「気を回す」を使いこなそう」を解説!/

「気を回す」を使いこなそう

この記事では「気を回す」の意味・使い方・類語などを説明しました。

いつも「気を回す」のは疲れますよね。しかし、あなたが気を回してくれるおかげで、助かっている人がどれだけいることでしょうか。きっと周りのみんなは、注意が隅々までに行き渡っていて、みんなをフォローできるように努力してくれるあなたという人間を評価してくれています。利他的であるということは、実は自分の評価を高めているため利己的とも言えるのです。「気を回す」ことにメリットがない、面倒だと感じたら、まずは自分が気を回してもらった時のことを考えましょう。

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【慣用句】「気を回す」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「気を回す」について解説する。

端的に言えば気を回すの意味は「あれこれ考える」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「気を回す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻していた。実は典型的な「本番前までに疲れる」タイプ。もちろん損な性格だと分かってはいるものの、どうしてもいろいろなことに「気を回す」ため、常にそうなってしまう。

「気を回す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「気を回す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「気を回す」の意味は?

「気を回す」には、次のような意味があります。

必要以上にあれこれ考える。よけいな憶測や邪推をする。「変に―・しすぎる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気(き)を回・す」

「気を回す」は、ちょっと考えてみるというよりは、あれこれ熟考するというニュアンスです。それも、次から次へと楽しいことを考えるというよりは、この後何か起こったらどうしようという心配や不安な気持ちがあります。ネガティブ思考という言葉を聞いたことはありますよね。最悪の事態を想定するといった意味合いですが、「気を回す」には、そういったイメージが重なるのではないでしょうか。

「気を回す」の語源は?

次に「気を回す」の語源を確認しておきましょう。「」とは、関心したりや心配したりなど、心の動きを表す言葉です。では、「回す」とはどういうことでしょうか。もちろん心をグルグル回転させるなんてことはできませんので、ちゃんとした意味があるはずです。辞書で確認してみましょう。

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