

端的に言えば口裏を合わせるの意味は「話の内容を示し合わせておくこと」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んだ。一緒に「口裏を合わせる」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/Hata
以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。
「口裏を合わせる」の意味は?
「口裏を合わせる」には、次のような意味があります。
あらかじめ相談して話の内容が食い違わないようにする。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「口裏を合わせる」
「口裏を合わせる」とは、事前に相談して話の内容を示し合わせておくこと。複数人での打ち合わせや会議といった場で、表向き矛盾が生じないようにするときに用いられる用語です。端的に「口裏合わせ(くちうらあわせ)」ということもあり、一般的な日常生活でもよく耳にする慣用句でしょう。
一般的には、利害関係が一致する者同士が事前に話を作り上げて根回しをする時に用います。陰でこっそり、というと嫌なイメージがあるかもしれませんが、時には相手のためを思って打ち合わせることもありえるでしょう。
そのため、「口裏を合わせる」という言葉自体には否定的な意味は含まれていません。文脈に応じてニュアンスは変わるので注意が必要です。
「口裏を合わせる」の語源は?
次に「口裏を合わせる」の由来を確認しておきましょう。
まず「口裏(くちうら)」とは、言葉や話し方の裏に隠されたもののこと。その人の心中がわかるような話し方や言葉そのものを指すこともあります。「口裏を合わせる」は、これを察して合わせておくことから生まれた言葉です。この「口裏」という言葉は本来「口占(くちうら)」と書き、人の言葉を聞いて吉凶を占うことを意味します。表向きの言葉から裏にある本心を察するという様子の「口占」。これが“言葉の裏側=口裏”と派生し、「口裏」と書かれるようになったのが、「口裏」の語源です。
なお、鎌倉中期から後期の軍事物語である『源平盛衰記(げんぺいじょうすいき)』には、「源氏追討の宣命(せんみょう)に、源繁昌の口占ありとぞ私語(ささや)きける」という一節で「口占」が用いられています。