この記事では「待てど暮らせど」について解説する。

端的に言えば「待てど暮らせど」の意味は「長く待っても望みが実現しないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「待てど暮らせど」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「待てど暮らせど」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「待てど暮らせど」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「待てど暮らせど」の意味は?

「待てど暮らせど」には、次のような意味があります。

いくら長く待っても期待している事が実現しないさまを表す。あとに打消しの語を伴って副詞的に用いる。「待てど暮らせどたよりが来ない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「待てど暮らせど」

この言葉は「いくら待っても~しない、望みが叶わない」という意味の慣用表現です。ポイントは後ろに必ず打ち消し・否定形を伴って、「待てど暮らせど~しない」という表現になること。肯定文で使用されることは無いので、ここをまず押さえましょう。

「暮らす」は「生活する、日々が過ぎること」の言い換えたもので、実際にどれくらい時間が経っているのかは重要ではありません。「とにかく待っても待っても」と、待つことが強調され、その人にとって「こんなにも待ち遠しい」というニュアンスが大切であることも覚えておきましょう。

「待てど暮らせど」の語源は?

次に「待てど暮らせど」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、特別な出典からではなく言葉の用法から作られた表現のようです。言葉を分解すると「待てど」と「暮らせど」。この「ど」がわかりづらいポイントですが、これはもともと「ども」という表記が省略された形で、「待てども、暮らせども」となります。「ども」は、難しい言い方をすれば逆説の接続助詞。みなさんも使う「けれど」「けれども」の「ど」「ども」と同じ働きをすると言えば、意味が想像しやすいでしょう。

これが「待っても待っても」「何日経っても」を意味する「待てども、暮らせども(~しない)」という言い回しが、慣用句的に定着したのだと考えられます。現代とは違って電話やメールが無く、待つことしかできなかった人々が、一日一日を数えながら思いを馳せていたことを想像すると、その待ち遠しさも想像しやすいのではないでしょうか。

\次のページで「「待てど暮らせど」の使い方・例文」を解説!/

「待てど暮らせど」の使い方・例文

「待てど暮らせど」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・オープンしたてのオンラインストアで注文したものが、待てど暮らせど送られて来ず、問い合わせても状況がわからなくて、類似の品物を買う結果となってしまった。

・東京で開催されたアートの展覧会だったが、人気画家の制作に遅れがあり、待てど暮らせど作品が来ず、クレーム騒ぎになってしまった。

・有名な詩人が詩集の発行に合わせてゲストに来る予定だったのだが、待てど暮らせど本人が表れず、本屋も出版社の人も無難なコメントで場を繋ぐしかなかった。

どんなに時間が経っても、望みが実現しない」というニュアンスが伝わりますでしょうか。語源の項でも書いたように、昔は現代よりも更に待つしかないという状況が多かったはず。今日、明日と毎日数えていたら、待ち遠しさも募るでしょうね。そんな待ち遠しさも、度を過ぎると、例文二番目のように「実現しないことへの不満(クレーム)」などに繋がることもあるはず。

この言葉が読解問題などに登場した場合は、人物の心情に注目するようにしましょう。待ち遠しさだけではなく、「こんなに待っているのに」という恨み節のようなものも読み取れるかもしれません。自分の期待がずっと叶えられないままでいたら、と想像してこの言葉を使ってみましょう。

「待てど暮らせど」の類義語は?違いは?

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「待てど暮らせど」の類義語は「一日千秋(いちじつせんしゅう)」が考えれられます。

「一日千秋」

「一日千秋」は「非常に待ち遠しいこと。何かを思い慕うこと」を意味する四字熟語です。もともとは「一日三秋(いちじつさんしゅう)」という言葉があり、そこから変化したものと考えられています。これは「一日会わないと三年も会わなかったかのように思うこと」の意味で、それほど、また会うのが待ち遠しかったということなのですね。

「待てど暮らせど」のように否定形を伴うことはなく、待ち遠しい思いを表現できます。それぞれ使い分けてみるのもいいでしょう。

\次のページで「「待てど暮らせど」の対義語は?」を解説!/

学生時代からのアイデアをついに実現させた社長は、「一日千秋の思いでみなさまの日々のご利用を心からお待ちしております」とブログの最初の投稿にそう書いた。

「待てど暮らせど」の対義語は?

「待てど暮らせど」の対義語は「軽挙妄動(けいきょもうどう)」などが考えられます。

「軽挙妄動」

「軽挙妄動」は、「軽はずみで、向こう見ずな行動をすること」を意味する四字熟語です。「待てど暮らせど」が長い日々を待っていたのに対し、こちらはまさに逆の意味になりますね。「向こう見ず」という意味が入っているように、焦って行動することに対してネガティブなイメージがあることもわかります。慌てて行動するのを戒める言葉として「急いては事を仕損じる」や「慌てる乞食はもらいが少ない」などを聞いたことがある人もいるでしょう。

けれど「待てど暮らせど」では、いつまでも欲しいものが手に入らないかもしれません。何事にも、バランスが大切ということなのかもしれませんね。

あの政治家は、前回の選挙の前後もその軽挙妄動な活動で世間を騒がせていて、あの不安定さでは当選は難しいだろうと誰もが考えている。

「待てど暮らせど」の英訳は?

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「待てど暮らせど」の英訳は「waited and waited, but ~」で表すことができます。

「waited and waited, but ~」

これは動詞を重ねることで強調の意味になるフレーズです。後ろに「but ~」を繋げることで否定の意味を持たせています。「暮らせど」の部分も直訳する必要はなく、このように「ひたすら待っている」と言った方が意味が通じるでしょう。「長く待っていたが」と言うだけであれば「waited long time, but ~」でも構いません。

下の例文のように、後ろの文章に強調の「never」を入れるなどして、どれくらい待ち遠しかったのか、あるいは実現できなくて悲しいのかまで表現できるといいでしょう。

\次のページで「「待てど暮らせど」を使いこなそう」を解説!/

I waited and waited, but he never appeared.
待てど暮らせど、彼はついにやって来なかった。

「待てど暮らせど」を使いこなそう

この記事では「待てど暮らせど」の意味・使い方・類語などを説明しました。ただ「待つ」というだけでもヤキモキして辛いものですが、それがとても強く表れている言葉でしたね。

一日一日が過ぎ、さらには季節まで変わり年月までも、と考えると、楽しみを通り越して悲しくなるかもしれません。この言葉が慣用句として使われるようになったのは、人々の「待つ」ことへの思いが表れているかも、と考えさせられました。

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【慣用句】「待てど暮らせど」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「待てど暮らせど」について解説する。

端的に言えば「待てど暮らせど」の意味は「長く待っても望みが実現しないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「待てど暮らせど」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「待てど暮らせど」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「待てど暮らせど」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「待てど暮らせど」の意味は?

「待てど暮らせど」には、次のような意味があります。

いくら長く待っても期待している事が実現しないさまを表す。あとに打消しの語を伴って副詞的に用いる。「待てど暮らせどたよりが来ない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「待てど暮らせど」

この言葉は「いくら待っても~しない、望みが叶わない」という意味の慣用表現です。ポイントは後ろに必ず打ち消し・否定形を伴って、「待てど暮らせど~しない」という表現になること。肯定文で使用されることは無いので、ここをまず押さえましょう。

「暮らす」は「生活する、日々が過ぎること」の言い換えたもので、実際にどれくらい時間が経っているのかは重要ではありません。「とにかく待っても待っても」と、待つことが強調され、その人にとって「こんなにも待ち遠しい」というニュアンスが大切であることも覚えておきましょう。

「待てど暮らせど」の語源は?

次に「待てど暮らせど」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、特別な出典からではなく言葉の用法から作られた表現のようです。言葉を分解すると「待てど」と「暮らせど」。この「ど」がわかりづらいポイントですが、これはもともと「ども」という表記が省略された形で、「待てども、暮らせども」となります。「ども」は、難しい言い方をすれば逆説の接続助詞。みなさんも使う「けれど」「けれども」の「ど」「ども」と同じ働きをすると言えば、意味が想像しやすいでしょう。

これが「待っても待っても」「何日経っても」を意味する「待てども、暮らせども(~しない)」という言い回しが、慣用句的に定着したのだと考えられます。現代とは違って電話やメールが無く、待つことしかできなかった人々が、一日一日を数えながら思いを馳せていたことを想像すると、その待ち遠しさも想像しやすいのではないでしょうか。

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