この記事では「暖衣飽食」について解説する。

端的に言えば暖衣飽食の意味は「良い着物を身に着けて、心ゆくまで良い食事を食べること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

難関高校受験専門の学習塾講師を10年経験したwhite-sugarを呼んです。一緒に「暖衣飽食」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/white_sugar

文系中心に5教科オールラウンダーとして難関校専門学習塾講師を10年務めた後、引退。開成高校、筑波大学付属駒場高校を筆頭に早慶附属・系属高校など首都圏最難関クラスの高校合格者を多数輩出。

「暖衣飽食」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「暖衣飽食」の意味は?

「暖衣飽食」には、次のような意味があります。辞書の例を確認してみましょう。

暖かい着物を着、飽きるほど食べること。何の不足もなく生活する意。飽食暖衣。

出典:精選版 日本国語大辞典(三省堂)「暖衣飽食」

暖かい着物を着て、飽きるほど食べること。十分に恵まれた生活をいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「暖衣飽食」

それでは早速「暖衣飽食」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「暖衣飽食」は「だんいほうしょく」と読みます。「煖衣飽食」と書くこともありますね。「暖」も「煖」も、「あたたかい」という意味です。ですから「暖衣」は「衣料品をたくさん着込んで体を温かくすること」になります。

「飽食」もよく見かける言葉ですが、念のため確認しましょう。「飽」は「飽きる」、「食」は「食べる」ですから、「飽きるほど食べる・食べられる」という意味です。転じて「満足するまで食べられるほど、食料が豊かである、食べ物に何不自由しない状態」を意味します。

ですから、これらの2つの意味を合わせた「暖衣飽食」は「暖かな衣服に身を包まれ、おなかいっぱい食べられること」、「衣食住に何不自由しない、恵まれた贅沢な環境」という意味になるんですね。

\次のページで「「暖衣飽食」の語源は?」を解説!/

「暖衣飽食」の語源は?

次に「暖衣飽食」の語源を確認しておきましょう。多くの四字熟語と同じく、「暖衣飽食」のルーツは中国です。ただし、古代の文献では「飽食煖衣」の形が多いですね。

「孟子」にはこんなエピソードが収録されています。まだ人々が満足な暮らしを営めない頃、ある聖人が治水を行い、作物の耕作や収穫を教え、人々の営みが整いました。しかし、「暖衣飽食」状態の人間は、動物と変わりません。そこで聖人は人々に教育を施し、法や秩序を守ることを教え・広めたのです…。

「荀子」にも登場します。ここでは「長生久視(不老長寿と同義)」と「暖衣飽食」が、庶民の一番の願いとして記されているようです。

「暖衣飽食」の使い方・例文

それでは、「暖衣飽食」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「暖衣飽食」が当然だと考える人が増え、食品ロスが多くなっているのは嘆かわしい。
2.「暖衣飽食」に慣れた人は、災害などの危機に弱いとされるが、はたしてそうだろうか。
3.子供が毎日清潔な服を着て、ひもじい思いをしない。「暖衣飽食」、結構なことだ。

「暖衣飽食」は豊かな状態、ひいてはぬくぬくとしたぬるい環境という意味で使われることも多いため、やや批判的なニュアンスで使われることが多いです。例文1・2が典型例ですね。

物質的に豊かな暮らしができる、という肯定的な意味合いで使われることもないわけではありません。例文3のように使うこともありますよ。

「暖衣飽食」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

暖衣飽食には類義語がたくさん存在します。

\次のページで「「錦衣玉食」」を解説!/

「錦衣玉食」

「錦衣玉食」は「きんいぎょくしょく」と読みます。「暖衣飽食」と同じく「衣」と「食」を使っていますね。織物にも「錦」があります。錦織だけではなく、美しいもの・尊いものに「錦」という言葉を、昔からあててきました。「錦の御旗」や「故郷に錦を飾る」が典型例です。ですから「錦衣」とは贅沢で美しい服という意味になります。

「玉」もいわゆる「たまっころ」の意味ではありません。「珠玉」などで使われるように、美しく貴重な石(中国の場合だと主に質の良い翡翠)を指します。ですから「玉食」とはすばらしい食事、上等な食べ物という意味です。よって「錦衣玉食」も「暖衣飽食」と同じく、贅沢なくらしをする例えとして使われます。また、そのような暮らしができるような、高い身分を指すこともありますよ。「錦」や「玉」といったきらびやかな文字が使われているせいかもしれませんね。

「豊衣足食」

「豊衣足食」は「ほういそくしょく」と読みますよ。

「豊衣」は着る物が豊富なこと、あるいはゆったりと余裕のある服という意味です。「足食」は読んで字のごとく、食べ物が足りていることを指します。

着るもの・食べ物に不自由しない、豊かな生活を意味しますが、文字からは派手さは感じられませんね。

「侈衣美食」

「侈衣美食」は「しいびしょく」と読みます。「侈」には驕る、贅沢な、大きな、と意味が複数存在しますよ。「奢侈」という言葉を目にしたことがある人もいるでしょう。贅沢といっても「必要以上に」、というニュアンスを含んでいるので、「暖」、「錦」、「豊」に比べてマイナスイメージが強いですね。

「美食」は今更解説する必要もないでしょう。「侈衣美食」も贅沢な暮らし、という意味がありますが、これまで登場した四字熟語よりも華美なイメージがつきます。

「暖衣飽食」の対義語は?

暖衣飽食には類義語がたくさん存在しました。では、対義語はどのようなものが存在するのか、確認していきましょう。

「悪衣悪食」

「暖衣飽食」の対義語として良く上げられるものに「悪衣悪食(あくいあくしょく)」があります。この場合の「悪」は善悪の「悪」ではなく、粗末な、みすぼらしいという意味です。よって「悪意悪食」は粗末な着物をきて粗末な食べ物を口にする状況、質素な暮らしという意味になります。

なお「悪食」を「あくじき」と読むのは、普通の人食べないものを好んで食べる、いわゆる「ゲテモノ食い」のこと。この場合、「悪衣悪食」のように四字熟語としては使わず、「悪食」単独で使用します。

「粗衣粗食」

誤解を招きにくいのは「粗衣粗食(そいそしょく)」でしょう。粗末な着物、粗末な食事を端的に示し、質素で慎ましやかな生活を意味します。

\次のページで「「暖衣飽食」の英訳は?」を解説!/

「暖衣飽食」の英訳は?

image by iStockphoto

中国由来の「暖衣飽食」ですが、似た概念を表す言い回しは、英語にもあるんですよ。

「well-fed and well-dressed」

「well-fed」はきちんと食事を与えられている、栄養が十分である、丁寧に育てられている、というような意味です。「well-dressed」は身なりの良い、きちんとした服を着た、という意味。それぞれ単独で使うことも多いですが、組み合わせることによって「暖衣飽食」とほぼ同じように使います。

「eat well and dress well」にすると動詞としても使えますよ。

 

「live in luxury」

「well-fed and well-dressed」は「暖衣飽食」同様に「衣」と「食」に焦点を当てた表現でした。贅沢に過ごす、というざっくりとした意味では「live in luxury」を使うとシンプルです。「luxury」は英語と日本語で発音の違いはありますが「ラグジュアリー」という言葉も定着しています。記憶するのにほぼ負荷がかからないイディオムではないでしょうか。

「暖衣飽食」を使いこなそう

この記事では「暖衣飽食」の意味・使い方・類語などを説明しました。同じような感じを使うものばかりですから、無理に全部覚える必要はありません。目にしたとき、耳にしたときにピンと来る程度で十分ですよ。

" /> 【四字熟語】「暖衣飽食」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【四字熟語】「暖衣飽食」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「暖衣飽食」について解説する。

端的に言えば暖衣飽食の意味は「良い着物を身に着けて、心ゆくまで良い食事を食べること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

難関高校受験専門の学習塾講師を10年経験したwhite-sugarを呼んです。一緒に「暖衣飽食」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/white_sugar

文系中心に5教科オールラウンダーとして難関校専門学習塾講師を10年務めた後、引退。開成高校、筑波大学付属駒場高校を筆頭に早慶附属・系属高校など首都圏最難関クラスの高校合格者を多数輩出。

「暖衣飽食」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「暖衣飽食」の意味は?

「暖衣飽食」には、次のような意味があります。辞書の例を確認してみましょう。

暖かい着物を着、飽きるほど食べること。何の不足もなく生活する意。飽食暖衣。

出典:精選版 日本国語大辞典(三省堂)「暖衣飽食」

暖かい着物を着て、飽きるほど食べること。十分に恵まれた生活をいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「暖衣飽食」

それでは早速「暖衣飽食」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「暖衣飽食」は「だんいほうしょく」と読みます。「煖衣飽食」と書くこともありますね。「暖」も「煖」も、「あたたかい」という意味です。ですから「暖衣」は「衣料品をたくさん着込んで体を温かくすること」になります。

「飽食」もよく見かける言葉ですが、念のため確認しましょう。「飽」は「飽きる」、「食」は「食べる」ですから、「飽きるほど食べる・食べられる」という意味です。転じて「満足するまで食べられるほど、食料が豊かである、食べ物に何不自由しない状態」を意味します。

ですから、これらの2つの意味を合わせた「暖衣飽食」は「暖かな衣服に身を包まれ、おなかいっぱい食べられること」、「衣食住に何不自由しない、恵まれた贅沢な環境」という意味になるんですね。

\次のページで「「暖衣飽食」の語源は?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: