この記事では「顔が立つ」について解説する。

端的に言えば顔が立つの意味は「世間に対して面目が保たれること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「顔が立つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「顔が立つ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顔が立つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「かおがたつ」です。

「顔が立つ」の意味は?

「顔が立つ」には、次のような意味があります。まずは国語辞典で正確な意味を確認してから、さらに関連する詳しい意味まで見ていきましょう。

1.世間に対して面目が保たれる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「顔が立つ」

なにか自分にとってマイナスの要因となる可能性のある出来事があった際に、世間の人々や周囲の人々からの自分への評価が下がることがなく今まで通りに保たれることを表しています。

マイナスの要因となる出来事とは、自分の不手際や不測の事態のほか、他人の活躍によって自分の相対的評価に影響する場合などさまざまです。しかし、その出来事の内容に関わらず、評価が下がる可能性があった状態から、下がらずに済んだということを意味します。

「顔が立つ」の語源は?

次に「顔が立つ」の語源を確認しておきましょう。

「顔が立つ」の「顔」は社会に対する体面や名誉のこと、「立つ」は物ごとが損なわれないで保たれるということです。そこから、体面が損なわれることなく保たれるという意味につながっています。

18世紀の浄瑠璃『関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)』に「顔が立つ」という言葉が出てくることから、江戸時代には使われていた表現であることがわかりますね。

\次のページで「「顔が立つ」の使い方・例文」を解説!/

「顔が立つ」の使い方・例文

「顔が立つ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.会社では環境委員に委嘱されたこともあり委員会で偉そうに意見や提言をしているが、家では妻が古紙や牛乳パックのリサイクルをしてくれているので顔が立つ。

2.この件の発案者である社長の顔が立つように、事前に検討事項を協議し賛同を得ておいたので、取締役会では思惑通り全員賛成で決議された。

3.無事に新製品発売を迎えて、設計や製造、原料調達や価格調整をしてくれた人たちへ感謝の気持ちでいっぱいになり、自分の顔が立つかどうかなどは考えもしなかった。

いずれの例文でも、「顔が立つ」について、周囲の人々や関係などに対して自分への評価が保たれるという意味合いで使っています。

例文1.では、本人が意見を表明するなどしている一方で、家庭では妻がさまざまな方法で環境に配慮した行動を取ってくれていることにより一定の評価を得ることができているということです。例文の2.は、社長への評価が保たれるように、意見を一致させておくなど全てお膳立てしておいたということが書かれています。最後の例文は、新しい商品を生み出すには人の手を借りることが多く、人間関係に助けられて、自分の評価のことは頭になかったという文です。

「顔が立つ」の類義語は?違いは?

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それでは、「顔が立つ」の類義語についての説明です。似た意味の慣用句について、一緒に詳しく見ていきましょう。

「体面を保つ」

「顔が立つ」の類義語には、「体面を保つ(たいめんをたもつ)」があります。意味は、人が世間に対して持っている誇りや面目を維持するということです。「体面」とは世間に対する体裁や世間体のことなので、周りからの評価を維持するということにつながります。

また、「体面」を使った言葉としては、評価に影響することを「体面に関わる」、評価が下がる場合に「体面をけがす」「体面を傷つける」などがありますよ。

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「面目を施す」

もう一つの類義語には、「面目を施す(めんぼく/めんもくをほどこす)」があります。名誉や評判を高めたり体面を高めるという意味です。「面目」とは世間からの評価のこと、「施す」は何かを行い改善や好転を期待することという意味があります。

「顔が立つ」や「体面を保つ」は現状維持の意味合いが強くなりますが、「面目を施す」は現状維持の場合と今以上に高める意味合いが含まれているところに違いがありますよ。

「顔が立つ」の対義語は?

次に、「顔が立つ」の対義語についての説明です。ちょうど反対の意味合いになる慣用句やことわざなどについて、一緒に見ていきましょう。

「顔が潰れる」

「顔が立つ」の対義語には、「顔が潰れる(かおがつぶれる)」があります。意味は、名誉を傷つけられたり面目を失うことです。何らかの出来事によって、周囲からの評価を下げてしまったり、恥をかいたりするというニュアンスがあります。

「顔が立つ」と同じく「顔」を含む表現であり、全く正反対の意味合いの表現です。また、他の人の評価を下げる場合は、「顔を潰す」や「顔に泥を塗る」といった表現があります。

「立つ瀬がない」

もう一つの対義語には、「立つ瀬がない(たつせがない)」があります。面目を失ったり、立場を失って苦境におちいることという意味です。「立つ瀬」とは、もとは川の流れが緩やかで人が立っていられる場所のことを表しており、それがないことで立っていられないという意味につながっています。

「瀬」とは川の流れているところを指すほか、「立つ瀬がない」での置かれている立場のこと、「浮かぶ瀬がない」の機会を表す意味でも使用されることがありますよ。

「顔が立つ」の英訳は?

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最後に、「顔が立つ」の英訳についての説明です。キーワードとなる英単語を使って、似た意味の英訳について見ていきましょう。

「save one's face」

「顔が立つ」の英訳には、「save one's fave」があります。直訳すると、人の顔を守るということです。「face」は、日本語の「顔」と同じく「面目、メンツ」という意味があるので、面目を守るという意味につながります。

その他、「maintain one's status」とすると「威厳を守る」という意味合いになり、ほぼ同じ意味で使いことができますよ。

\次のページで「「顔が立つ」を使いこなそう」を解説!/

「顔が立つ」を使いこなそう

今回の記事では「顔が立つ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「顔が立つ」の基本の意味は、世間に対する名誉が保たれるということです。名誉があがるというよりも維持されるというニュアンスがあります。そのため、名誉が上がるケースも含む類義語の「面目を施す」とは、場面によって使い分けるといいですね。

" /> 【慣用句】「顔が立つ」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「顔が立つ」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「顔が立つ」について解説する。

端的に言えば顔が立つの意味は「世間に対して面目が保たれること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「顔が立つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「顔が立つ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顔が立つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「かおがたつ」です。

「顔が立つ」の意味は?

「顔が立つ」には、次のような意味があります。まずは国語辞典で正確な意味を確認してから、さらに関連する詳しい意味まで見ていきましょう。

1.世間に対して面目が保たれる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「顔が立つ」

なにか自分にとってマイナスの要因となる可能性のある出来事があった際に、世間の人々や周囲の人々からの自分への評価が下がることがなく今まで通りに保たれることを表しています。

マイナスの要因となる出来事とは、自分の不手際や不測の事態のほか、他人の活躍によって自分の相対的評価に影響する場合などさまざまです。しかし、その出来事の内容に関わらず、評価が下がる可能性があった状態から、下がらずに済んだということを意味します。

「顔が立つ」の語源は?

次に「顔が立つ」の語源を確認しておきましょう。

「顔が立つ」の「顔」は社会に対する体面や名誉のこと、「立つ」は物ごとが損なわれないで保たれるということです。そこから、体面が損なわれることなく保たれるという意味につながっています。

18世紀の浄瑠璃『関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)』に「顔が立つ」という言葉が出てくることから、江戸時代には使われていた表現であることがわかりますね。

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