この記事では「白い目で見る」について解説する。

端的に言えば、白い目で見るの意味は「冷淡な目で見る」ことです。その由来は中国の歴史書『晋書(しんじょ)』にある。『晋書』には「白い目で見る」の反対語もあるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「白い目で見る」の意味や語源を調べ、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「白い目で見る」の意味・語源・例文

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まず「白い目で見る」の意味と語源を調べ、例文で使い方を見ていきましょう。

「白い目で見る」の意味

最初に「白い目で見る」の意味を辞書でチェックしましょう。

冷淡な、悪意のこもった目で人を見る。白眼視する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「白い目で見る」

「白い目で見る」「白眼視する」「冷淡な悪意のある目で人を見る」という意味です。「町中の人から白眼視される」「家族から白い目で見られる」というように使われていますね。

「白い目で見る」の語源は『晋書』!

『晋書』は中国晋朝について書かれた130巻からなる歴史書です。その中の「阮籍伝(じょせきでん)」に「白い目で見る」の由来となった部分があります。阮籍(じょせき)は中国三国時代の思想家で、「竹林の七賢」の中心的な人物。老荘思想に傾倒し、偽善が横行する世の中を嫌って、わざと礼に反する態度をとっていました。原文を一部抜粋して見てみましょう。

籍又能為青白眼、見禮俗之士、以白眼對之。及嵇喜來弔、籍作白眼、喜不懌而退。喜弟康聞之、乃齎酒挾琴造焉、籍大悅、乃見青眼。
出典:『晋書』「阮籍伝」

阮籍は白眼と青眼を使い分けました。世俗的で礼法を守る人には白眼で対応するのです。阮籍が喪に服していると、嵆喜(けいき)という人が弔問に来ました。阮籍は白眼で対応したので嵆喜は不愉快になって帰ってしまいます。それを聞いた嵆喜の弟の嵆康(けいこう)が酒と琴を持って訪れると、阮籍は喜んで青眼で対応しました。

阮籍は、形式的に礼法を守る儒家を嫌っていたのです。儒家とは、孔子を祖とする儒教の学派のこと。嫌いな人には、まっすぐきちんと見ず白眼で対応したことから、「冷淡な悪意のある目で人を見る」ことを「白い目で見る」というようになりました。

また、阮籍が好きな酒と琴を持ってきた人は、青眼で迎えましたね。青眼とは黒目のことです。そこから「自分の好きな人を歓迎する目つき」「青眼」というようになったのでした。

\次のページで「「白い目で見る」の例文」を解説!/

「白い目で見る」の例文

意味がわかったので、次は「白い目で見る」の例文で使い方を見ていきましょう。

1.兄がスーパーで万引した。一晩で近所中に知れ渡り、私たち家族まで白い目で見られるようになった。
2.玄関で靴を脱ぎ散らかし、着ていた服を家じゅうに脱ぎ散らかし、新聞とテレビを独占し、居間で居眠りしている父を、娘たちは白い目で見ていた。
3.課長のセクハラを、勇気を振り絞って部長に直訴したのに、なぜか彼女のほうが社員たちから白い目で見られるようになってしまった。

最初の例文は、家族が罪を犯したせいで家族も冷たい目で見られるようになった、という意味です。本人は何も悪いことはしていなくても、犯罪加害者の家族に対して世間の目は大変厳しいものがあります。2番目の例文は、家庭内のことについてです。白眼視されている父が、そのワケに気づいていないようですね。

3番目は会社内のセクハラについてですね。勇気を持って告発しても、偏見や憶測で被害者のほうがつらい立場に置かれてしまったという内容です。「白い目で見られる」のは、何か悪いことをした場合とは限らないのが現実のようですね。

「白い目で見る」の類義語

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次は「白い目で見る」の類義語について見ていきましょう。

「木で鼻を括(くく)る」:冷淡にあしらう

「木で鼻を括る」「冷淡にあしらう」「無愛想な」という意味です。「くくる」は、本当は「こくる」が正しいのですが、誤ったまま慣用句となっています。「こくる」の意味は「擦(こす)る」です。昔は紙が貴重品だったので、木で鼻をかんでいました。木で鼻を擦ると痛くて不愉快そうな顔になるからなど、語源は諸説ありますよ。

\次のページで「「鼻であしらう」:冷淡に扱う」を解説!/

「鼻であしらう」:冷淡に扱う

「あしらう」には「応答する」という意味があります。しかしここでは「相手を軽んじた扱いをする」という意味でつかわれていますね。「鼻であしらう」の意味は、「相手になろうとせず冷淡に扱う」こと。「軽く鼻であしらわれた」というように表現します。「鼻先であしらう」という言い方も同じ意味です。

「白い目で見る」の反対語

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「白い目で見る」の反対語についても見てみましょう。

「青眼」「正眼」:喜んで迎える目つき

「青眼」「正眼」「せいがん」と読みます。「青眼」は「喜んで迎える目つき」のこと。「正眼」ともいいます。晋の阮籍が、気に入った人物が訪ねてきたときは「青眼」で歓待したという故事からできた言葉です。

「白い目で見る」の英訳

英語では「白い目で見る」はどのように表現するのでしょうか。

「look coldly at」:~を白い目で見る

「look coldly at「~を白い目で見る」という意味です。

・She looked coldly at him.
(彼女は彼を冷たい目で見た。)

「coldly」は「冷淡に」「冷ややかに」という意味。「look coldly at」は、日本語の「冷たい目で見る」と同じ表現ですね。「look at someone coldly」という言い方もありますよ。

\次のページで「「a prejudice against」「be prejudiced against」」を解説!/

「a prejudice against」「be prejudiced against」

「prejudiceは名詞で「偏見」「先入観」という意味で、動詞では「偏見をいだかせる」という意味です。

・She has a prejudice against foreigners.
(彼女は外国人に偏見を持っている。)

・You are prejudiced against her.
(あなたは彼女に偏見を持っている。)

「contend against prejudice」は「偏見と戦う」という意味です。「be prejudiced against」は「~に反感を持っている」「~に偏見を持っている」という意味ですね。

「白い目で見る」は注意して使いこなそう!

この記事では、「白い目で見る」の意味や語源を調べ、例文や類義語などを解説しました。

「白い目で見る」とは、「冷淡な悪意のある目で人を見る」こと。語源になった阮籍の「白眼」は、今風にいうと塩対応といったところでしょうか。

現実の世界では「白い目で見られる」ことはもちろん「白い目で見る」ことも避けたいですね。「白い目で見る」を使いこなすのは、文章を読み解くときだけにしたいものです。

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国語言葉の意味

『晋書(しんじょ)』が語源!「白い目で見る」の意味・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「白い目で見る」について解説する。

端的に言えば、白い目で見るの意味は「冷淡な目で見る」ことです。その由来は中国の歴史書『晋書(しんじょ)』にある。『晋書』には「白い目で見る」の反対語もあるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「白い目で見る」の意味や語源を調べ、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「白い目で見る」の意味・語源・例文

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まず「白い目で見る」の意味と語源を調べ、例文で使い方を見ていきましょう。

「白い目で見る」の意味

最初に「白い目で見る」の意味を辞書でチェックしましょう。

冷淡な、悪意のこもった目で人を見る。白眼視する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「白い目で見る」

「白い目で見る」「白眼視する」「冷淡な悪意のある目で人を見る」という意味です。「町中の人から白眼視される」「家族から白い目で見られる」というように使われていますね。

「白い目で見る」の語源は『晋書』!

『晋書』は中国晋朝について書かれた130巻からなる歴史書です。その中の「阮籍伝(じょせきでん)」に「白い目で見る」の由来となった部分があります。阮籍(じょせき)は中国三国時代の思想家で、「竹林の七賢」の中心的な人物。老荘思想に傾倒し、偽善が横行する世の中を嫌って、わざと礼に反する態度をとっていました。原文を一部抜粋して見てみましょう。

籍又能為青白眼、見禮俗之士、以白眼對之。及嵇喜來弔、籍作白眼、喜不懌而退。喜弟康聞之、乃齎酒挾琴造焉、籍大悅、乃見青眼。
出典:『晋書』「阮籍伝」

阮籍は白眼と青眼を使い分けました。世俗的で礼法を守る人には白眼で対応するのです。阮籍が喪に服していると、嵆喜(けいき)という人が弔問に来ました。阮籍は白眼で対応したので嵆喜は不愉快になって帰ってしまいます。それを聞いた嵆喜の弟の嵆康(けいこう)が酒と琴を持って訪れると、阮籍は喜んで青眼で対応しました。

阮籍は、形式的に礼法を守る儒家を嫌っていたのです。儒家とは、孔子を祖とする儒教の学派のこと。嫌いな人には、まっすぐきちんと見ず白眼で対応したことから、「冷淡な悪意のある目で人を見る」ことを「白い目で見る」というようになりました。

また、阮籍が好きな酒と琴を持ってきた人は、青眼で迎えましたね。青眼とは黒目のことです。そこから「自分の好きな人を歓迎する目つき」「青眼」というようになったのでした。

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