「食べたものはどうなるか」という問いはシンプルですが、一言で答えるのは無理である。食べたものがそれぞれの消化管を通る際にそれぞれの消化酵素によって体に取り込まれている。そのことについて詳しく、医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

消化とは

image by iStockphoto

まずは、消化と消化管について説明しますね。私たちが食べたものはそのままだと体内に吸収することはできません。実際に栄養を必要としているのは、代謝の行われている組織の細胞なのですよ。消化とは、代謝の行われている組織に栄養を届けるため、栄養分を細胞膜が通り抜けることができる小さな分子にするための働きですよ。消化には、そしゃく(口でかみ砕くこと)や胃・小腸の運動による機械的消化と、消化酵素による化学的消化がありますよ。

消化器官と機械的消化

消化器官と機械的消化

image by Study-Z編集部

次に、消化器官について説明しますね。消化器官とは、食物の消化と吸収に働く器官であり、ヒトでは口から肛門までの長い消化管があり、それに消化液を分泌する消化腺がついていますね。機械的消化には、ぜん動運動と分節運動がありますよ。ぜん動運動は、消化管壁の筋肉が次々にくびれて内容物を送る運動の事です。胃ではぜん動運動が起こっていますが、幽門(ゆうもん、十二指腸に接している細い部分)が閉じているときは中身が押し返されて混ぜあわされますよ。

分節運動は、消化管壁が同時に収縮を繰り返す運動で、内容物は移動しないでよく混ぜ合わされますよ。

化学的消化

消化液によって食物が加水分解を受けることを化学的消化と言いますよ。口腔、胃、小腸での消化を見ていきましょうね。

口腔での消化

食べ物がまず最初に通過する消化器官が口腔です。舌で食べものの刺激を感じたら、唾液腺から消化酵素アミラーゼが分泌され、デンプンやグリコーゲンがマルトース(麦芽糖)にまで分解されますよ。

胃での消化

胃での消化

image by Study-Z編集部

食べ物を見たりにおいを嗅いだりすると、反射によって胃液の分泌が起こるのですよ。また、食べ物が胃壁を刺激すると、ガストリン(ホルモンの一種)の作用によって胃液の分泌が起こります。胃液の働きですが、胃腺からペプシノーゲン塩酸が別々に分泌されますよ。ペプシノーゲンは、胃の中で塩酸によって活性化されてペプシンという消化酵素に変わります。ペプシンはタンパク質をペプトン(ポリペプチド)にまで分解しますよ。ペプシンが最も働くのは、強酸(pH2)の環境ですね。

\次のページで「小腸での消化」を解説!/

小腸での消化

小腸は消化と吸収の中心なのですよ。十二指腸に輸胆管とすい管が開口し、それぞれ胆汁とすい液を分泌し、腸腺からは腸液を分泌しますよ。タンパク質分解酵素であるペプチダーゼも分泌しますよ。

消化酵素

消化酵素

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消化酵素は、加水分解酵素とも呼ばれますよ。加水分解酵素と、その名前の通り加水分解反応(反応物に水が反応し、分解生成物が得られる反応)を促進するものですよ。代表的な反応はそれぞれタンパク質、脂質、炭水化物をアミノ酸、脂肪酸、ブドウ糖などに消化分解する生化学反応に関係しますよ。

「胃での消化」で、ペプシンがタンパク質分解酵素であることは説明しましたが、ペプシンの他にも表にある通りトリプシンペプチダーゼという酵素がありますよ。膵臓(すいぞう)から分泌される膵液の中に含まれるトリプシンですが、膵臓から分泌されたときはトリプシノーゲンという酵素なのですよ。それから十二指腸から分泌されるエンテロキナーゼという酵素と反応してトリプシンとなり、タンパク質をペプトンやポリペプチドにするのですね。

消化器官の病気

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健康な胃には、たくさんの胃粘液が分泌されており、胃の粘膜が保護されていますが、加齢やストレスや生活習慣のせいで胃粘液の分泌が減少して、胃もたれや膨満感などの不調が起こってきます。以下、胃に関する病気について説明していきますね。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、強い酸性の胃液や胃で消化される途中の食物が、食道に逆流して、食道が炎症を起こし、胸やけや胸の痛みなどさまざまな症状が生じる病気です。食道には胃のように粘液で覆われているわけではないので、酸に弱く、ただれてしまうのですよ。

通常、胃の噴門(食道と胃に接続している部分)は括約筋の働きで食べ物が通るとき以外は閉じていて、胃酸の逆流を防いでいます。老化や手術後などによりこの機能が衰えると、逆流性食道炎になりやすいのです。若い人でも、食事の欧米化で和食よりも洋食の方が胃酸がたくさん分泌するのもあり、また肥満により腹圧で胃酸が上がりやすくなるので、逆流性食道炎になりやすいと言われていますよ。

治療は、生活様式や薬物療法によるものです。

胃潰瘍

健康な胃壁は、胃粘液が胃壁を覆っていて胃液から胃粘膜を守っていますよ。何らかの原因でこのバリアが破られてしまうと、胃粘膜が自己消化されてしまい、粘膜下層より深いところまで自己消化で胃粘膜が傷つくと、胃潰瘍になりますよ。胃潰瘍は、胃粘膜に障害を与える可能性のある攻撃因子と、その攻撃から胃粘膜を守る制御因子のバランスが崩れた時に起きると考えられています。攻撃因子の中心になるのが、胃酸とペプシン、非ステロイド性消炎鎮痛剤の服用、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、喫煙やストレスなどですよ。防御因子は粘膜を覆う粘液、増殖因子や細胞を守る機能を持つタンパク質などが挙げられますね。

軽症の場合は、胃酸分泌を抑える薬の服用でいいのですが、胃からの出血で貧血や激しい腹痛がある場合は、数日間絶食し、点滴治療を受けなければなりません。

\次のページで「消化器官の中で重要な役割の胃」を解説!/

消化器官の中で重要な役割の胃

消化、吸収をする働く器官の中で胃は重要な働きをしていることがわかりましたね。胃のおもな働きは、胃液とぜんどう運動による消化です。胃の筋肉が伸びたり縮んだりしてぜんどう運動をすることによって、食物と胃液を混ぜているのですね。さらに胃は、消化以外にも食物の貯蔵庫としての役割も持っているのですよ。私たちが食事のあとしばらく空腹を感じないのは、胃が貯蔵庫になっているからなのですよ。そして、強力な酸性の胃液のおかげで食物と一緒に入ってくる病原菌なども殺菌してなるべく体内に取り込まないようにしてくれますよ。

強力な酸性の胃液を分泌して、胃壁がダメージを受けずに食物を消化できているのは、胃粘液で保護されているからなのですよ。逆に言えば、胃粘液の分泌が減ると胃壁がダメージを受けてしまいます。胃粘液の分泌は過度なストレス、加齢、生活習慣の乱れによって減少してしまうので、胃を健康に保つために生活習慣を見直すところから始めましょうね。気になることがなくても、定期健診は受けておきましょう。胃がんリスクの検査については血液検査で可能です。毎日休むことなく働き続ける胃をいたわってあげましょうね。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

3分で簡単「胃液」と「 ペプシン」重要な消化酵素について医学系研究アシスタントがわかりやすく解説!

「食べたものはどうなるか」という問いはシンプルですが、一言で答えるのは無理である。食べたものがそれぞれの消化管を通る際にそれぞれの消化酵素によって体に取り込まれている。そのことについて詳しく、医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

消化とは

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まずは、消化と消化管について説明しますね。私たちが食べたものはそのままだと体内に吸収することはできません。実際に栄養を必要としているのは、代謝の行われている組織の細胞なのですよ。消化とは、代謝の行われている組織に栄養を届けるため、栄養分を細胞膜が通り抜けることができる小さな分子にするための働きですよ。消化には、そしゃく(口でかみ砕くこと)や胃・小腸の運動による機械的消化と、消化酵素による化学的消化がありますよ。

消化器官と機械的消化

消化器官と機械的消化

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次に、消化器官について説明しますね。消化器官とは、食物の消化と吸収に働く器官であり、ヒトでは口から肛門までの長い消化管があり、それに消化液を分泌する消化腺がついていますね。機械的消化には、ぜん動運動と分節運動がありますよ。ぜん動運動は、消化管壁の筋肉が次々にくびれて内容物を送る運動の事です。胃ではぜん動運動が起こっていますが、幽門(ゆうもん、十二指腸に接している細い部分)が閉じているときは中身が押し返されて混ぜあわされますよ。

分節運動は、消化管壁が同時に収縮を繰り返す運動で、内容物は移動しないでよく混ぜ合わされますよ。

化学的消化

消化液によって食物が加水分解を受けることを化学的消化と言いますよ。口腔、胃、小腸での消化を見ていきましょうね。

口腔での消化

食べ物がまず最初に通過する消化器官が口腔です。舌で食べものの刺激を感じたら、唾液腺から消化酵素アミラーゼが分泌され、デンプンやグリコーゲンがマルトース(麦芽糖)にまで分解されますよ。

胃での消化

胃での消化

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食べ物を見たりにおいを嗅いだりすると、反射によって胃液の分泌が起こるのですよ。また、食べ物が胃壁を刺激すると、ガストリン(ホルモンの一種)の作用によって胃液の分泌が起こります。胃液の働きですが、胃腺からペプシノーゲン塩酸が別々に分泌されますよ。ペプシノーゲンは、胃の中で塩酸によって活性化されてペプシンという消化酵素に変わります。ペプシンはタンパク質をペプトン(ポリペプチド)にまで分解しますよ。ペプシンが最も働くのは、強酸(pH2)の環境ですね。

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