この記事では「抜き差しならぬ」について解説する。

端的に言えば抜き差しならぬの意味は「どうにもならない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「抜き差しならぬ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「抜き差しならぬ」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「抜き差しならぬ」の意味や語源・使い方まとめ

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抜き差しならぬ」は(ぬきさしならぬ)と読みます。それでは早速「抜き差しならぬ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「抜き差しならぬ」の意味は?

まず初めに「抜き差しならぬ」の正確な意味を、辞書からの引用で確かめてみましょう。

1.動きが取れなくて、どうしようも無い。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「抜き差しならぬ」

2.動きがとれない。のっぴきならない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「抜き差しならない」

「抜き差しならぬ」「抜き差しならない」とも言います。簡単に言えば「動きがとれない」「どうにもならない」と言う意味ですが、追い詰められている状態を表しますので、打つ手がないほど困った状況に追い込まれて、どうにもこうにも動けないことを表現する慣用句です。具体的に文中では、物事が緊迫した膠着状態で動けない場合だったり、逃げ場のない状況に追い込まれるような時に使われます。

「抜き差しならぬ」の語源は?

次に「抜き差しならぬ」の語源について確認していきましょう。こちらには、いくつか説がありますので紹介します。

一つ目は、武士が追い詰められた時の様子が語源であると言う説です。この説では「抜き差しならぬ」の「抜き差し」は、刀を抜いたり差したりすることだとされています。昔、武士は帯刀して道を行くのが普通でした。そして、武士が突然賊に襲われ追い詰められてしまった際、刀に手をやったまま刀身を鞘から抜いて戦うか、鞘に差し戻し逃げるか、身動きがとれないほど困っている。そんな、切羽詰まった武士の様子を例えにしてこの慣用句ができたと考えられています。

二つ目は、刀が錆びていてびくとも動かないため、抜くことも差すこともできず困っている様子から「抜き差しならない」₌「どうしようもない」となったと言う説です。三つめに、「抜き差し」と言う言葉に「あれこれやりくりする」と言う意味があるからだと言う説もあります。つまり、「あれこれやりくり」することもできないくらい困難な状況だ、と言うことです。正確な語源は明らかにはなっていませんが、どの説ももっともらしく思えますね。

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「抜き差しならぬ」の使い方・例文

では、「抜き差しならぬ」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今日の総会で会社の経営がすでに抜き差しならぬ状態と知り、株主たちは緊迫した表情だった。
2.試合は膠着状態が続いており、抜き差しならぬ雰囲気に、観客は大人も子供も固唾を飲んでいる。
3.あの代議士とあなたの上司は、抜き差しならぬ関係だという噂だ。

「抜き差しならぬ」は、このように「抜き差しならぬ状態」「抜き差しならぬ雰囲気」「抜き差しならぬ関係」などど言葉が続く事が多いです。1、2の例文は、ここまで見てきたように「どうにもならない」と言う意味で使われており、切迫した状況を表現していますね。ところが、例文3のように「抜き差しならぬ関係」や「抜き差しならぬ仲」と人間関係を指して言う場合は意味合いが変わってきますので注意が必要です。この場合の「抜き差しならぬ」は、何かしら後ろ暗い繋がりがある、と言う意味になります。これは、癒着などの不適切な関係を指す言い方ですから、使い方を間違えないようにしてください。

 

「抜き差しならぬ」の類義語は?違いは?

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「抜き差しならぬ」の類義語には「のっぴきならない」「袋小路に入る」などがあります。

「のっぴきならない」

記事の最初「抜き差しならぬ」の意味を辞書から引用しましたが、「のっぴきならない」と言うことだとありましたね。「のっぴきならない」とは漢字で「退っ引きならない」と書きます。もとは「退き引き」と言う言葉ですが、口語表現で「のっぴき」と言うようになりました。漢字の通り「のっぴきならない」とは、退くことも引くこともできない、つまり、どうにも身動きがとれないと言う意味です。ただし、「抜き差しならぬ」と違う点もあり、どうしてもやらなければならないと言う意味で使われることもあります

では、「のっぴきならない」の使い方も、実際の例文で確かめてみましょう。

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1.自分勝手な判断から大変な損害を会社に与え、のっぴきならない立場に追い込まれてしまった。

2.のっぴきならない事情があり、会食の日程を変更させていただきたいと相手に告げた。

「袋小路に入る」

袋小路に入る」は(ふくろこうじにはいる)と読みます。「袋小路」自体は、行き止まりの道のことを言いますが、慣用句として用いた場合の意味は、物事が行き詰って進めなくなってしまうと言うことです。「抜き差しならぬ」も膠着してどうにもならないと言う意味合いがありましたね。このように、策がつきてどうしようもなくなってしまった状況を表す場合「袋小路に入る」と「抜き差しならぬ」を類義語として言い換えることができるでしょう。

「袋小路に入る」の使い方も、実際の例文で確認してみましょう。

編集長が上層部と話し合ったが、新しい雑誌の発行についての案は全部否認され、私たちの計画は袋小路に入ってしまった。

「抜き差しならぬ」の対義語は?

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「抜き差しならぬ」の反対の意味に近いものとしては「余裕綽綽」が挙げられます。

「余裕綽綽」

余裕綽々」は(よゆうしゃくしゃく)と読みます。焦らずゆったりとしていて、大いに余裕を感じさせる様子を表す四字熟語です。「綽綽」(しゃくしゃく)は、あまり聞き慣れない言葉ですね。「綽」は元々「綽やか(ゆるやか)」と使われていて、せっつかずゆったりとしている様子を表す言葉です。つまり、余裕があり焦らずゆったりしていると言うことですね。「抜き差しならぬ」が、どうにもならず追い込まれていることですので、反対の意味に近いと言えるでしょう。

それでは、「余裕綽々」も実際の例文で、使い方を確認しましょう。

今日はぬきうちの計算テストがあったが、日々繰り返し復習していたので余裕綽々だった。

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「抜き差しならぬ」を使いこなそう

この記事では「抜き差しならぬ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「抜き差しならぬ」はかなり困った状況で使う表現ですので、使うときには気をつけてくださいね。また、先述したとおり、人間関係に使う場合は、良くない繋がりがあると言うニュアンスになりますので注意してください。

また「抜き差しならぬ」は、あまり日常生活や会話の中では馴染みのない言葉かも知れませんが、浄瑠璃にもいくつか使われていたり、古くから用いられてきた表現です。重々しい表現で緊迫感を感じる言葉ですから、歴史小説などでは見かける回数も多いでしょう。知識として覚えておくことで、映画や本で出会った時により味わい深く鑑賞できると思いますよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「抜き差しならぬ」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

「抜き差しならぬ」の使い方・例文

では、「抜き差しならぬ」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今日の総会で会社の経営がすでに抜き差しならぬ状態と知り、株主たちは緊迫した表情だった。
2.試合は膠着状態が続いており、抜き差しならぬ雰囲気に、観客は大人も子供も固唾を飲んでいる。
3.あの代議士とあなたの上司は、抜き差しならぬ関係だという噂だ。

「抜き差しならぬ」は、このように「抜き差しならぬ状態」「抜き差しならぬ雰囲気」「抜き差しならぬ関係」などど言葉が続く事が多いです。1、2の例文は、ここまで見てきたように「どうにもならない」と言う意味で使われており、切迫した状況を表現していますね。ところが、例文3のように「抜き差しならぬ関係」や「抜き差しならぬ仲」と人間関係を指して言う場合は意味合いが変わってきますので注意が必要です。この場合の「抜き差しならぬ」は、何かしら後ろ暗い繋がりがある、と言う意味になります。これは、癒着などの不適切な関係を指す言い方ですから、使い方を間違えないようにしてください。

 

「抜き差しならぬ」の類義語は?違いは?

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「抜き差しならぬ」の類義語には「のっぴきならない」「袋小路に入る」などがあります。

「のっぴきならない」

記事の最初「抜き差しならぬ」の意味を辞書から引用しましたが、「のっぴきならない」と言うことだとありましたね。「のっぴきならない」とは漢字で「退っ引きならない」と書きます。もとは「退き引き」と言う言葉ですが、口語表現で「のっぴき」と言うようになりました。漢字の通り「のっぴきならない」とは、退くことも引くこともできない、つまり、どうにも身動きがとれないと言う意味です。ただし、「抜き差しならぬ」と違う点もあり、どうしてもやらなければならないと言う意味で使われることもあります

では、「のっぴきならない」の使い方も、実際の例文で確かめてみましょう。

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