この記事では「無になる」について解説する。

端的に言えば無になるの意味は「なくなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「無になる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。大学卒業後は語学と全く関係のない業界に就職したが、紆余曲折あってこの記事を担当することとなり、過去に蓄積したものが「無になる」ことはなくなった。

「無になる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「無になる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「無になる」の意味は?

「無になる」には、次のような意味があります。

何もならなくなる。むだになる。「今までの苦労が―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「無(む)にな・る」

何もなら「無」い「無」駄になる、とまあ想像通りですよね。

ちなみに無駄の「駄」とは、馬に乗せた荷物が由来となっています。荷物なしで馬を行かせるのは手間がかかるだけで「無駄」というわけです。

「無になる」の語源は?

次に「無になる」の語源を確認しておきましょう。

もちろん「無」という状態になる、つまり「なくなる」ということです。それよりも注目したいのは、「無」という漢字、なんと元は象形文字でした。実体の「無い」ものが象形文字、いったいどういうことでしょうか。

漢字の「無」は、もともと踊っている様子を表した「舞」と同じ象形文字でした。というのも、古代中国では「ない」という意味の言葉と「踊る」という意味の言葉が同じ発音で、便宜的に「踊る」という意味の象形文字を「ない」という意味の文字としても使っていたのです。実際に「舞」と「無」には、日本語の漢字の音読みで同じ「ブ」という読みがあります。のちに「ない」という意味の象形文字は「無」、「おどる」という意味の象形文字は「舞」という漢字に枝分かれしました。

\次のページで「「無になる」の使い方・例文」を解説!/

「無になる」の使い方・例文

「無になる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.古くなったビルの解体作業が決行されて、半径数百メートルが一瞬で無になった。
2.あのお坊さんが座禅を組んで集中すると、まるで周りの空間に溶け込んで無になるようだ。
3.人気クリエイターにデザインを依頼して作られた新しいシンボルマークはもうすぐお披露目される予定だったが、クリエイターが自分自身で盗作を認める声明を述べたので、それも無になった。

「無になる」は、例文1のように物質的なモノがなくなるだけではありません。例文3のようにシンボルマークだけでなく予定全体が「無になる」ことがありますし、例文2のような精神的だったり概念的だったりするものも「無になる」ことがあります。

つまり、「ある」と認識されていたものがそうはならなくなると「無になる」と表現できるということです。難しい言い方をしてしまいましたが、ようするに「なくなる」を「無になる」と言い換えて違和感がなければ大丈夫、という認識でかまいません。

「無になる」の類義語は?違いは?

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「無になる」の類義語にはいろいろな候補が考えられますが、今回は「おじゃんになる」という慣用句を紹介します。

「おじゃんになる」

計画がおじゃんになる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「計画がなくなる」という意味です。「おじゃん」とは、もともとは江戸時代に火事が発生した時に鳴らした半鐘のことで、ジャンジャンという鐘の音を表す「じゃん」に接頭語の「お」を付けて生まれた言葉と言われます(諸説あり)。

ただし、「無になる」は何もかもなくなってしまうという意味ですが、「おじゃんになる」は途中で中止になるという意味です。計画は中止ですが、計画自体がなかったわけではないので、全くの無になったとは言えません。ちょっとしたニュアンスの違いですが、「無になる」とはその点で区別されます。

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「無になる」の対義語は?

では、「無になる」の対義語とは何でしょうか。

「活用する」「重宝する」

まず、「無」の対義語は「有」なので、そのまま「有になる」としたいところです。しかし、そんな言葉はありません。そこで、「無になる」の意味から考えるという方法を使いましょう。

まず、「無いものにする」という意味があります。その逆は「あることとする」、つまり有意義なものにするということです。モノを有意義にするには使っていった方がいいですよね。よって「活用する」「運用する」などが考えられます。

また、「無になる」には「無駄になる」という意味もありましたよね。無駄の反対は大事にすることですので、「重宝する」「大切にする」なども対義語となります。

「無になる」の英訳は?

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ついでに「無になる」の英訳も見ていきましょう。

「to be ruined」

「無になる」を直訳すれば「come to nothing」などとできそうですが、それではあまり実用的とは言えません。そこで「無になる」をちょっとひねって考えていきます。

「失う」は「lose」、「取り逃がす」は「miss」、「消える」なら「disappear」「vanish」などと1語の動詞で十分です。また、「無駄になる」でしたら「be a waste」や「be in vain」、「台無しになる」は「to be ruined」や「to be spoiled」と置き換えることができます。

「無になる」を使いこなそう

この記事では「無になる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

単に「なくなる」と言えるところを「無になる」とすると、すっかりなくなってしまったことを嘆く無常さや虚無感を表現することができます。なくなることへの情景を表したり、ちょっと気取って言ってみたい場合には、「無になる」を使ってみてください。

語学は積み重ねの連続です。人生が日々の繰り返しで、事あるごとに自問自答したり多くの選択を迫られたりして成長する毎日であることと似ています。たとえあまり使わないと思う言葉でも、別の言葉と紐づけられて使われることもあるので、決して無駄ではありません。どんな些細なことでも、一度覚えた知識や情報はどれも「無になる」ことはないのです。

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国語言葉の意味

【慣用句】「無になる」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「無になる」について解説する。

端的に言えば無になるの意味は「なくなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「無になる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。大学卒業後は語学と全く関係のない業界に就職したが、紆余曲折あってこの記事を担当することとなり、過去に蓄積したものが「無になる」ことはなくなった。

「無になる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「無になる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「無になる」の意味は?

「無になる」には、次のような意味があります。

何もならなくなる。むだになる。「今までの苦労が―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「無(む)にな・る」

何もなら「無」い「無」駄になる、とまあ想像通りですよね。

ちなみに無駄の「駄」とは、馬に乗せた荷物が由来となっています。荷物なしで馬を行かせるのは手間がかかるだけで「無駄」というわけです。

「無になる」の語源は?

次に「無になる」の語源を確認しておきましょう。

もちろん「無」という状態になる、つまり「なくなる」ということです。それよりも注目したいのは、「無」という漢字、なんと元は象形文字でした。実体の「無い」ものが象形文字、いったいどういうことでしょうか。

漢字の「無」は、もともと踊っている様子を表した「舞」と同じ象形文字でした。というのも、古代中国では「ない」という意味の言葉と「踊る」という意味の言葉が同じ発音で、便宜的に「踊る」という意味の象形文字を「ない」という意味の文字としても使っていたのです。実際に「舞」と「無」には、日本語の漢字の音読みで同じ「ブ」という読みがあります。のちに「ない」という意味の象形文字は「無」、「おどる」という意味の象形文字は「舞」という漢字に枝分かれしました。

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