この記事では「骨抜きにされる」について解説する。

端的に言えば「骨抜きにされる」の意味は「重要な部分を抜かれ、力を失うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「骨抜きにされる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「骨抜きにされる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「骨抜きにされる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「骨抜きにされる」の意味は?

「骨抜きにされる」には、次のような意味があります。

1 調理で、魚や鳥などの骨を取り除くこと。
2 意見・計画などの肝心な部分を除き去ること。「議案を骨抜きにする」
3 気骨や節操などをなくさせること。「供応を受けて骨抜きにされる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「骨抜き」

「骨抜きにされる」は「人の気骨や志、または物事の重要な部分が失われること」を意味する慣用表現です。

「骨」には「中心を支えるもの」としてのニュアンスがあり、たとえば「チームの骨(中心となる人物)」や、「論文の骨(重要なテーマ)」といった言い方を聞いたことがあるかもしれません。

「骨」はもともとあるものですから、それが「抜かれて」しまう=本来あったものが失われてしまうという意味合いにも注意が必要です。最初から無かった場合には、「骨抜きにされる」ことはないのですね。

人に対して使われるのをよく耳にするかもしれませんが、引用二番目のように物事に対して使うこともできます。実際の使い方は、例文の項も参考にしてみてくださいね。

「骨抜きにされる」の語源は?

次に「骨抜きにされる」の語源を確認しておきましょう。これは「骨抜き」という言葉が受身形になったもの。その「骨抜き」は、「魚の背骨を抜く」ことから生まれた言葉なのだそうです。

魚をさばく場面を見たことがあるでしょうか。大きな骨が綺麗に取り除かれた魚を持ち上げると、支えを失ってだらりと垂れ下がってしまいます。これが「骨抜き」状態です。

人であれば意志や気力を失くしてしまった状態、物事であれば中心にあった重要なものがなくなった状態と言えるでしょうか。前向きな力を失っている様子を想像してみましょう。

ちなみに「骨抜き」という名称で、実際に魚の骨を抜くピンセットのような道具も存在しています。興味のある人はぜひ調べてみましょう。

\次のページで「「骨抜きにされる」の使い方・例文」を解説!/

「骨抜きにされる」の使い方・例文

「骨抜きにされる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・日頃から彼女が欲しいと言っているあの男性だが、セクシーな女性を見るとすぐに骨抜きにされてしまって、それが特定の相手ができない理由なんじゃないかと思う。

・恋愛テクニック講座なるものに参加した私は、萌えや癒しでメロメロになる、骨抜きにされるような男性を彼氏にするのがコツです、と言われて唖然とした。

・信念を持って進めていた最高のプロジェクトだったのに、スポンサーからの様々な抵抗や口出しを受けて骨抜きにされてしまい、すっかり魅力を感じられないものになってしまった。

人のやる気や、物事の中心にあった大切なものが失われる」というニュアンスが伝わりますでしょうか。

この言葉が登場するシーンとして、例文の一、二番目のような「恋愛」に関する場面が数多くあります。それも特に、男性が魅力的な女性に心酔・夢中になってしまうことを指す場合が多いでしょう。

その結果、言いなりになったり他のことに集中できなくなったりする様子を「骨抜き」と称するのですね。そんな姿からは、「男性の女性への弱さ」または「男性をたぶらかす悪女」といった意味合いまで読み取れるかもしれません。

例文三番目のように「計画が駄目になってしまった」場合は、「落胆や強い無念」を感じることもあるでしょう。この慣用表現が使われている意図まで、しっかりと読み取るようにしてくださいね。

「骨抜きにされる」の類義語は?違いは?

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「骨抜きにされる」の類義語は「陶酔する」「形骸化」などがあります。

「陶酔する」「形骸化」

「陶酔する」は、「気持ちよく酔うこと、うっとりしてしまうこと」。「誰々に陶酔している」と言えば、その人に「骨抜きにされている」とほぼ同じ意味になります。「陶酔」には判断力が無いというニュアンスは少なく、「尊敬」などプラスの意味もあることを押さえておきましょう。

「形骸化する」は、「中身が失われて外側だけ残っている状態にすること」。まさに「骨抜き」状態ですが、こちらは人ではなく、計画や案などの中身がなくなってしまうことを意味しています。「形だけ」や「表面的」と、ややネガティブさを感じさせる言葉です。

\次のページで「「骨抜きにされる」の対義語は?」を解説!/

・彼は入院した時にお世話になった看護婦さんの笑顔に、すっかり陶酔してしまったらしい。

・世界を良くすると言っていた政治家も、時を経てすっかり変わってしまい、当初の公約もすっかり形骸化してしまった。

「骨抜きにされる」の対義語は?

「骨抜きにされる」の対義語は「不撓不屈(ふとうふくつ)」がいいでしょう。

「不撓不屈」

「不撓不屈」は「困難などにあってもひるまず、強い意志をもっていること」。「撓」は「たわむ(=まがる。気力がなくなる)」という意味。難しい漢字のため、この四字熟語の読みができれば問題ないでしょう。

「不撓不屈」で「たわまない、屈しない」強い心があるということ。そのような人物であれば「骨抜きにされる」ことはないでしょうね。

不撓不屈の意志を持ちたいのなら、あなたの感情にまず正直になりなさいと先生から教えられた。

「骨抜きにされる」の英訳は?

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「骨抜きにされる」の英訳は「watered-down」で表すことができます。

「watered-down」

この「watered」はお馴染みの「water=水」が動詞化したもので、「水増し」されたことで本来の力が「弱まる、薄まる」というニュアンスを持っています。

内容量を増やす為に無意味なものを足した結果、本来の魅力や味がなくなってしまうというのは、想像しやすいのではないでしょうか。

「骨が抜かれる」のと「水が足される」こと、どちらによっても「力が弱まってしまう」という意味合いになるのは面白いものですね。

\次のページで「「骨抜きにされる」を使いこなそう」を解説!/

Since he fell in love with her, he's been completely watered-down.
彼女と恋に落ちて以来、彼はすっかり骨抜きだ。

「骨抜きにされる」を使いこなそう

この記事では「骨抜きにされる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「魚の骨」から生まれた「骨抜きにされる」という言葉でしたが、確かに骨を抜かれた魚には、もう強さや硬さは感じられませんね。

「骨組み」「骨子(こっし)」と言ったりもするように、「骨」は「基礎、土台」という大切なものも意味します。普段は意識しない部分だからこそ、気づいた時には大切にしたいものです。

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【慣用句】「骨抜きにされる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「骨抜きにされる」について解説する。

端的に言えば「骨抜きにされる」の意味は「重要な部分を抜かれ、力を失うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「骨抜きにされる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「骨抜きにされる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「骨抜きにされる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「骨抜きにされる」の意味は?

「骨抜きにされる」には、次のような意味があります。

1 調理で、魚や鳥などの骨を取り除くこと。
2 意見・計画などの肝心な部分を除き去ること。「議案を骨抜きにする」
3 気骨や節操などをなくさせること。「供応を受けて骨抜きにされる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「骨抜き」

「骨抜きにされる」は「人の気骨や志、または物事の重要な部分が失われること」を意味する慣用表現です。

「骨」には「中心を支えるもの」としてのニュアンスがあり、たとえば「チームの骨(中心となる人物)」や、「論文の骨(重要なテーマ)」といった言い方を聞いたことがあるかもしれません。

「骨」はもともとあるものですから、それが「抜かれて」しまう=本来あったものが失われてしまうという意味合いにも注意が必要です。最初から無かった場合には、「骨抜きにされる」ことはないのですね。

人に対して使われるのをよく耳にするかもしれませんが、引用二番目のように物事に対して使うこともできます。実際の使い方は、例文の項も参考にしてみてくださいね。

「骨抜きにされる」の語源は?

次に「骨抜きにされる」の語源を確認しておきましょう。これは「骨抜き」という言葉が受身形になったもの。その「骨抜き」は、「魚の背骨を抜く」ことから生まれた言葉なのだそうです。

魚をさばく場面を見たことがあるでしょうか。大きな骨が綺麗に取り除かれた魚を持ち上げると、支えを失ってだらりと垂れ下がってしまいます。これが「骨抜き」状態です。

人であれば意志や気力を失くしてしまった状態、物事であれば中心にあった重要なものがなくなった状態と言えるでしょうか。前向きな力を失っている様子を想像してみましょう。

ちなみに「骨抜き」という名称で、実際に魚の骨を抜くピンセットのような道具も存在しています。興味のある人はぜひ調べてみましょう。

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