この記事では「野に下る」について解説する。

「野に下る」の意味は「官職を辞めるて民間に入る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

読書が趣味の現役看護師T.MINAMOTOを呼んです。一緒に「野に下る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/T.MINAMOTO

現役看護師として働きながら趣味の読書で日々知識を蓄えている。そのため漢字や慣用句の出典の知識も有している。

「野に下る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「野に下る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「野に下る」の意味は?

「野に下る」には、次のような意味があります。

1.官職を退いて民間の生活にはいる。下野する。

出典:大辞林(三省堂)「野に下る」

この言葉は「やにくだる」と読みます。「のにくだる」ではありません。熟語にすると「下野(げや)」です。政治の世界では与党から野党になることも「野に下る(下野)」と表現します。近い言葉で「在野」(ざいや)という言葉がありますが、こちらは「公職に就かず民間で活動する人」という意味です。「野に下る」が官職から民間への異動を意味するのに対し、「在野」はすでに民間にいることを意味しますので、「野に下る」と「在野」は類義語とは言えません。

「野に下る」の語源は?

「野に下る」がいつごろ使われ始めたのかは不明です。そのためここでは語の説明をします。先ほども書きましたが「のにくだる」は間違いです。「や」と「の」では意味するところが変わってきます。

\次のページで「「野に下る」の使い方・例文」を解説!/

「の」:自然の広いたいらな土地。野生のもの。

「や」:1、たいらに広々としたところ。のはら。 2、民間、政府の外

「のにくだる」と読んでしまうと広大な土地に降り立つイメージになりますね。

次に「下る」です。「さがる」や「おりる」ではないのには、送り仮名がまず一つ理由として挙がります。「くだ・る」「さ・がる」「お・りる」で送り仮名の位置が違うのですが、それは活用形の違いもしくは意味をはっきりさせるためです。

「くだ・る」:くだ・らない、くだ・ります、くだ・ろう
「だ」は変化しないが「る」は変化する。

「さ・がる」:さ・げる
これが「下る」と書いてあると「さ・がる」なのか「さ・げる」なのかわからないうえに、それぞれ意味が変わる。このことは「起きる・起こる」と同じである。

「お・りる」:お・り(下り、未然形)、お・るる(下るる:連体形)
これは古文での活用形の変化。未然形や連体形だと「下りる」の「り」で変化するのが分かる。

語源ではなく漢字の説明になっていましましたが、読み方が変わると意味が伝わらないので説明させていただきました。

「野に下る」の使い方・例文

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「野に下る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今は公職にあっても将来安泰とはいえない。それならいっそ野に下って民間人として一般企業で働こう。
2.一度は選挙に負けて野に下り野党になったが、再選を果たして再び与党として返り咲くことができた。
3.結婚して野に下った母親だったが、仕事をしながら子育てをする女性の立場を守るため選挙に勝って再び議員になることを決意した。

官職→民間、与党→野党への立場の変化を「野に下る」と表現しました。こう見ると「野に下る」という言葉は使用範囲が限られるので使用頻度もそんなに多くなさそうですね。だからといって知らないままだと「のにさがる」と、全く見当はずれな読み方をしてしまい恥をかくので注意してください。

「野に下る」と「在野」に関して例文3で少し説明します。この母親は現在「在野」の人です。結婚を機に官職を退いた時点で「野に下った」ということになります。もし「野に下った」を「在野」に置き換えたいなら、「結婚してからは在野の人だった母親は(以下略)」としてください。注意したいのは「在野の人だった母親は(以下略)」とすると元々官職に就いていたのか、最初から民間にいたのか判別できないことです。「結婚してからは」とすることで「それまでは官職に就いていた」ということがわかります。

「野に下る」の類義語は?

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ここからは類義語を紹介します。

「降板する」

もとは野球の投手が降板させられてマウンドを降りることをです。転じて「担当していた役割を辞めること」という意味になりました。この言葉は官職か民間かということは関係ありません。そのため「野に下る」よりは汎用性があります。例えば大臣が何かの失敗で一般の議員になる場合もあり得ますよね。その場合は官職→官職なので「野に下る」とは言いません。「降板させられた」もしくは「失脚した」と言う方がいいでしょう。

「天下り」

天からの人間の世界に下りてくることから転じて、官庁から関連の民間企業に就職することです。この言葉にはあまり良い印象はありませんね。一時期問題にもなっていましたね。最近はあまりこの手のニュースは聞きませんが。もともとは神道で「神が舞い降りてくること」を指していましたが、こういった政治家の違法行為のために悪い印象を持たれる言葉になったのはとても残念です。

「野に下る」の対義語は?

ここからは「野に下る」の対義語を紹介します。

\次のページで「「登用」」を解説!/

「登用」

人材を官職などに取り立てることを意味します。あるいは今までより高い地位に引き上げることです。今でもよく聞く言葉ですね。「正社員への登用制度あり」といった文言が、アルバイト募集のポスターに書いてあるのを見かけることが度々あります。それ以外では歴史小説などでよく見かけますね。官職だけに使われる言葉ではないということから使用範囲は広いです。

「任官」

官に任じられることで、官職に就くという意味です。ここでいう官職とは警察官や自衛官、検察官、裁判官などの〇〇官という職すべてに当てはまります。政治家にはあまり用いません。〇〇官という官職に就くときに用いると覚えてください。

「野に下る」を使いこなそう

この記事では「野に下る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

言葉の意味から政治色の強い解説になってしまいました。しかし政治だけでなく歴史関連の書物ではよく使われるので、野に下ったことのある戦国武将などを調べてみる方が、政治家を例に挙げるよりは面白いと思います。あとは読み方を間違えないようにさえ気を付けてもらえれば、意味が限定されているため誤用することはないでしょう。

細かいことを言えば、「在野」との違いは意識してください。「野に在る」ことを「在野」と言うのです。「野」の意味は同じでも「下る」と「在る」は違います。どの言葉もそうですが、このちょっとしたニュアンスの違いが大きな間違いを引き起こすのです。言葉一つ一つの意味をしっかり考える習慣をつけると、初めての言葉でも何となく意味が読み取れることもありますので役に立つでしょう。私も引き続き学んでいきたいと思います。

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国語言葉の意味

【慣用句】「野に下る」の意味や使い方は?例文や類語を読書好き現役看護師がわかりやすく解説!

この記事では「野に下る」について解説する。

「野に下る」の意味は「官職を辞めるて民間に入る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

読書が趣味の現役看護師T.MINAMOTOを呼んです。一緒に「野に下る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/T.MINAMOTO

現役看護師として働きながら趣味の読書で日々知識を蓄えている。そのため漢字や慣用句の出典の知識も有している。

「野に下る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「野に下る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「野に下る」の意味は?

「野に下る」には、次のような意味があります。

1.官職を退いて民間の生活にはいる。下野する。

出典:大辞林(三省堂)「野に下る」

この言葉は「やにくだる」と読みます。「のにくだる」ではありません。熟語にすると「下野(げや)」です。政治の世界では与党から野党になることも「野に下る(下野)」と表現します。近い言葉で「在野」(ざいや)という言葉がありますが、こちらは「公職に就かず民間で活動する人」という意味です。「野に下る」が官職から民間への異動を意味するのに対し、「在野」はすでに民間にいることを意味しますので、「野に下る」と「在野」は類義語とは言えません。

「野に下る」の語源は?

「野に下る」がいつごろ使われ始めたのかは不明です。そのためここでは語の説明をします。先ほども書きましたが「のにくだる」は間違いです。「や」と「の」では意味するところが変わってきます。

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