
この「幕を下ろす」という表現は、簡潔に言えば「物事が終わる・物事を終える」という意味です。ただ、他の「幕」という字を使った表現とややこしいので注意が必要です。
今回はその「幕を下ろす」について、院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうぞ!
- 「幕を下ろす」の意味や使い方は?
- 「幕を下ろす」の意味は「物事が終わる・物事を終える」
- 「幕を下ろす」の使い方を例文とともに確認!
- 「幕を下ろす」の類義語は?
- 「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」:物事を終わりにする
- 「締めくくる」:物事の結末をつける
- 「幕を下ろす」の英語表現は?
- 「end」:終える・~の終わりとなる
- 「finish」:終える・終わる
- 混同に注意!「幕」を使ったその他の表現
- 「幕を切って落とす」:華々しく物事を始める
- 「幕が開く」「幕を開ける」:物事が始まる・物事を始める
- 「幕を引く」「幕を閉じる」:物事が終わる・物事を終える
- 自分の意思で下ろす場合も、そうでない場合も使える「幕を下ろす」
この記事の目次

ライター/むかいひろき
ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。
「幕を下ろす」の意味や使い方は?

image by iStockphoto
「幕を下ろす」という言葉、一度は必ず聞いたことがあるでしょう。ただ、他の「幕を引く」「幕を切って落とす」などの言葉との違いがややこしくなってくることもあるかもしれません。まずは、「幕を下ろす」の意味や使い方を再確認していきましょう。
「幕を下ろす」の意味は「物事が終わる・物事を終える」
最初に「幕を下ろす」の辞書での意味を確認していきます。ことわざ辞典で「幕を下ろす」で調査したところ、「幕を閉じる」を参照するようにと出てきたので、「幕を閉じる」の意味を以下に掲載しますね。
1.芝居などを終えて、幕をしめる。
2.物事が終わる。また、物事を終える。
「幕を下ろす」も同じ意。
出典:明鏡 ことわざ成句使い方辞典(大修館書店)「まくをとじる【幕を閉じる】」
ことわざ辞典によると、「幕を下ろす」と同じ意味である「幕を閉じる」の意味は2つあります。1番目の意味は「幕を閉じる」「幕を下ろす」という言葉の大元の意味ですね。今回解説していくのは2番目の「物事が終わる・物事を終える」という意味です。
劇や芝居の終了時に舞台に幕を下ろしますが、そこから「幕を閉じる」「幕を下ろす」という言葉が比喩的に2番目の意味で使われだしたと考えられています。
「幕を下ろす」の使い方を例文とともに確認!
続いて、「幕を下ろす」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「幕を下ろす」は、(1)人の意思で幕を下ろす場合(他動詞的用法)にも、(2)人の意志に関係なく物事が終わる場合(自動詞的用法)にも使用できます。
1.父親から継いだ今の店だが、私の代で幕を下ろそうと考えている。
2.祖父は100歳の誕生日に、老衰によってその生涯に幕を下ろした。
3.日本の無条件降伏によって太平洋戦争は幕を下ろした。
例文1は、(1)人の意思で幕を下ろす場合(他動詞的用法)の例です。「私の代でお店を閉じようと考えている」という意味で「幕を下ろす」が使用されています。お店を閉じる…という行動は私の意思から生まれていますよね。
例文2は、(2)人の意志に関係なく物事が終わる場合(自動詞的用法)の例です。「その生涯を終えた(=死んだ)」という意味で「幕を下ろす」が使用されています。老衰による死は自分の意思で引き起こせるものではないので、(2)の使用法が該当しますね。
例文3は(1)とも(2)ともとれる用法です。「太平洋戦争は終結した」という意味で「幕を下ろす」が使用されていますが、戦争を終わらせようと努力した人も、最後まで徹底抗戦しようと考えた人もいました。このように、(1)とも(2)ともとることが可能なような、出来事や歴史的事象の終結にも「幕を下ろす」は使用可能です。
こちらの記事もおすすめ

第二次世界大戦との区別もわかりやすく解説!「太平洋戦争」を元塾講師が分かりやすく5分でわかりやすく解説
「幕を下ろす」の類義語は?

image by iStockphoto
次に、「幕を下ろす」の類義語を確認していきましょう。「幕を下ろす」の類義語は「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」と、「締めくくる」です。それぞれの意味の確認や「幕を下ろす」との比較を行っていきます。
「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」:物事を終わりにする
「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」は「続いてきた物事を終わりにする」という意味の慣用表現です。「ピリオド」は英文などで文章に最後につける「.」のこと。これを日本語にしたのが「終止符」です。
意味は「幕を下ろす」と違いはありません。ただ、「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」は、「幕を下ろす」の用法の(2)人の意志に関係なく物事が終わる場合(自動詞的用法)では原則使用しません。
こちらの記事もおすすめ

「終止符を打つ」の終止符はピリオドのこと?意味や例文・類義語を元塾講師ライターが丁寧にわかりやすく解説!
「締めくくる」:物事の結末をつける
「締めくくる」は「物事のまとまりをつける、結末をつける」という意味の表現です。簡潔に言えば「物事を終わらせる」という意味の表現ですね。
こちらも「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」と同じで、意味は「幕を下ろす」と違いはありません。ただ、「幕を下ろす」の用法の(2)人の意志に関係なく物事が終わる場合(自動詞的用法)では使用しにくいです。
「幕を下ろす」の英語表現は?
続いて、「幕を下ろす」の英語表現を確認していきましょう。「幕を下ろす」をそのまま直訳しても同じ意味は表すことはできないので注意が必要です。「幕を下ろす」の意味から英語表現を考えていきましょう。
\次のページで「「end」:終える・~の終わりとなる」を解説!/