この記事では「恥をかく」について解説する。

端的に言えば恥をかくの意味は「恥ずかしい思いをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「恥をかく」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。今までの自身を振り返ると、太宰治にあこがれて「恥の多い生涯を送って来ました」ということにしておきたい。さすがにまだ「人間失格」ではないが。

「恥をかく」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「恥をかく」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「恥をかく」の意味は?

「恥をかく」には、次のような意味があります。

人前で恥ずかしい思いをする。面目を失う。「人の名前を読み違えて―・く」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「恥を掻・く」

恥ずかしい思いをする」、想像通りですよね。ちなみに「面目を失う」の「面目」とは「世間の人に合わせる顔」という意味で、「面目を失う」は「体面を損なう、名誉を傷付けられる」となります。

ところで、なぜ「恥」(はじ)は漢字で書くと耳へんなのでしょうか。調べたところ、中国語で恥ずかしいという意味の漢字の音を単に「耳」という字で表したとする説と、恥ずかしいと思ったときに耳が赤くなるからという説がありました。確かに現代の日本語の音読みですと「恥」は「チ」、耳は「ジ」と近いですよね。しかし、それだと耳という字である必要性を感じないので、個人的には耳が赤くなるからという説であってほしいという願望があります。

「恥をかく」の語源は?

では、どうして恥ずかしい思いをすることを「恥をかく」と言うのでしょうか。

恥をかくの「かく」、実は漢字で「掻く」と書きます。「掻く」という字を見ると、腕や顔などをポリポリ「掻く」というイメージしかわかないですよね。ところが「掻く」を辞書で調べると、たくさんの意味があることがわかります。さっそく見てみましょう。

\次のページで「「恥をかく」の使い方・例文」を解説!/

  1. 指先やつめ、またはそれに似たもので物の表面を強くこする。「かゆい所を―・く」

  2. 手やそれに似たものであたり一帯にある物を引き寄せたり押しのけたりする。「雪を―・く」「手で水を―・いて進む」

  3. 刃物を手前に引いて切り取る。「寝首を―・く」

  4. 刃物を押し当てて細かく削りとる。「氷を―・く」「かつおぶしを―・く」

  5. 箸 (はし) などですばやく混ぜ合わせて粘液状の物にする。「からしを―・く」

  6. 犂 (すき) などで田畑を耕す。「苗代を―・く」

  7. あまり好ましくないものを表面にだす。㋐恥などを身に受ける。「赤っ恥を―・く」㋑涙や汗などをからだの外に出す。「寝汗を―・く」「べそを―・く」㋒いびきを立てる。「高いびきを―・く」

  8. 「…する」をののしっていう語。「欲を―・くな」

  9. 琴などの弦をつめなどではじくようにする。掻き鳴らす。「ただ少し―・き出でたる、大殿 (おとど) のうちひびきみちていみじきを」〈宇津保・俊蔭〉

  10. 指先を物に食い込ませるようにしてつかまる。とりすがる。「梯 (はし) 立ての倉椅 (くらはし) 山を嶮 (さが) しみと岩―・きかねてわが手取らすも」〈記・下〉

  11. 髪をくしけずる。「目に髪のおほへるを―・きはやらで」〈枕・一五一〉

  12. 飯などを急いで食べる。かっこむ。「猫殿、ただ―・き給え」〈盛衰記・三三〉

  13. 手を振って合図する。「『あなかま』と、手―・くものから」〈源・夕顔〉

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「掻・く」

こんなにも「掻く」という言葉の意味があるのです。いろいろな場面で使われるなんてビックリしますよね。

先に挙げた「腕を掻く」の「掻く」は、1の「指先やつめ、またはそれに似たもので物の表面を強くこする」です。そして「恥を掻く」の「掻く」は、7の「あまり好ましくないものを表面にだす」になります。つまり「恥をかく」とは、「恥ずかしいというあまり人に見せたくない感情が表面に出てしまう」ということです。

「恥をかく」の使い方・例文

「恥をかく」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.知史君、こうしてみんなの前で恥をかくのもいい機会だよ。
2.お願いだから、そんな無謀な冒険は親戚一同が恥をかくだけだからやめて。
3.国際会議で今発表しても恥をかくことは承知の上だが、この研究はいつか世界中の科学者から評価されるはずだ。

恥をかく」のはそのような行為をした本人だけではありません。例文2でわかる通り、無謀な冒険をして恥ずかしいと思うのは冒険をする本人ではなく、他人である親戚一同だったりします。

また、「恥をかく」ことは必ずしも悪いことではありません。例文1のようにいい経験だととらえられることもあります。「失敗は成功の母」と言うように、チャレンジ精神というものは必要です。いきなり補助輪なしで自転車に乗れませんし、宝くじを1枚買っただけで1等なんか当たりっこないですよね。

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「恥をかく」の類義語は?違いは?

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では、「恥をかく」の類義語は何でしょうか。

「汚名を着せられる」

汚名を着せられる」(おめいをきせられる)も、不名誉な立場になるという意味では「恥をかく」と一緒です。ただし、「汚名」とは「悪い評判」のことを言うので、「恥ずかしい思いをする」というよりは「悪のレッテルを貼られるプライドを傷付けられる」という意味となります。

ところで、あなたは「汚名」で始まる四字熟語と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。近年では「汚名挽回」と言う人が増加しているというアンケート結果が出ました。実際には「汚名」を「挽回」ですと「悪い評判を取り戻す」となり、これはおかしな表現です。よって、多くの辞書では「汚名挽回」を扱わずに「汚名返上」のみを掲載しています。

「恥をかく」の対義語は?

さらに「恥をかく」の対義語も追っていきましょう。

「雪辱を果たす」

雪辱」(せつじょく)は「恥を取り除くこと」という意味です。「雪辱を果たす」(せつじょくをはたす)とすると、特に競技などで以前負けた相手を破って名誉を取り戻すことを言います。

しかし、恥を取り除くのになぜ「雪」の字を使うのでしょうか。実は、「雪」という字は「ゆき」の他に「すす(ぐ)、そそ(ぐ)」という読み方があるのです。「すすぐ」も「そそぐ」も「ぬぐいさる」という意味があります。「辱め(はずかしめ)を雪ぐ(すすぐ、そそぐ)」で「雪辱」というわけです。

ついでに言えば「汚名挽回」もそうですが、「雪辱を晴らす」という誤用も最近増えました。正しくは「雪辱を果たす」です。こういう場合はまた言葉を分解して考えましょう。「雪辱」は「辱めを雪ぐ」なので、「雪辱を晴らす」だと「恥ずかしいことを取り去るのを晴らす」となり、一度除去したものをなくすという二重の打ち消しとなってしまいます。恥ずかしいことから早く逃れたいという気持ちは分かりますが、何事もやり過ぎはいけません。

「恥をかく」の英訳は?

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「恥をかく」の英訳にもふれていきましょう。

「shame」

shame」(シェイム)とは「という意味の名詞です。「be put to shame」で「恥を押し付けられる」、つまり「恥をかく」となります。また、「shame」1語でも「恥をかくという動詞として使用可能なので、とても便利な単語です。

ちなみに対義語で紹介した「雪辱」の英訳はわかりますでしょうか。1度は聞いたことがあるはずです。そう、「revenge」(リベンジ、リヴェンジ)ですよね。簡単だったでしょうか。

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「恥をかく」を使いこなそう

この記事では「恥をかく」の意味・使い方・類語などを説明しました。

あまり「恥をかく」ことはしたくないですよね。でも、恥をかいた分だけ成長するとも言えます。だって「恥をかく」ことは経験を積むことと同じですから。恥ずかしいのを理由に何もしないよりは、とにかく自分から何か行動を起こすことが大事です。言葉の習得も同じですよね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「恥をかく」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「恥をかく」について解説する。

端的に言えば恥をかくの意味は「恥ずかしい思いをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「恥をかく」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。今までの自身を振り返ると、太宰治にあこがれて「恥の多い生涯を送って来ました」ということにしておきたい。さすがにまだ「人間失格」ではないが。

「恥をかく」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「恥をかく」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「恥をかく」の意味は?

「恥をかく」には、次のような意味があります。

人前で恥ずかしい思いをする。面目を失う。「人の名前を読み違えて―・く」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「恥を掻・く」

恥ずかしい思いをする」、想像通りですよね。ちなみに「面目を失う」の「面目」とは「世間の人に合わせる顔」という意味で、「面目を失う」は「体面を損なう、名誉を傷付けられる」となります。

ところで、なぜ「恥」(はじ)は漢字で書くと耳へんなのでしょうか。調べたところ、中国語で恥ずかしいという意味の漢字の音を単に「耳」という字で表したとする説と、恥ずかしいと思ったときに耳が赤くなるからという説がありました。確かに現代の日本語の音読みですと「恥」は「チ」、耳は「ジ」と近いですよね。しかし、それだと耳という字である必要性を感じないので、個人的には耳が赤くなるからという説であってほしいという願望があります。

「恥をかく」の語源は?

では、どうして恥ずかしい思いをすることを「恥をかく」と言うのでしょうか。

恥をかくの「かく」、実は漢字で「掻く」と書きます。「掻く」という字を見ると、腕や顔などをポリポリ「掻く」というイメージしかわかないですよね。ところが「掻く」を辞書で調べると、たくさんの意味があることがわかります。さっそく見てみましょう。

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