この記事では「肩で息をする」について解説する。

端的に言えば肩で息をするの意味は「苦しそうに呼吸をする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「肩で息をする」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

運動は苦手かつ嫌いなため、「肩で息をする」ようなハードなスポーツからはずいぶん遠ざかっているらしい。一体どんなときに使う言葉なのか、英語表現なども含めて解説してもらう。

「肩で息をする」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「肩で息をする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肩で息をする」の意味は?

「肩で息をする」には、次のような意味があります。

苦しそうに、肩を上げ下げして呼吸をする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

全力疾走をするなど激しく体を動かしたあとは、息も絶え絶えになり、呼吸に伴って肩が上下してしまうことがありますね。そんな、顔はもちろん肩や背中といった上半身全体を使って酸素を取り込もうとする姿勢を表すのが「肩で息をする」です。

ちなみに運動をすると、体内の酸素の消費量は安静にしているときの10倍以上になるとか。すると血液中の酸素濃度が低下します。また筋肉中の乳酸が分解されて呼吸中枢が刺激されたり、筋や関節からの神経反射、さらに体温上昇により熱放散が増えたりすることでも呼吸数が増加するそうです。

だから運動すると呼吸数が増え、呼吸の深さも増大するというメカニズムらしいですよ。

「肩で息をする」の使い方・例文

「肩で息をする」の使い方を、例文を使ってみていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・地域の高校生の陸上大会は白熱の戦いになり、ゴール後の生徒はみんな肩で息をしていた。

・母の見舞いに行ったら、年齢のせいもあるだろうが肩で息をしながら話していて、切なくなってしまった。

このように、激しく動いたあとに呼吸が上がってしまった様子を表すのが「肩で息をする」。体内の細胞すべてが酸素を求めているようなイメージが浮かびますね。運動後に限らず、2番目の例文のように、酸欠状態など体調が悪いために苦しそうに息をする様子を表すこともありますよ。

ちなみに風邪で咳が止まらない場合に、肩呼吸や多呼吸(呼吸がいつもよりも早い)の症状もあり場合は、呼吸困難の徴候と言えるので早めに受診した方がよいそうです。

「肩で息をする」の類義語は?違いは?

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では、「肩で息をする」と同じ意味を表す言葉にはどのようなものがあるか、見ていきましょう。

「息が上がる」

同じ「息」という言葉を使った表現で「息が上がる」があります。日ごろ運動不足な人が急に登山にでも行こうものなら、少し山道を歩いただけですぐに「もう息が上がったよ」と言うことでしょう。辞書では意味をこう説明しています。

呼吸が平時のような継続的な機能を保てなくなるさま。

出典:実用日本語表現辞典

確かに走ったり踊ったりしたあとに、「息が上がった」と言うことがありますね。

ここでの「上がる」は「上へ行く」「上向く」といった意味ではなく、本来の機能が失われることを表しています。「バッテリーが上がる」と同じ使われ方ですよ。

「息が切れる」

やはり「息」つながりでは「息が切れる」という言い方も。こちらは意味が複数あるので注意が必要です。

まずその意味を確認しておきましょう。

\次のページで「「肩で息をする」の対義語は?」を解説!/

1.息切れがする。あえぐ。

2.物事を続けることが苦しくなり、中途でやめる。

3.息が止まる。死ぬ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

1.東京暮らしで雪道に慣れていないから、少し歩いただけで息が切れた。

2.規定の変更は価格交渉で意見が分裂し、志半ばで息が切れた。

3.病院長直々の治療の甲斐もなく、ついに息が切れた。

このような意味がある「息が切れる」。1.の意味で使われる場合は「肩で息をする」と置き換えることができますが、意味が完全にイコールとはいえません。「肩で息をする」には2.のような「途中で断念する」とか、3.のような「死ぬ」という意味はありませんので注意しましょう。

「肩で息をする」の対義語は?

息が荒くなっているさまを表すのが「肩で息をする」ですから、対義語は静かに呼吸する様子を表現する慣用句がいいでしょう。

「息をひそめる」

漢字を使うなら「息を潜める」と書きます。「潜」という字は「もぐる」というときにも使いますね。こっそり隠れるイメージの際によく使われる漢字です。

かくれんぼで物陰に隠れたときは、見つからないようにと思うあまり息をするのもはばかられる気分になりませんか。そんな様子を表現しています。

・娘は甘えん坊な性格だから、出勤するのがばれると泣かれてしまう。だから毎朝息をひそめて玄関を出ているんだよ。

・会員たちは、少数者の権利保護に関する重要な決定が行われる会議を息をひそめて見守っている。

「息を殺す」

こちらも「息をひそめる」と同様、なるべく音を立てないようにひっそりじっとしている様子を表します。

\次のページで「「肩で息をする」の英訳は?」を解説!/

「肩で息をする」の英訳は?

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では、英語にも「肩で息をする」を表す言葉はあるのでしょうか。ご紹介します。

「pant」

「肩で息をする」の意味を動詞1つで表せるのがpantです。「激しく息をする」という意味を持ちます。強調したいときは後ろに「for breath」をつけることも可能です。

たとえば以下のように使いますよ。

・He was panting.

(彼は肩で息をしていた)

「breathe heavily」

「呼吸する」を表す「breathe」のあとに、「重く、苦しく」という意味の副詞「heavily」をつけてもやはり「苦しそうに息をする」という意味になります。

Normally when your body needs more oxygen, you automatically breathe more heavily and fill the need.

(普通、体の酸素必要量が増えると,その必要を満たすために自然に息遣いが荒くなります。)

「肩で息をする」を使いこなそう

この記事では「肩で息をする」の意味・使い方・類語などを説明しました。「息」を使う表現は、類義語や対義語で紹介した以外にも「息をのむ」「息が詰まる」などいろいろありますね。酸素と二酸化炭素の交換作業である呼吸は、生物が生きていくうえで必要不可欠。それだけにとても身近で、そこからさまざまな慣用句が生まれたのでしょう。ほかの表現もぜひ押さえて、豊かな日本語を使えるようになってください。

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国語言葉の意味

【慣用句】「肩で息をする」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「肩で息をする」について解説する。

端的に言えば肩で息をするの意味は「苦しそうに呼吸をする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「肩で息をする」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

運動は苦手かつ嫌いなため、「肩で息をする」ようなハードなスポーツからはずいぶん遠ざかっているらしい。一体どんなときに使う言葉なのか、英語表現なども含めて解説してもらう。

「肩で息をする」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「肩で息をする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肩で息をする」の意味は?

「肩で息をする」には、次のような意味があります。

苦しそうに、肩を上げ下げして呼吸をする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

全力疾走をするなど激しく体を動かしたあとは、息も絶え絶えになり、呼吸に伴って肩が上下してしまうことがありますね。そんな、顔はもちろん肩や背中といった上半身全体を使って酸素を取り込もうとする姿勢を表すのが「肩で息をする」です。

ちなみに運動をすると、体内の酸素の消費量は安静にしているときの10倍以上になるとか。すると血液中の酸素濃度が低下します。また筋肉中の乳酸が分解されて呼吸中枢が刺激されたり、筋や関節からの神経反射、さらに体温上昇により熱放散が増えたりすることでも呼吸数が増加するそうです。

だから運動すると呼吸数が増え、呼吸の深さも増大するというメカニズムらしいですよ。

「肩で息をする」の使い方・例文

「肩で息をする」の使い方を、例文を使ってみていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・地域の高校生の陸上大会は白熱の戦いになり、ゴール後の生徒はみんな肩で息をしていた。

・母の見舞いに行ったら、年齢のせいもあるだろうが肩で息をしながら話していて、切なくなってしまった。

このように、激しく動いたあとに呼吸が上がってしまった様子を表すのが「肩で息をする」。体内の細胞すべてが酸素を求めているようなイメージが浮かびますね。運動後に限らず、2番目の例文のように、酸欠状態など体調が悪いために苦しそうに息をする様子を表すこともありますよ。

ちなみに風邪で咳が止まらない場合に、肩呼吸や多呼吸(呼吸がいつもよりも早い)の症状もあり場合は、呼吸困難の徴候と言えるので早めに受診した方がよいそうです。

「肩で息をする」の類義語は?違いは?

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では、「肩で息をする」と同じ意味を表す言葉にはどのようなものがあるか、見ていきましょう。

「息が上がる」

同じ「息」という言葉を使った表現で「息が上がる」があります。日ごろ運動不足な人が急に登山にでも行こうものなら、少し山道を歩いただけですぐに「もう息が上がったよ」と言うことでしょう。辞書では意味をこう説明しています。

呼吸が平時のような継続的な機能を保てなくなるさま。

出典:実用日本語表現辞典

確かに走ったり踊ったりしたあとに、「息が上がった」と言うことがありますね。

ここでの「上がる」は「上へ行く」「上向く」といった意味ではなく、本来の機能が失われることを表しています。「バッテリーが上がる」と同じ使われ方ですよ。

「息が切れる」

やはり「息」つながりでは「息が切れる」という言い方も。こちらは意味が複数あるので注意が必要です。

まずその意味を確認しておきましょう。

\次のページで「「肩で息をする」の対義語は?」を解説!/

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