今の日本人の平均寿命は男で約81歳、女で87歳とされている。平安時代の平均寿命が男女平均で30代だったことを考えると飛躍的に寿命が延びていることが分かる。人間の平均寿命が長引いているのは喜ばしいことですが、公的年金だけでは老後生活が破綻しかねない『長生きリスク』が指摘され始めるなど良いことばかりでもないらしいのです。今回の記事では、『寿命』が決定づけられる要因や医療の歴史について国立大学院で修士号(農学)を取得しているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

日本人の長寿の歴史を探ろう!

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近年では世界有数の長寿国として知られてている日本。2016年に発表されたWHOの統計によると、日本人の平均寿命は男女平均で84.2歳で世界一位の座に輝いています。世界全体の平均寿命が71歳前後であることを加味すると、世界平均よりも10年以上長生きする日本人は民族的特徴として長生きであるように思えますよね。しかし、この結果を基に『昔から日本人は長生きする民族だった』と結論付けるのは早いです。実際に、1950年代の日本人の平均余命は50代であり、今よりも大きく下回った水準にあります。では、平均寿命が長い理由は何なのでしょうか?早速解説していきましょう!

そもそも平均寿命ってどんな意味?

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解説を始める前に、平均寿命について解説しましょう。皆さんは

平均寿命

平均余命

健康寿命

の違いをご存知でしょうか?よく似た概念であるため、これを機会に学びましょう。簡単に説明すると、『寿命』とはある人が生まれてから死ぬまでの時間の総和を意味しており、『余命』はある人が死ぬまでに残された時間を指します。

一般的には平均寿命が延びることは喜ばしいことなのですが、高齢者の寝たきり問題や老々介護といった高齢化社会特有の問題が顕在化している現状...そこで考え出された新しい概念が健康寿命という訳です。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義づけされており、男性では71歳、女性で74歳とされています。健康寿命と平均寿命の差は男性で9年、女性では12年と大きな開きがあり、現在も拡大傾向にあるのです!

\次のページで「なぜ平均寿命はここまで伸びたのか?」を解説!/

なぜ平均寿命はここまで伸びたのか?

よく観察してみると不自然なまでに伸びた『平均寿命』の謎。本来健康ではない人がこれほどまでに長生きできるようになってしまったのにはどんな理由があるのでしょうか?その理由について見ていきましょう。

医療技術が進歩したため

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ここ数十年で医療技術が飛躍的に進歩したことが理由の一つに挙げられます。日本では、乳幼児の死亡率は1000人当たり1.9人と世界と比較して桁違いに低い水準です。過去の日本と比較しても、戦争直後である1947年の乳児死亡率は1000人当たり76.7人と今よりも40倍も高い水準となっています。これは日本の高度経済成長期にかけて環境衛生が改善されたことや、母親の栄養状態が改善されたことが原因でしょう。

また、国民保険制度が整備されており、日本国民すべてが安い料金で病院に通えることも大きいと言えます。アメリカをはじめとした先進国の場合でも、国民が病院に見てもらうだけで全額負担を強いられる国は少なくありません。この結果病状が深刻化する前に病気を発見することが出来、平均寿命を増加させる原因となります。

生活習慣の変化

生活習慣の変化

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食生活をはじめとした生活習慣の変化が長寿化要因になっているといった研究報告もあります。昔の日本では、結核や脳疾患が死因順位の上位を占めていました。ご存知の方も多いでしょうが、結核といった病は今では治療法の確立によって「治る病気」とされていますが、昔は不治の病として恐れられていました。しかし、今では国民の病気に対する知識の向上や環境衛生の改善によってその数を減らしています。

また、昔は死因上位であった脳疾患の減少には冷蔵庫の普及が関係しているといった面白い報告も!冷蔵庫が出来るまでは、人々は食料保存の手段として塩を使用していました。適量の塩は体の恒常性を保つために必要な物質なのですが、日常的に大量摂取すると脳疾患等の原因となります。昔の人は保存用に使用した塩の過剰摂取が原因で脳疾患を起こしていたという訳ですね。しかし、冷蔵庫の普及により塩を用いない食料保存の技術が発達した結果、脳疾患が原因の志望者数が減少したとのことです。

生き物の寿命を決める要因って何?

このように、医療技術の発達や生活習慣の改善によって人間の平均寿命が伸びていることが分かりました。今後より医療技術が発達すれば、200歳の超長寿なおじいちゃん、おばあちゃんが誕生するのでしょうか?そう思った方もいらっしゃるかもしれません。実は、人間が理論的に長生きできる限界は120歳前後であると医学的に証明されているのです。それでは、人間をはじめとした地球上のすべての生き物はどのようにして寿命が決定されるのかについて見ていきましょう。

寿命を決定する要因-テロメア-

Telomere.png
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寿命を決定する要因はすでに発見されており、その名前を『テロメア』と呼びます。この物質の特徴から、別名”命の回数券”とも呼ばれている物質です。生物の遺伝情報が収納されているDNAは染色体という形で細胞内に存在していますが、その両端の部分はテロメアと呼ばれ染色体を保護する役割を果たすと考えられています。細胞が分裂するごとにテロメアは短くなっていき、一定回数以上分裂をすることでテロメアは消滅してしまうのです。テロメアが消滅した細胞ではそれ以上分裂を行うことが出来ず、結果的にその細胞が死亡した時点で生物としても寿命を迎えてしまう、ということです。人間の場合、テロメアが消滅してしまう限界の年齢がおよそ120歳という訳ですね。

このように、テロメアは廊下に関する重要物質でありアンチエイジングの分野では積極的に研究されています。一定条件下ではテロメアは酵素によって修復されることが発見されているため、今後の研究次第では120歳の壁を越えて人類が若々しく暮らせる社会が到来するかもしれません!

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奥が深い寿命とテロメアの関係

今回の記事では日本人の平均寿命について解説しました。今でこそ80代まで長生きするようになった日本人ですが、ほんの50年ほど前は50代後半が平均寿命でした。生活習慣の改善や医療技術の発達により平均寿命は大幅に伸びましたが、今度は健康寿命との乖離が目立つようになりました。

このような寿命を決める要因としてはテロメアの存在がカギとなりますが、このテロメアという物質はまだ謎が多い!具体的には、サルは人間の約2倍ほどテロメアが長いにもかかわらず、寿命は人間のおよそ半分程度。どうやらテロメアの量が多いだけでは長寿化と結びつかないようです。生き物って複雑で難しいですね!

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理科生物細胞・生殖・遺伝

5分で分かる「日本人の寿命」テロメアって物質がカギ?理系院卒ライターがわかりやすく解説!

今の日本人の平均寿命は男で約81歳、女で87歳とされている。平安時代の平均寿命が男女平均で30代だったことを考えると飛躍的に寿命が延びていることが分かる。人間の平均寿命が長引いているのは喜ばしいことですが、公的年金だけでは老後生活が破綻しかねない『長生きリスク』が指摘され始めるなど良いことばかりでもないらしいのです。今回の記事では、『寿命』が決定づけられる要因や医療の歴史について国立大学院で修士号(農学)を取得しているライターふくろう博士と一緒に解説していきます。

ライター/ふくろう博士

国立理系大学院で修士(農学)を取得し、現在は民間企業の研究職に従事している典型的な理系人間。「理系好きな学生を一人でも多く増やす」をキーワードにインターネットの世界で活躍中!自身のサイトでは大学生に役立つ情報を日々提供している。

日本人の長寿の歴史を探ろう!

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近年では世界有数の長寿国として知られてている日本。2016年に発表されたWHOの統計によると、日本人の平均寿命は男女平均で84.2歳で世界一位の座に輝いています。世界全体の平均寿命が71歳前後であることを加味すると、世界平均よりも10年以上長生きする日本人は民族的特徴として長生きであるように思えますよね。しかし、この結果を基に『昔から日本人は長生きする民族だった』と結論付けるのは早いです。実際に、1950年代の日本人の平均余命は50代であり、今よりも大きく下回った水準にあります。では、平均寿命が長い理由は何なのでしょうか?早速解説していきましょう!

そもそも平均寿命ってどんな意味?

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解説を始める前に、平均寿命について解説しましょう。皆さんは

平均寿命

平均余命

健康寿命

の違いをご存知でしょうか?よく似た概念であるため、これを機会に学びましょう。簡単に説明すると、『寿命』とはある人が生まれてから死ぬまでの時間の総和を意味しており、『余命』はある人が死ぬまでに残された時間を指します。

一般的には平均寿命が延びることは喜ばしいことなのですが、高齢者の寝たきり問題や老々介護といった高齢化社会特有の問題が顕在化している現状…そこで考え出された新しい概念が健康寿命という訳です。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義づけされており、男性では71歳、女性で74歳とされています。健康寿命と平均寿命の差は男性で9年、女性では12年と大きな開きがあり、現在も拡大傾向にあるのです!

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