この記事では「鬼が笑う」について解説する。

端的に言えば「鬼が笑う」の意味は「非現実的なことをからかうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「鬼が笑う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「鬼が笑う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼が笑う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼が笑う」の意味は?

「鬼が笑う」には、次のような意味があります。

実現性の薄いことや予想のつかないことを、からかっていう言葉。「来年のことを言うと―・う」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼が笑う」

この言葉は「実現性がないことや、予想がつかないことを言った時にからかう」意味を持つ慣用表現です。よく使われるものとして「来年のことを言うと鬼が笑う」という言い方もあります。「来年(将来、未来)のことは予測できない。なのにそんなことをあれこれ言うなんて」という気持ちが表れるでしょう。

多くの場合、ここには「からかい」や「嘲笑(ちょうしょう=見下したり、笑いものにする)」の意味が含まれています。親しい間柄の相手に対して、軽く呆れた感じで使うこともできるでしょうが、強いネガティブなニュアンスが出ることも。使い方には注意したいものですね。

「鬼が笑う」の語源は?

次に「鬼が笑う」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、「来年のことを言うと鬼が笑う」が江戸時代に作られた「上方いろはかるた」に採用され、一般的に定着したことに要因があると考えられています。

「鬼」は、赤い顔をして角の生えた存在のイメージですが、古くは「霊的なもの」を広く意味する言葉として使われていました。これは「人の寿命や未来のことを見通せる存在」であり、人間が未来のことに一喜一憂しているとあざ笑う、と考えられたのです。これが変化し、来年のことに限らず「非現実的なことを言う」のを、「鬼が笑う」とからかうようになったと考えられます。

ちなみに、「上方いろはかるた」の「上方」は京都や大阪地方のこと。「江戸いろはかるた」では「ら行」は「楽あれば苦あり」だったそうで、地域ごとの違いも垣間見えます。京都には古くから神社や仏閣なども多く、この地方では「鬼」に対する認識も深かったのではと想像してみるのも面白いですね。

\次のページで「「鬼が笑う」の使い方・例文」を解説!/

「鬼が笑う」の使い方・例文

「鬼が笑う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・最近チームでの新しい目標を立てようと思っていたところ、出てきたのは漠然とした希望ばかりで、これでは鬼が笑ってしまうとがっかりした。

・不確定なビジネス世界において将来を予測して商品を開発するのも大切だが、わからないことばかり考えていても鬼が笑うよと先輩からのアドバイスをもらった。

・将来の心配ばかりしていた僕だったが、予測も出来ないことばかりに囚われていても鬼が笑うな、と考えられるようになってからは少しずつ楽になってきた。

実現性がないことや予測できないことに対する、からかいや嘲笑」のニュアンスが伝わりますでしょうか。「来年のこと」に限らず、例文のようにまだ来ていない未来や、実現がそもそも難しいだろうということに対しても使用できます。

そのため、この言葉が使われた場合は「見通しの甘さへの批判」や「心配性な性格への呆れ」などが表れることもあるでしょう。親子や先輩後輩、仕事の上司など、言う人と言われている人との関係性によって表現の意図が大きく変わる言葉です。

文章問題で見かけた場合はもちろん、現実で使われた際にもその意図をしっかり読み取りたいもの。冗談めかして言われていると思ったら、実は強い批判だったりすることがあるかもしれませんよ。

「鬼が笑う」の類義語は?違いは?

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「鬼が笑う」の類義語として「臍で茶を沸かす」と「一寸先は闇」をご紹介します。それぞれ異なる意味のため、特徴を確認してみてください。

「臍で茶を沸かす」

「臍で茶を沸かす」は「おかしくてたまらないこと。それを嘲笑して言うこと」を意味する慣用表現です。「鬼が笑う」とは「(やろうとしている、考えていることが)非現実的でばかばかしい」というニュアンスで同義語と言えるでしょう。

「来年のことを言うなんて臍で茶を沸かすよ」とそのまま言い換えることもできます。その言動を「からかう・嘲笑する」部分に強く寄った表現になるでしょう。他者に対して使う場合は、状況をよく考えて使ってくださいね。

\次のページで「「一寸先は闇」」を解説!/

普段勉強していない弟が叱られて、明日からたくさんやるよと言っているけれど、いつものこと過ぎて臍で茶を沸かしてしまう。

「一寸先は闇」

「一寸先は闇」は「すこし先のことも全く予知できない」ことを意味する慣用表現です。

「先のことなどわからない」という意味合いで、「来年のことを言うと鬼が笑う」の同義語といえるでしょう。「鬼が笑う」だけの場合は「未来への予想」が無い場合もあり、完全な同義語とはなりません。

こちらは「先のことはわからない・予測できない」という意味を表現したい時に使う言葉です。先に述べた「臍で茶を沸かす」との違いを押さえて、使い分けができるようにしてくださいね。

人気アイドルグループが、メンバーの一人がプライベートで起こした不祥事のために解散するまでに至ってしまった。一寸先は闇とはこのことだ。

「鬼が笑う」の対義語は?

「鬼が笑う」の対義語は「地に足の着いた」がいいでしょう。

「地に足の着いた」

「地に足の着いた」は「考え方や行動が堅実・着実でしっかりしていること」を表す慣用句です。

その「しっかりさ」を好意的にとらえて使われることが多く、「鬼が笑う」と嘲笑するのとはまさに反対の意味になる言葉と言えるでしょう。未来を夢見るのもいいことですが、一方で「地に足の着いた」考え方もしたいものですね。

事実をしっかり認識する、人との約束をきちんと守るなど、地に足の着いた言動が出来る人は、他人から信用されるだろう。

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「鬼が笑う」の英訳は?

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「鬼が笑う」の英語訳は「be laughable」がいいでしょう。

「be laughable」

「be laughable」は「ばかげた、軽蔑に値する」という意味のフレーズです。「laugh(笑う)」の変化形であり、「鬼が笑う」の言い換えとしてもわかりやすいでしょう。

「ばかげた」は他にも「ridiculous」や「foolish」などもあり、それらと入れ替えても構いません。紹介した単語は、どれもけなしたり、からかったりするニュアンスがあるため、使い方には注意が必要です。

It's laughable that he wants to be an adventurer without studying.
彼は勉強しないで冒険家になりたいなんて、鬼が笑ってしまうようなことだ。

「鬼が笑う」を使いこなそう

この記事では「鬼が笑う」の意味・使い方・類語などを説明しました。

鬼が笑ってしまうと言っても、好意的な「笑い」ではなく「嘲笑」が含まれているということで、現実的ではないことに対して、やや厳しい姿勢が読み取れる言葉でしたね。

「来年のことを言うと」という言葉がついて使われることが多いのは、確かに年末のとても忙しい時期に来年のことを言ってたら、それは現実逃避になるかも、なんてことを想像してしまいました。

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国語言葉の意味

【慣用句】「鬼が笑う」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「鬼が笑う」について解説する。

端的に言えば「鬼が笑う」の意味は「非現実的なことをからかうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「鬼が笑う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「鬼が笑う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼が笑う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼が笑う」の意味は?

「鬼が笑う」には、次のような意味があります。

実現性の薄いことや予想のつかないことを、からかっていう言葉。「来年のことを言うと―・う」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼が笑う」

この言葉は「実現性がないことや、予想がつかないことを言った時にからかう」意味を持つ慣用表現です。よく使われるものとして「来年のことを言うと鬼が笑う」という言い方もあります。「来年(将来、未来)のことは予測できない。なのにそんなことをあれこれ言うなんて」という気持ちが表れるでしょう。

多くの場合、ここには「からかい」や「嘲笑(ちょうしょう=見下したり、笑いものにする)」の意味が含まれています。親しい間柄の相手に対して、軽く呆れた感じで使うこともできるでしょうが、強いネガティブなニュアンスが出ることも。使い方には注意したいものですね。

「鬼が笑う」の語源は?

次に「鬼が笑う」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、「来年のことを言うと鬼が笑う」が江戸時代に作られた「上方いろはかるた」に採用され、一般的に定着したことに要因があると考えられています。

「鬼」は、赤い顔をして角の生えた存在のイメージですが、古くは「霊的なもの」を広く意味する言葉として使われていました。これは「人の寿命や未来のことを見通せる存在」であり、人間が未来のことに一喜一憂しているとあざ笑う、と考えられたのです。これが変化し、来年のことに限らず「非現実的なことを言う」のを、「鬼が笑う」とからかうようになったと考えられます。

ちなみに、「上方いろはかるた」の「上方」は京都や大阪地方のこと。「江戸いろはかるた」では「ら行」は「楽あれば苦あり」だったそうで、地域ごとの違いも垣間見えます。京都には古くから神社や仏閣なども多く、この地方では「鬼」に対する認識も深かったのではと想像してみるのも面白いですね。

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