今回は「チンダル光」について勉強していこう。

自宅やホテルでバスタブに入っている湯が青く見えたことはないか?これにはチンダル光(チンダル現象)が関わっているんです。

チンダル光の美しい写真とともに化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.チンダル光を写真で見てみよう

チンダル光について解説する前に、これがどのような現象なのか実際の写真で見ていきましょう。初めてこの言葉を聞いたという人も多いかと思いますが、実は誰しもが一度は目にしたことのある現象でもあるのです。

1-1.光の通り道

image by iStockphoto

チンダル光の代表といえばこのような光景でしょう。自然の中や建物の中など、光が降り注いでいる場面を想像してみてください。光が筋となって伸びているのを見たことがありませんか?まるで光の通り道ができたようですね。また、雲の切れ間から太陽の光が漏れ、光の柱ができることがあります。これもチンダル光の1つですよ。

1-2.ホテルや自宅のバスタブ

image by iStockphoto

2つ目の例はバスタブに注がれたお湯の色で見ることができます。元々の水は透明でバスタブは白系なのに、なぜかお湯が青く見えることがありますよね。これはホテルや自宅、どちらでも起こりうる現象です。(規模を大きくして考えれば、プールでも見てとれるでしょう。ただし、プールはプール自体が青く塗られている場合も多いので、例外もあります。)

念のため、これは配管から溶け出た銅などが影響しているわけではないことをお伝えしておきますね。銅は酸化されることで皮膜を作り、自らの腐食を防ぎます。(これについては別記事で解説しているので、ぜひ読んでみてくださいね。)もし銅イオンで浴槽内のお湯が青くするには相当量の銅イオンが含まれているはずですから、銅管の腐食による着色であるとは考えにくいでしょう。ちなみに、蛇口などの周辺にできる青い汚れは、銅管から溶け出た銅イオンとせっけん水などに含まれている脂肪酸が反応することで付着します。しっかり固まってしまうまえに擦り取ることができますよ。

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1-3.夢の吊橋(静岡県 寸又峡) 

1-3.夢の吊橋(静岡県 寸又峡) 

image by Study-Z編集部

チンダル現象による美しい光景として有名なのが、静岡県にある「夢の吊橋」です。この写真はライター自身が現地で撮影したもので、色の加工は一切していません。その日の天候や季節によって見え方は多少異なるものの、鮮やかな青色の絶景を見ることができます。

さあ、それではこの絶景がどのように生まれたのか、その理由を見ていきましょう。

2.チンダル光とは

それではチンダル光が生じる原理について詳しく見ていきましょう。そもそもチンダル光・チンダル現象とは光の特性によって起こる現象です。空気中には水蒸気や小さなほこり、その他にもたくさんの微粒子が含まれ、漂っています。同様に水にもミネラル分やその他の不純物など、様々な物質が混ざっていますね。このように微粒子が分散している状態が1つのヒントになります。

2-1.ブラウン運動

Brownian motion large.gif
Lookang Author of computer model: Francisco Esquembre, Fu-Kwun and lookang - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

チンダル光を理解するにはまずブラウン運動というものを理解する必要があります。ブラウン運動とは、液体中や気体中に漂う粒子がする不規則な運動です。分子の熱運動は固体から液体、液体から気体という順に大きく激しくなっていくことを覚えていますか?これによって同じ質量の物質でも固体より液体、液体より気体と体積が増えていきますね。また、この状態変化は温度の上昇に伴っておこります。(水は固体と液体の体積の大小が逆転する例外でした。)つまり、液体中や気体中に含まれる微粒子は絶えず運動し、互いに衝突を繰り返しています

image by Study-Z編集部

ブラウン運動は微粒子(溶液で溶質に該当する物質)の大きさが小さいほど激しくなるという性質をもっています。これを3つの条件で見てみましょう。

1つ目は水が入ったビーカー、2つ目は塩化ナトリウム水溶液、3つ目はせっけん水です。1のビーカーは水だけが入っているので中にあるのはごく小さな水分子のみであることがわかりますね。水分子はビーカー内を活発に動き回っています。2つ目は塩化ナトリウムがしっかり溶けている状態です。水溶液中には水分子と塩化物イオン、ナトリウムイオンが存在し、それぞれが激しく衝突しながら浮遊しています。小さな水分子(溶媒となる粒子)がごく小さな塩化物イオンとナトリウムイオンを動かすのは容易であると考えてみてください。そして3つ目はせっけんを溶かした水で、水にせっけんの粒子が均一に分散したコロイド溶液の状態です。

このコロイド溶液におけるコロイド粒子(せっけんの粒子)は水分子に比べて大きく、ブラウン運動をさせるには力が十分ではありません。そのためにブラウン運動は比較的穏やかであると考えられるでしょう。

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2-2.チンダル現象

2-2.チンダル現象

image by Study-Z編集部

同じ例を用いて、チンダル光が出現する条件に付いて考えてみましょう。それぞれのビーカーに光源を当てたとき、光の筋が見えるのは(3)せっけん水だけであることがわかります。これは(1)水(2)塩化ナトリウム水溶液も(3)せっけん水のように大きな粒子が含まれていないために光の通り道が途中で阻害されることがないからです。(3)せっけん水では一部の光はせっけんの粒子によって反射し散乱してしまいますが、粒子の隙間を通り抜けた光はそのまま直進し続けます。これが光の筋となって見えるのであり、チンダル光の正体です。

ブラウン運動によってコロイド粒子が動き回ることで光が拡散されるために見える現象ということですね。

青い光の波長が長く、赤い光の波長は長いという事実は信号機の色にも関係しています。青信号は空気中の粒子によって散乱しやすいため、角度や天候によっては見えにくいときがありますよね。しかし赤信号は天気や時間等に関係なくいつでもはっきりと見えるはずです。

これは赤い光が青い光(緑の光)に比べて空気中の粒子によって影響を受けにくいことを意味しています。視覚的効果として赤は注意を促す色ですが、科学的に見ても止まれが赤色である理由がわかりますね。

光の特性による物理的化学現象

チンダル光またはチンダル現象とは、光の特性によって起こる現象です。空気中や水中などに微粒子が漂っている状態であるとき、そこに光を通すことで現象が起こります。光がその中を拡散し、光の通り道となって見える現象のことです。19世紀のイギリスの物理学者に発見され、その名がつきました。

例として挙げた3つのうち、1つ目は木漏れ日と言ったりしますね。まさにチンダル光の代表例です。2つ目バスタブの例は自宅やホテル(HPなどの写真を参照してみるのもいいですね。)で見ることができます。3つ目は観光地として有名なスポットを紹介しました。気になる方は調べてみてくださいね。誰でも素敵な写真が撮れること間違いなしですよ。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単「チンダル光」お風呂の湯はなぜ青い?元塾講師がわかりやすく解説

今回は「チンダル光」について勉強していこう。

自宅やホテルでバスタブに入っている湯が青く見えたことはないか?これにはチンダル光(チンダル現象)が関わっているんです。

チンダル光の美しい写真とともに化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.チンダル光を写真で見てみよう

チンダル光について解説する前に、これがどのような現象なのか実際の写真で見ていきましょう。初めてこの言葉を聞いたという人も多いかと思いますが、実は誰しもが一度は目にしたことのある現象でもあるのです。

1-1.光の通り道

image by iStockphoto

チンダル光の代表といえばこのような光景でしょう。自然の中や建物の中など、光が降り注いでいる場面を想像してみてください。光が筋となって伸びているのを見たことがありませんか?まるで光の通り道ができたようですね。また、雲の切れ間から太陽の光が漏れ、光の柱ができることがあります。これもチンダル光の1つですよ。

1-2.ホテルや自宅のバスタブ

image by iStockphoto

2つ目の例はバスタブに注がれたお湯の色で見ることができます。元々の水は透明でバスタブは白系なのに、なぜかお湯が青く見えることがありますよね。これはホテルや自宅、どちらでも起こりうる現象です。(規模を大きくして考えれば、プールでも見てとれるでしょう。ただし、プールはプール自体が青く塗られている場合も多いので、例外もあります。)

念のため、これは配管から溶け出た銅などが影響しているわけではないことをお伝えしておきますね。銅は酸化されることで皮膜を作り、自らの腐食を防ぎます。(これについては別記事で解説しているので、ぜひ読んでみてくださいね。)もし銅イオンで浴槽内のお湯が青くするには相当量の銅イオンが含まれているはずですから、銅管の腐食による着色であるとは考えにくいでしょう。ちなみに、蛇口などの周辺にできる青い汚れは、銅管から溶け出た銅イオンとせっけん水などに含まれている脂肪酸が反応することで付着します。しっかり固まってしまうまえに擦り取ることができますよ。

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