
3分で簡単沈殿!溶液中の金属イオンを推定できる沈殿反応について元研究員がわかりやすく解説
このように既知の溶液を混ぜて、何色の沈殿ができたか確認する事で、溶けている金属イオンを推定できる場合があるんです。
今回は沈殿とは何か?から金属イオンと沈殿を作るイオンとその反応について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.真の溶液と沈殿とコロイド

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沈殿ができる反応を学ぶ時は、実際に実験をしてみてどんな色になるのか?液が濁るのか?固形物ができるのか?を観察するのが一番良い方法です。しかしすべて実験で学ぶには時間もお金もかかりますし、個人ではとても用意できるものではありません。それなので、今回は実験しているように頭の中でイメージしながら解説をお読みください。
まず沈殿という言葉の意味を理解するために、溶液と沈殿とコロイドの違いについてお話していきましょう。
1-1.真の溶液とは何か
最初に、何も混ざっていない水を用意します。溶媒(水など溶かすもの)に溶質(食塩など溶かされるもの)を混ぜたものが溶液です。水に少量の食塩を加えて全て溶けたとき、この溶液は無色透明になり、懸濁も沈殿物も存在しない溶液=真の溶液になります。
普段は「溶液」と呼んでいるものと変わりないのですが、今回は沈殿や懸濁がある溶液と区別したいのでこう呼ぶことをご理解ください。
1-2.沈殿とは何か
水に食塩を混ぜた食塩水に透明な硝酸銀水溶液を数滴加えて混ぜると、水に溶けにくい物質ができて集まり、だんだんと大きくなり液の底に沈みます。この水に溶けにくい沈んだ物質を沈殿と呼ぶのです。
このように沈殿ができた後一定時間おくと、液体の部分と固まりの部分に完全に分離します。しかし固まりがとても細かいと時間をおいても溶液の部分に浮遊していて沈まない場合もあるので、その状態について次の1-3.で解説しましょう。
1-3.コロイドとは何か
直径 10-5 wp_ から 10-7 wp_ で、水溶液と沈殿の間の大きさの粒子のことをコロイドと言います。コロイド粒子が存在する溶液をコロイド溶液といい、溶液状の状態のものも寒天状に固まった状態になるものもあるのです。
真の溶液とコロイド溶液の違いは、真の溶液が透明なのに対しコロイド溶液は濁っています。目視で判断するのがもし不安なら、吸光光度計という計測器で通過した光の量を比べることで、透明度の違いを数値として表すことも可能です。また、コロイド粒子はペーパーフィルターで補足できるので、沈殿がなくても溶液中に固体が存在していることが分かります。
2.金属イオンと沈殿を作るイオン
沈殿とは何かがわかったところで、金属イオンと結びついて沈殿を生成するイオンとその反応についてお話していきましょう。最初に少数派である沈殿を作らないイオンに触れておきます。
ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンは沈殿を作りません。金属イオン以外では、硝酸イオン、アンモニウムイオン、酢酸イオンも沈殿をつくらないので覚えておきましょう。
2-1.炭酸イオン
炭酸イオン(CO32-)はアルカリ金属を除く金属イオンと反応して炭酸~(例えば炭酸カルシウム)の白色沈殿を作ります。例としてカルシウムイオン(Ca2+)との反応式を見てみましょう。化学反応式の中に出てくる「 ↓ 」は沈殿を表しています。
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