この記事では「先手を打つ」について解説する。
端的に言えば、先手を打つの意味は「先に攻撃をしかけて優位に立つ」ことです。囲碁将棋の「先手」に由来すると言われているぞ。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「先手を打つ」の意味を確認し、語源や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「先手を打つ」の意味・語源・例文

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さっそく「先手を打つ」の意味と語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「先手を打つ」はどんな意味?

まず「先手を打つ」の意味を辞書でチェックしましょう。

1囲碁や将棋で、相手より先にうちはじめる。
2 相手の機先を制して優位に立つ。

出典:日本国語大辞典精選版「先手を打つ」

「先手」は、囲碁や将棋で先に打つことや、先に打つ人のこと指す言葉。1は、「囲碁や将棋で相手より先に着手する」という意味です。1から転じて2の「先に攻撃をしかけて優位に立つ」という意味で使われるようになりました。「先手をとる」という言い方もしますよ。

「先手を打つ」は囲碁将棋が語源?

囲碁で、はじめに石を打つ人を「先手(せんて)」、後からの人を「後手(ごて)」といいます。先手は黒の碁石、後手は白の碁石を交互に打っていきますが、陣地取りというゲームの性質上、有利なのは先手のほうだと言われていますよ。プロ棋士の対局では、「コミ」と呼ばれるハンディを6目半として計算しています。

将棋もはじめに指す人を「先手」、後からの人を「後手」といいますよ。将棋も先手のほうが有利とされており、公式戦での勝率は先手が52~53と言われています。囲碁でも将棋でも先手のほうが有利であることから、「先手を打つ」は「先に攻撃をしかけて優位に立つ」という意味で使われるようになりました。

「先手を打つ」を使った例文

つぎは「先手を打つ」を使った例文を見ていきましょう。

1.山田さんは仕事ができるビジネスマンだ。クレーム対応ではいつも先手を打って交渉するので、他のどの担当者より短期間に円満に解決している。
2.同期の沖縄旅行に隣の部署の佐藤さんを誘って、旅行中に親しくなりたいと画策していたが、先輩の田中さんがストレートに告白したと知り、「先手を打たれた」と焦った。

\次のページで「「先手を打つ」の類義語」を解説!/

最初の例文は、仕事の場面での「先手を打つ」についてです。ビジネス本などでもよく先手を打つほうが有利と書かれています。特にクレーム対応はできれば避けて通りたい仕事ですが、先に動いたほうが有利で、後手にまわるとロクなことはありません。

2番目の例文は、女子に声をかける機会をうかがっていたら、他の男子が先に声をかけてしまったということです。恋愛の場合、先手が有利なのかは何とも言えませんが、告白されたら女子の心が動いてしまうかも。後手にまわってしまった男子は気が気でないでしょう。

「先手を打つ」の類義語

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「先手を打つ」の類義語にはどのような言葉があるのでしょうか。

「機先を制する」:相手より先に行動して相手をくじく

「機先を制する」は「きせんをせいする」と読みます。「機先」とは、「物事が起ころうとする直前」「物事を行おうとする直前」のこと。また「制する」には「自分のものにする」「支配する」という意味があります。「機先を制する」「相手より先に行動し、相手の計画や気勢をくじく」という意味です。「機先を征する」は誤り。「制する」が正しいので間違えないように注意しましょう。

「先を越す」:機先を制する

「先を越す」を辞書で調べると、二つの読み方が載っています。

・相手に先んじて事を行う。機先を制する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「先(さき)を越す」


・相手よりさきに物事を行う。さきんじる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「先(せん)を越す」

従来は「先」を「せん」と読んでいましたが、最近の辞書には「さき」も載っていますね。いずれも「相手より先に事を行う」「機先を制する」の意味がありますよ。

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「先制攻撃(せんせいこうげき)」:先に攻める

「先制」は「先に攻める」という意味。「先制攻撃」「敵がまだ戦いの準備をしているときに、先に攻撃をはじめる」ことです。

「先手を打つ」の反対語

「先手を打つ」の反対語にはどのような言葉があるのでしょうか。

「後手に回る」:受身の立場になる

囲碁でも将棋でも後から打つ人のことを「後手」といいます。囲碁も将棋も後手のほうが少し不利ですね。「後手に回る」「他者に先を越されたり、先に攻められたりして、受身の立場になる」ことです。「後手に回る」ことをさらに強調する場合は、二つ重ねて「対応が後手後手に回っている」と表現します。

「後(おく)れを取る」:他人に先を越される

「後れを取る」「他人に先を越される」「戦いや競争に負ける」という意味です。「おくれる」という意味だけでなく、「取り残される」という意味も含まれています。「日本はITの分野で後れを取っている」という使い方をしますよ。

「先手を打つ」の英訳

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英語では「先手を打つ」はどのように表現するのでしょうか。

「take the initiative in」:~について先手を打つ

「take the initiative in」は「~について先手を打つ」という意味です。

\次のページで「「beat someone to the punch」:~の先手を打つ」を解説!/

He should take the initiative in this matter.
彼はこの問題について先手を打つべきだ。

「initiative」は「手始め」「率先」「第一歩」などの意味があります。「take the initiative in」「先手を打つ」という意味です。日本語でも率先してはじめるというときに「イニシアティブを取る」という使い方をしていますね。

「beat someone to the punch」:~の先手を打つ

「beat someone to the punch」の意味は「~の先手を打つ」です。

She beat me to the punch.
彼女に先手を打たれてしまった。

「beat」は「打つ」「たたく」「(敵を)負かす」などの意味があります。「punch」は「殴ること」「殴打」という意味ですね。「beat someone to the punch」は「先制パンチで打ち負かす」という意味あいなので「先手を打つ」という意味になります。

「先手を打つ」ことができるようになろう!

この記事では、「先手を打つ」の意味と語源を調べ、例文や類義語などを解説しました。

 「先手を打つ」のもとの意味は、「囲碁や将棋で相手より先に着手する」ことです。そこから転じて「先に攻撃をしかけて優位に立つ」という意味で使われるようになりました。囲碁も将棋も先手のほうが有利です。例外はあるかもしれませんが、ゲームだけでなく、ビジネスシーンでも一般的に先手を打つほうが有利だと言われています。

「先手を打つ」という言葉を理解するだけでなく、ぜひ実際に「先手を打つ」ことができる人になりたいものですね。

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国語言葉の意味

「先手を打つ」は囲碁将棋が語源?意味・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

「先制攻撃(せんせいこうげき)」:先に攻める

「先制」は「先に攻める」という意味。「先制攻撃」「敵がまだ戦いの準備をしているときに、先に攻撃をはじめる」ことです。

「先手を打つ」の反対語

「先手を打つ」の反対語にはどのような言葉があるのでしょうか。

「後手に回る」:受身の立場になる

囲碁でも将棋でも後から打つ人のことを「後手」といいます。囲碁も将棋も後手のほうが少し不利ですね。「後手に回る」「他者に先を越されたり、先に攻められたりして、受身の立場になる」ことです。「後手に回る」ことをさらに強調する場合は、二つ重ねて「対応が後手後手に回っている」と表現します。

「後(おく)れを取る」:他人に先を越される

「後れを取る」「他人に先を越される」「戦いや競争に負ける」という意味です。「おくれる」という意味だけでなく、「取り残される」という意味も含まれています。「日本はITの分野で後れを取っている」という使い方をしますよ。

「先手を打つ」の英訳

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英語では「先手を打つ」はどのように表現するのでしょうか。

「take the initiative in」:~について先手を打つ

「take the initiative in」は「~について先手を打つ」という意味です。

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