今回は「ブレンステッドの定義」について説明していく。酸・塩基の定義の一つで、高校化学の授業でもかならず出てくる内容です。酸・塩基の定義といえば、アレニウスの定義を学ぶ人も多いと思う。その違いについても触れるので、ぜひ覚えていってほしい。化学に詳しいライターsalviaと一緒に解説していきます。

ライター/Salvia

理系大学院を修了後、食品の研究業務に携わり化学や物理を得意としている。受験だけでなく大学、社会で役立つ情報を伝える。

1 ブレンステッドの定義とは?

image by iStockphoto

ブレンステッドの定義(もしくはブレンステッド・ローリーの定義)は、酸・塩基の定義の一つ。この酸塩基説は非常にシンプルで、プロトン(H+)を与える物質を酸、プロトンを受け取ることができる物質を塩基としています。

物質の酸性や塩基性の性質を説明・分類するにあたって、いくつかの理論が存在するようです。まず最も知られているアレニウスの定義について解説します。その次に今回の本題であるブレンステッドの定義について説明しますのでぜひ覚えていきましょう。酸塩基の考えを理解することは化学反応を理解するうえで重要ですよ。

1-1 酸性・塩基性という性質について

塩酸(HCl)や硫酸(H2SO4)などの水溶液は酸味を持ち、鉄など金属と反応して水素を発生させるといった性質を持ちますが、この性質を酸性といいます。また、水酸化ナトリウム(NaOH)などの水溶液は手につくとぬるぬるして、酸と反応して酸の性質を消すといった性質を持ち、この性質を塩基性といいますね。これらはリトマス紙やpHメーターなどを使って酸性か塩基性か測定することも可能です。

このような酸・塩基性の物質を分類するために提唱された理論がいくつかあるので、見ていきましょう。

1-2 アレニウスの定義と欠点

1-2 アレニウスの定義と欠点

image by Study-Z編集部

アレニウスの定義は酸・塩基の定義の一つで、酸とは水中ので水素イオン(H+)を与えるように電離する(部分的もしくは完全に解離する)物質、また、塩基は水中で電離して、水酸化物イオン(OH-)を与える物質としており図のような式のイメージになります。この定義は水溶液中を定義しているため、水以外を溶媒とする溶液の場合については区別ができないことや、水に溶けない物質については説明できないことが欠点です。皆さんが良くご存じのアンモニアは塩基性ですが水酸化物イオンを持っていませんので、この定義では説明できないことが分かります。

1-3 ブレンステッドの定義について

アレニウスの定義で説明できないアンモニアについてもうすこし触れますね。気体の塩化水素(HCl)とアンモニア(NH3)を反応させると塩化アンモニウム(NH4Cl)になります。この反応も酸塩基反応になりますが水溶液での反応ではないため酸塩基の区別ができません。

この反応では、HClは水素イオン(H+)を放出して塩化物イオン(Cl-)に、NH3はH+を受けとってアンモニウムイオン(NH4+)になっていることがわかります。つまり、HClはH+を与える酸として、NH3はH+を受け取る塩基として働いていることが予測できるのです。

この具体例からわかるように「酸とはプロトンを相手に与えることのできる物質、塩基とはプロトンを相手から受け取ることができる物質である」と定義できますね。これを提唱者の名前をとってブレンステッド・ローリーの定義といいます。

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1-4 酸塩基分類の具体例

1-4 酸塩基分類の具体例

image by Study-Z編集部

ここでは酸塩基の分類の仕方について実例を見ていきましょう。

まず、HClとH2Oの反応についてです。HClはプロトンを放出してH2Oが受け取り、HClがCl-に、H2Oはオキソニウムイオン(H3O+)になります。よって、HClが酸、H2Oが塩基となりますね。続いて、NH3とH2Oの反応についてです。H2Oがプロトンを放出してNH3が受け取り、NH3がNH4+に、H2OはOH-になります。よって、NH3が塩基、H2Oが酸となりますね。

上記の例でわかるように水は相手によってどちらにも分類される両性の物質として働くことがわかります。つまり、ブレンステッドの定義は酸・塩基の性質は、反応する相手に依存して働きが異なることを示しているのです。

2 ブレンステッドの定義と共役な酸・塩基について

2 ブレンステッドの定義と共役な酸・塩基について

image by Study-Z編集部

上記でもお伝えしましたが、ブレンステッドの定義は酸・塩基の分類をH+のやり取りに基づいており、図のような式が成り立ちます。

HAがプロトンを出してできたA-は逆から見た場合、プロトンを受け取る物質と見ることができますね。よって、A-は塩基と捉えることができ、このHAとA-は互いに共役な酸・塩基と呼びます。また、この式のように酸・塩基反応は平衡反応(一方的な反応ではなく、右向き・左向きどちらにも進む反応)です。酸・塩基それぞれの強さによって、進む方向(反応)が決まります。酸・塩基の強さについては今回触れませんが、それぞれの物質で強さが決まっていますので反応を予測することが可能です。気になる人は自身で調べてみたり、学校に行っている人は先生に聞いてみてください。

3 豆知識「リトマス紙」について

最後に、酸・塩基の話題で良く出てくるリトマス紙について述べたいと思います。学校の理科実験でたびたび出てくるので、皆さんご存知でしょう。酸性だと赤色に、塩基性(アルカリ性)だと青色になるあれですね。このリトマスの原料は何か皆さんご存知でしょうか。もともとリトマスはコケに似た地衣類のリトマスゴケから抽出した色素を石灰、炭酸カリウムなどを用いて発酵しできた色素だそうです。リトマスゴケは地中海沿岸や西アフリカ、南アメリカ等と広く分布しています。日本では分布しておらず、ウメノキゴケというもので代用していたようですね。

このリトマスが酸性と塩基性で色が変わる理由ですが、色素の構造が酸性と塩基性の時に変わるためです。また、この反応は1300年頃には発見されていたという話なので、昔の人は本当にすごいですね。

今は合成品が主に使用されていますが、リトマスがもともと地衣類から抽出した色素だったことを知っている人は少ないのではないでしょうか。ちょっとした豆知識ですが覚えておいて損はないと思います。

ブレンステッドの定義とは酸・塩基反応を説明するシンプルな定義

「ブレンステッドの定義」とは酸・塩基反応をH+のやり取りだけで説明できる、シンプルな定義です。H+を与えるものが酸、H+を受け取るものが塩基と非常にわかりやすいですね。

酸・塩基反応については小学生から高校生まで広く勉強する分野の一つだと思います。理科実験でもおなじみで、特にアンモニアの臭さは誰しもが悶える共通の経験ではないでしょうか。

日常で使うことはあまりない知識ですが、受験では必ずと言っていいほどでてきます。大学受験を目指す方や身近な化学反応を理解したい方、お子さんに教えたいという方もぜひ覚えてみてくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「ブレンステッドの定義」酸・塩基の基本を理系大学院出身が分かりやすくわかりやすく解説

今回は「ブレンステッドの定義」について説明していく。酸・塩基の定義の一つで、高校化学の授業でもかならず出てくる内容です。酸・塩基の定義といえば、アレニウスの定義を学ぶ人も多いと思う。その違いについても触れるので、ぜひ覚えていってほしい。化学に詳しいライターsalviaと一緒に解説していきます。

ライター/Salvia

理系大学院を修了後、食品の研究業務に携わり化学や物理を得意としている。受験だけでなく大学、社会で役立つ情報を伝える。

1 ブレンステッドの定義とは?

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ブレンステッドの定義(もしくはブレンステッド・ローリーの定義)は、酸・塩基の定義の一つ。この酸塩基説は非常にシンプルで、プロトン(H+)を与える物質を酸、プロトンを受け取ることができる物質を塩基としています。

物質の酸性や塩基性の性質を説明・分類するにあたって、いくつかの理論が存在するようです。まず最も知られているアレニウスの定義について解説します。その次に今回の本題であるブレンステッドの定義について説明しますのでぜひ覚えていきましょう。酸塩基の考えを理解することは化学反応を理解するうえで重要ですよ。

1-1 酸性・塩基性という性質について

塩酸(HCl)や硫酸(H2SO4)などの水溶液は酸味を持ち、鉄など金属と反応して水素を発生させるといった性質を持ちますが、この性質を酸性といいます。また、水酸化ナトリウム(NaOH)などの水溶液は手につくとぬるぬるして、酸と反応して酸の性質を消すといった性質を持ち、この性質を塩基性といいますね。これらはリトマス紙やpHメーターなどを使って酸性か塩基性か測定することも可能です。

このような酸・塩基性の物質を分類するために提唱された理論がいくつかあるので、見ていきましょう。

1-2 アレニウスの定義と欠点

1-2 アレニウスの定義と欠点

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アレニウスの定義は酸・塩基の定義の一つで、酸とは水中ので水素イオン(H+)を与えるように電離する(部分的もしくは完全に解離する)物質、また、塩基は水中で電離して、水酸化物イオン(OH)を与える物質としており図のような式のイメージになります。この定義は水溶液中を定義しているため、水以外を溶媒とする溶液の場合については区別ができないことや、水に溶けない物質については説明できないことが欠点です。皆さんが良くご存じのアンモニアは塩基性ですが水酸化物イオンを持っていませんので、この定義では説明できないことが分かります。

1-3 ブレンステッドの定義について

アレニウスの定義で説明できないアンモニアについてもうすこし触れますね。気体の塩化水素(HCl)とアンモニア(NH3)を反応させると塩化アンモニウム(NH4Cl)になります。この反応も酸塩基反応になりますが水溶液での反応ではないため酸塩基の区別ができません。

この反応では、HClは水素イオン(H+)を放出して塩化物イオン(Cl)に、NH3はH+を受けとってアンモニウムイオン(NH4+)になっていることがわかります。つまり、HClはH+を与える酸として、NH3はH+を受け取る塩基として働いていることが予測できるのです。

この具体例からわかるように「酸とはプロトンを相手に与えることのできる物質、塩基とはプロトンを相手から受け取ることができる物質である」と定義できますね。これを提唱者の名前をとってブレンステッド・ローリーの定義といいます。

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