この記事では「畳の上の水練」について解説する。

端的に言えば畳の上の水練の意味は「理論や方法だけはいくら立派でも、実地の練習を経ていないので、実際の役には立たないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

本の虫ライタージュリアン・ソレルを呼んです。一緒に「畳の上の水練」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ジュリアン・ソレル

本の虫ライター。多い時だと月間30冊読破する。漢字や熟語、ことわざ、故事が好き。正確でロジカルな文章を用いる。記憶の定着には丸暗記よりも深い理解が大切であるとの観点から、語源や類義語まで幅広く派生し、関連語の習得も狙った解説を心がける。

今回は、慣用句「畳の上の水練」をベースに、類語の「机上の空論」や「鞍掛け馬の稽古」などを意味や語源から例文、また英訳までみっちり解説。

「畳の上の水練」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「畳の上の水練」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「畳の上の水練」の意味は?

「畳の上の水練」には、次のような意味があります。

1.理論や方法だけはいくら立派でも、実地の練習を経ていないので、実際の役には立たないこと

出典:精選版 日本国語大辞典「畳の上の水練」

「畳の上の水練」は「たたみのうえのすいれん」と読み、「畳水練」や「畑水練」、「畠水練」、「炬燵水練(こたつすいれん)」ともいわれます。

「畳の上の水練」の語源は?

次に「畳の上の水練」の語源を確認しておきましょう。

「畳の上の水練」は文字通り、「畳の上で行う水泳の練習」から転じて、「理論や方法だけはいくら立派でも、実地の練習を経ていないので、実際の役には立たないこと」になりました。同義語の「畑水練」、「炬燵水練(こたつすいれん)」も同じ由来で、それぞれ「畑で行う水泳の練習」、「炬燵にあたりながら水泳を習う」です。

また「炬燵水練」には「炬燵兵法(こたつひょうほう/びょうほう)」という似た言葉もあり、これは「こたつにあたりながら兵法を習ったり論じたりすること」から転じて同じく「実際には役に立たない」という意味になります。そしてこれに似た言葉として「畳の上の陣立て」というものも。

\次のページで「「畳の上の水練」の使い方・例文」を解説!/

「畳の上の水練」の使い方・例文

「畳の上の水練」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.討論を多く行っても、「畳の上の水練」で、実現性がないのは時間の無駄になる。
2.英語は発音記号を覚えただけでは意味がなく、実際に会話しなければ「畳の上の水練」だ。
3.「畳の上の水練」をやめ、なんとかして全員を現場での実習につかせるべきだ。

例文にも見られるように、「実際の役には立たないこと」というネガティブな意味があり、実地以外での練習の末に成功した、という文脈で使われることはありません。

また「畳の上の水泳」という誤字にも注意が必要です。

「畳の上の水練」の類義語は?違いは?

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それでは「畳の上の水練」の類義語を見ていきましょう。

「机上の空論」

頭の中だけで考え出した、実際には役に立たない理論や考え」を意味する「机上の空論」。机の上で考えただけの理論では現実にはうまくいかない、という意味です。

また「見かけはりっぱであるが、基礎がしっかりしていないために長く維持できない物事」、「実現不可能なこと」を意味する「砂上の楼閣」とは語感や意味ともに似ているため、混同に注意が必要。

それでは「机上の空論」の例文を見てみましょう。

\次のページで「「絵に描いた餅」」を解説!/

1.「机上の空論」を言うのは簡単だ、今はもっと現実的な意見が必要だ。
2.「机上の空論」で終わらせないためにも、現地での入念な調査が必要だ。
3.チームが一月を費やした企画も、予算のない会社では「机上の空論」であった。

「絵に描いた餅」

役に立たないもの」、「実現する見込みのない無駄なこと」を意味する「絵に描いた餅」。「画餅(がべい)」ともいわれます。こちらは文字通り、絵に描いたもちは食べられない、ということに由来。「絵に描いたような餅」との言い間違いに注意が必要です。またこの言葉には、「pie in the sky」つまり「空に浮いたパイ」という面白い英語表現があります。

それでは例文を見ていきましょう。

1.入念に時間をかけて、「絵に描いた餅」で終わらぬよう配慮する。
2.苦労して作った報告書が、部長の一言で「絵に描いた餅」になってしまう。
3.週休三日制など結局は「絵に描いた餅」なのかもしれない。

「鞍掛け馬の稽古」

「鞍掛け馬の稽古(くらかけうまのけいこ)」は「なんの役にも立たない無駄な練習」を意味します。「鞍掛け馬」とは「木馬(もくば)」を意味し、「木馬に乗って稽古をしても、実際の馬に乗るには役に立たない」というのが言葉の由来です。

それでは例文を見ていきましょう。

 

1.実物がないところでいくら頑張っても「鞍掛け馬の稽古」に過ぎない。
2.「鞍掛け馬の稽古」だと思いながらも、教官には口答えできない。
3.実地へ出てから、今までの努力は「鞍掛け馬の稽古」だったと彼らは気づいた。

「素引きの精兵」

「素引きの精兵(すびきのせいびょう)」とは「理論には強いが、実戦には役に立たない者」を意味します。「素引き」とは、野球の素振りのように、「弓に矢をつがえず、弦だけを引くこと」を意味し、「精兵(せいびょう/せいへい)」とは、「よりぬきの強い兵士」、「弓を引く力の強い者」を意味。つまり「実際に矢を射る強力はないが、素引きでは力を発揮する」ということです。

それでは例文をご紹介していきます。

\次のページで「「畳の上の水練」の英訳は?」を解説!/

1.家にこもって長年理論を学んだ彼は、その場に立って自分がただの「素引きの精兵」だと悟った。
2.新しい監督の指導や素振りは一見しっかりしているが、皆は「素引きの精兵」だと感づいていた。
3.実践も交えつつでなければ、単なる「素引きの精兵」で終わってしまう。

「畳の上の水練」の英訳は?

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それでは「畳の上の水練」の英訳を見ていきましょう。

「Experience without learning is better than learning without experience.」

「Experience without learning is better than learning without experience.」の直訳は「学習なしの経験は、経験なしの学習にまさる」つまり「学問より経験がまさる」、「経験にまさるものはなし」といった意味になります。

「畳の上の水練」や「机上の空論」を戒めることわざです。

「畳の上の水練」を使いこなそう

この記事では「畳の上の水練」の意味・使い方・類語などを説明しました。言葉の意味だけではなく語源や関連する言葉まで紐づけてみていくとより理解が深まり語彙力が上がり、記憶にも残りやすくなるでしょう。

今回は特に多くの類義語や似た語源を持つ言葉が見つかりました。まとめて記憶に入れてしまいましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「畳の上の水練」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「畳の上の水練」について解説する。

端的に言えば畳の上の水練の意味は「理論や方法だけはいくら立派でも、実地の練習を経ていないので、実際の役には立たないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

本の虫ライタージュリアン・ソレルを呼んです。一緒に「畳の上の水練」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ジュリアン・ソレル

本の虫ライター。多い時だと月間30冊読破する。漢字や熟語、ことわざ、故事が好き。正確でロジカルな文章を用いる。記憶の定着には丸暗記よりも深い理解が大切であるとの観点から、語源や類義語まで幅広く派生し、関連語の習得も狙った解説を心がける。

今回は、慣用句「畳の上の水練」をベースに、類語の「机上の空論」や「鞍掛け馬の稽古」などを意味や語源から例文、また英訳までみっちり解説。

「畳の上の水練」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「畳の上の水練」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「畳の上の水練」の意味は?

「畳の上の水練」には、次のような意味があります。

1.理論や方法だけはいくら立派でも、実地の練習を経ていないので、実際の役には立たないこと

出典:精選版 日本国語大辞典「畳の上の水練」

「畳の上の水練」は「たたみのうえのすいれん」と読み、「畳水練」や「畑水練」、「畠水練」、「炬燵水練(こたつすいれん)」ともいわれます。

「畳の上の水練」の語源は?

次に「畳の上の水練」の語源を確認しておきましょう。

「畳の上の水練」は文字通り、「畳の上で行う水泳の練習」から転じて、「理論や方法だけはいくら立派でも、実地の練習を経ていないので、実際の役には立たないこと」になりました。同義語の「畑水練」、「炬燵水練(こたつすいれん)」も同じ由来で、それぞれ「畑で行う水泳の練習」、「炬燵にあたりながら水泳を習う」です。

また「炬燵水練」には「炬燵兵法(こたつひょうほう/びょうほう)」という似た言葉もあり、これは「こたつにあたりながら兵法を習ったり論じたりすること」から転じて同じく「実際には役に立たない」という意味になります。そしてこれに似た言葉として「畳の上の陣立て」というものも。

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