この記事では「食ってかかる」について解説する。

端的に言えば食ってかかるの意味は「激しい態度で向かっていくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「食ってかかる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「食ってかかる」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 46908740

それでは早速「食ってかかる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「食ってかかる」の意味は?

「食ってかかる」には、次のような意味があります。

食いつくように、激しい言葉と態度で向かっていく。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「食って掛かる」

「食ってかかる」と聞くと思い浮かぶのは穏やかな場面などではなく、言い争うように激しく言葉を向けるシーンではないでしょうか。

そのイメージ通り、この言葉の意味は「激しい言葉と態度で向かっていくこと」です。テレビやドラマを始め、日常生活の中でも意見をぶつけ合う場面などで「食ってかかる」様子が見られることもありますね。「食う」という言葉も「食べる」より粗雑なイメージがあるため、言葉自体からもなんだか乱暴そうな印象が感じられます。とはいえ、「食って」と言いつつ食べる行為に関連した言葉ではまったくありません。その点にも注意しながら、「食ってかかる」について一緒に詳しく見ていきましょう。

「食ってかかる」の語源は?

ではまず「食ってかかる」の語源を確認しておきましょう。

何故食べることに関係ない意味を持つのに「食って」という単語が使われるのか……と思ってしまいますが、これには比喩が使われているからなのです。たとえば魚が釣り竿の餌に食いつく様子や、肉食獣が獲物に食いかかる様子を想像してみてください。彼らは自分の狙った食べ物に対し、勢いよくがっと食らいつきますよね。この様子が「食ってかかる」という様子そのものを表しています。つまり「食ってかかる」は、「食いつくように」攻めかかるという状態が語源となった慣用句というわけです。

勢いが良いことを「食う」という言葉で表すという点からも、力強くパワフルな印象が感じ取れますね。

\次のページで「「食ってかかる」の使い方・例文」を解説!/

「食ってかかる」の使い方・例文

それでは「食ってかかる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼女は負けず嫌いな性格かつ高いプライドの持ち主なので、少しでも攻撃されるとすぐ相手に食ってかかる。
2.戦いでは彼に勝利したが、彼は最後威圧するように暴言を吐き食ってかかってきた。

まず1の例文は、彼女が「相手」に激しい言葉と態度で向かっていくという文章です。実際に使用するときは、この「相手」の部分を「先生」「上司」など様々に入れ替える形で文を作ることが出来ますね。ちなみに明確な決まりがあるわけではありませんが、「食ってかかる」という慣用句を用いるときその「相手」は動作主よりも上の立場であることが多いのが特徴の一つです。目上の者に対しても関係なく激しい態度で食らいつく、そういった冷静さを感じさせない印象が強調されますね。

2の例文も基本的には1と同じことですが、こちらは「食ってかかってきた」と受け身の形になっています。このように相手の態度を指して受け身で文章表現することも可能な慣用句であるため、様々な場面で使用することが出来るでしょう。

「食ってかかる」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 46032145

それでは「食ってかかる」の類義語を見ていきましょう。意味は「激しい態度と言葉で向かっていくこと」でしたね。

「噛みつく」

これはそのまま「歯で食らいつく」という意味もありますが、「食ってかかる」の類義語としては「激しい態度で相手に迫っていく」という意味が適切と言えるでしょう。たとえば「彼は先生にすぐ噛みつく」という風に言うと、先生にすぐ反抗したり意義を唱えたりする様子が表されます。類義語としてぴったり当てはまる言葉ですが、面白いのは「噛みつく」という動作の言葉自体も「食ってかかる」と似ているところですね。どちらもまさに前述した、肉食獣のイメージです。相手に激しく向かっていく様はそういったものに例えられやすいのかもしれませんね。

二つの違いで言うと、「噛みつく」よりも「食ってかかる」の方がよりその態度を崩さずどんどん攻め続けるような印象があります。状況に応じて、適切に使い分けていきましょう。

\次のページで「「啖呵を切る」」を解説!/

「啖呵を切る」

こちらは「鋭い口調で相手にまくしたてる」ことを指す慣用句です。不良が相手に鋭い言葉で喧嘩を売る場面から店先の店主が歯切れよく宣伝文句をまくしたてる場面まで、広く使われる言葉ですね。

「食ってかかる」はどちらかというとその激しさから不服を訴えるような場面で使われがちなイメージがありますが、「啖呵を切る」の場合は文句を言ったり不平不満を述べたりといったような意味を持たないため、そこが異なる点と言えるでしょう。

「食ってかかる」の対義語は?

類義語を確認したところで、次は「食ってかかる」の対義語を見ていきましょう。

「恭順」

これは「つつしんで命令に従う態度を示すこと」という意味の言葉です。その他「服従」「従順」などを類義語に持ち、落ち着いていておとなしい印象がある言葉ですね。「うやうやしい」と書く「恭」という漢字にも「丁寧で慎み深い」という意味があり、立場関係なく激しい態度と言葉を向ける「食ってかかる」とは、印象も意味もまさに真逆の言葉であると言えるでしょう。

「食ってかかる」の英訳は?

image by PIXTA / 53908949

それでは最後に「食ってかかる」の英訳を見ていきましょう。

「lash out at」

「lash」「鞭」を意味する名詞で、「lash out at」「食ってかかる」「悪口を言う」などの意味をあらわすことが出来ます。激しい態度を示すという点で「食ってかかる」の英訳として用いることが出来るでしょう。ただし「食ってかかる」よりも少し乱暴なイメージが強い言い回しであるため、状況に応じて他の英語表現に変えてみることも必要ですね。

\次のページで「「食ってかかる」を使いこなそう」を解説!/

「食ってかかる」を使いこなそう

この記事では「食ってかかる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「激しい態度と口調で向かっていく」という意味を持ち、肉食獣のようなイメージがあるパワフルな言葉であると確認しましたね。「食う」という単語の粗雑な印象も大切なので、キーワードとして押さえておきましょう。

実際の生活でも自分と他人の意見が一致しないような様々な場面に出くわすことがありますが、「食ってかかる」か「恭順」な姿勢を示すか、自分の心と相談しながら行動を選択していくことが大切ですね。

" /> 【慣用句】「食ってかかる」の意味や使い方は?例文や類語を日本語オタクライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「食ってかかる」の意味や使い方は?例文や類語を日本語オタクライターがわかりやすく解説!

この記事では「食ってかかる」について解説する。

端的に言えば食ってかかるの意味は「激しい態度で向かっていくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「食ってかかる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「食ってかかる」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 46908740

それでは早速「食ってかかる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「食ってかかる」の意味は?

「食ってかかる」には、次のような意味があります。

食いつくように、激しい言葉と態度で向かっていく。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「食って掛かる」

「食ってかかる」と聞くと思い浮かぶのは穏やかな場面などではなく、言い争うように激しく言葉を向けるシーンではないでしょうか。

そのイメージ通り、この言葉の意味は「激しい言葉と態度で向かっていくこと」です。テレビやドラマを始め、日常生活の中でも意見をぶつけ合う場面などで「食ってかかる」様子が見られることもありますね。「食う」という言葉も「食べる」より粗雑なイメージがあるため、言葉自体からもなんだか乱暴そうな印象が感じられます。とはいえ、「食って」と言いつつ食べる行為に関連した言葉ではまったくありません。その点にも注意しながら、「食ってかかる」について一緒に詳しく見ていきましょう。

「食ってかかる」の語源は?

ではまず「食ってかかる」の語源を確認しておきましょう。

何故食べることに関係ない意味を持つのに「食って」という単語が使われるのか……と思ってしまいますが、これには比喩が使われているからなのです。たとえば魚が釣り竿の餌に食いつく様子や、肉食獣が獲物に食いかかる様子を想像してみてください。彼らは自分の狙った食べ物に対し、勢いよくがっと食らいつきますよね。この様子が「食ってかかる」という様子そのものを表しています。つまり「食ってかかる」は、「食いつくように」攻めかかるという状態が語源となった慣用句というわけです。

勢いが良いことを「食う」という言葉で表すという点からも、力強くパワフルな印象が感じ取れますね。

\次のページで「「食ってかかる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: