
端的に言えば親方日の丸の意味は「官公庁の放漫な経営」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「親方日の丸」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル
某国立大で現代日本語学を専攻。つまり大学時代は日本国にお世話になったはずだが、その後お返しできたかには疑問が残る。選挙には毎回行っているので許してほしい。
「親方日の丸」の意味は?
「親方日の丸」には、次のような意味があります。
《親方は日の丸、すなわち国の意》官庁や公営企業は、経営に破綻(はたん)をきたしても、倒産する心配がないので、厳しさに欠け、経営が安易になりやすい点を皮肉っていう語。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「親方日の丸」
民間企業が経営危機に陥った場合、倒産や企業買収のおそれがあります。しかし、官公庁や公営企業では税金の投入などで救済される望みがあるため、公務員や職員からは緊張感が薄れて経営が安易になりがちです。そういった状態を皮肉って「親方日の丸」(おやかたひのまる)という慣用句が生まれました。つまり、あまりいい言葉ではありません。
「親方日の丸」の語源は?
次に「親方日の丸」の語源を確認しておきましょう。
「親方」とは「経営者、胴元」、「日の丸」は「日本国、日本政府」を表します。つまり「経営者が(日本の)国家」ということですよね。
もともとは官公庁や公営会社そのもの、またはそれらに勤務する公務員や職員を指していました。ですが、時代とともに「親方日の丸」を表す言葉の意味や範囲が変わってきています。高度経済成長期までは「国のお墨付き」ともいえる強力なイメージがありました。しかし、バブル崩壊後に日本経済が冷え込むと負のイメージに変わり、「官公庁の放漫経営、公務員の傲慢さ」などといった使われ方になっています。すべての公務員が傲慢で怠惰だとは思いません。ですが、バブル崩壊以降に倒産が相次いだ民間企業側からすれば、体制が維持される「親方日の丸」はどうしてもやっかみの対象になってしまいます。
ちなみに大相撲の世界でも「親方」がいますが、実はあくまでも敬称とのことです。相撲用語では、引退した元力士で、相撲協会に残って役員になったり部屋を開いて後進の力士を育てたりする人を「年寄」(としより)と言います。ただ、年寄といっても年配者という意味ではなく、単なる役職名なので気を付けましょう。ややこしいので、普段は「年寄」と呼ばずに「親方」と呼んでいるのです。
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