この記事では「輪をかける」について解説する。

端的に言えば「輪をかける」の意味は「程度が増すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「輪をかける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「輪をかける」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「輪をかける」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「輪をかける」の意味は?

「輪をかける」には、次のような意味があります。

程度をさらにはなはだしくする。「母親に―・けた見えっ張り」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「輪を掛ける」

この言葉は「何かの程度が、一層強く大きい」という意味の慣用表現です。

引用の「はなはだしく」は漢字で「甚だしく」。「甚大(じんだい)」という言葉もあるように、これも程度が非常に大きいことを表しています。

この慣用表現のポイントは、ただ大きいだけではなく、何か比較対象を持ち出しての表現になること。「その人・物事よりも更に」と、何かと比べて状態や程度がより強くなったというニュアンスを持っています。

何が引き合いに出されているのかによって、その文脈の意味も変化するでしょう。表現の意図まで注目するようにしてくださいね。

「輪をかける」の語源は?

次に「輪をかける」の語源を確認しておきましょう。この言葉の由来については複数あり、有力なものを以下にご紹介します。

一つ目は、弓道を由来とする説。弓は、弦で作った「輪を(弓に)かけて」弦を張ります。これがしっかり行えると、弦がピンと張り、弓は強く遠くまで飛ばせるのです。ここから、輪をかける=勢いが強くなるという意味で使われるようになったという考え。

二つ目は、桶や樽の周囲にはめられている輪を由来とする説。正式には箍(たが)と呼び、桶などよりも一回り大きいことから、この「輪をかける」ことが、程度も表すことになったという考え。

どちらもなるほどと思ってしまいますが、ポイントはやはり「輪をかける」と、比較対象よりも勢いが強く大きくなること。「輪」が何かを囲んで強くするイメージから、由来も混同されるようになったのかもしれません。

\次のページで「「輪をかける」の使い方・例文」を解説!/

「輪をかける」の使い方・例文

「輪をかける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・彼は困っている人をみかけたら放っておけない性格で、世話好きだった彼の父親に輪をかけてお人よしだ。

・本当は、彼女は誰よりも輪をかけて人見知りだったのだが、頑張って克服して今や保育士として男の子にも女の子にも大人気だ。

・最近、大人気ゲームで進行不能になるバグがあって大騒ぎになったのだが、メンテナンス中に運営がSNSで余計なことを言って炎上し、状況は輪をかけてまずいことになった。

何かと比べて、程度がより強い」というイメージが伝わりますでしょうか。比較対象としてわかりやすいのは誰か別の人ですが、過去の自分であったり状況であったりと、様々なものに対して使うことができます。

例文三番目のように、悪いことが更に悪くという場合にも用いることができるため、この言葉だけでは良し悪しの判断はできません。文脈から読み取りましょう。

単純にひどいというのではなく、何かと比べてひどいとわざわざ言うくらいですから、話者の強い感情がこもっている文章になることも多いはず。正しく事実を述べるのではなく、時には拡大解釈気味にもなるかもしれませんね。

文章問題では読解のポイントになる表現のため、注意深く読み取りましょう。

「輪をかける」の類義語は?違いは?

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「輪をかける」の類義語は「拍車(はくしゃ)をかける」がいいでしょう。

「拍車をかける」

「拍車をかける」は「物事により強く力を加える」ことを意味する慣用表現です。「拍車」は、馬に乗る時に靴のかかとに取り付ける金具のこと。これで馬の腹部を刺激して速度をコントロールするため、このような意味になりました。

一層強くなるというニュアンスで「輪をかける」と同様ですが、「拍車をかける」には他のものとの比較はなく、単純に「さらに強まった」という意味合いになります。違いを押さえておきましょう。

\次のページで「「輪をかける」の対義語は?」を解説!/

もともとあまり流行っていないお店だったが、不定期にしか営業しないことが売上不振に拍車をかけた。

「輪をかける」の対義語は?

「輪をかける」の対義語は「下火になる」がいいでしょう。

「下火になる」

「下火になる」は「物事の勢いが弱くなること。ピークを過ぎること」を意味する慣用表現です。火が少しずつ弱くなっていくイメージから、意味も想像しやすいでしょう。

強かった火が弱くなるということで、「ピークを過ぎる」というニュアンスが含まれていることも押さえるようにしてください。

かつてはかなりのスキー・スノボブームだったのだが、不景気の影響などもあって、今や下火になってしまった。

「輪をかける」の英訳は?

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「輪をかける」の英語訳は「be even more so」で表すことができます。

「be even more so」

これは直訳すれば「それよりも更に」。これだけだと何が何だかわかりませんね。前にある文章を受けて使うため、形容詞や名詞が省略されています。例文で使い方をチェックしてみてください。

慣用句として「輪をかける」をそのまま表すものはないため、普通に言うなら比較級「more than ~」を使うことになるでしょう。例えば以下のような文章で表現することができます。

\次のページで「「輪をかける」を使いこなそう」を解説!/

She is even kinder than her grandmother.
彼女は、彼女のおばあさんに輪をかけて優しい。

優しい(kind)の比較級ですが、ここに「even」など強調の語句を付けることで「輪をかけて」というニュアンスを持たせることができます。こちらの使い方も覚えておきましょう。

His father was a playboy, but he is even more so.
彼の父は遊び人だったが、彼はそれに輪をかけてそうだ(遊び人だ)。

「輪をかける」を使いこなそう

この記事では「輪をかける」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「輪をかけて~」と言った場合、受けるのは良い印象でしょうか、悪い印象でしょうか。もともとは良い意味だったとしても、程度があまりに「甚だしい」と、やりすぎ強すぎとと嫌がられているニュアンスも出てくることもあるでしょう。

一見褒め言葉に見えて実は、なんてこともあるかもしれません。実は結構、真意まで読み取るのが難しい言葉なのかも、と思ってしまった言葉でした。

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国語言葉の意味

【慣用句】「輪をかける」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「輪をかける」について解説する。

端的に言えば「輪をかける」の意味は「程度が増すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「輪をかける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「輪をかける」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「輪をかける」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「輪をかける」の意味は?

「輪をかける」には、次のような意味があります。

程度をさらにはなはだしくする。「母親に―・けた見えっ張り」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「輪を掛ける」

この言葉は「何かの程度が、一層強く大きい」という意味の慣用表現です。

引用の「はなはだしく」は漢字で「甚だしく」。「甚大(じんだい)」という言葉もあるように、これも程度が非常に大きいことを表しています。

この慣用表現のポイントは、ただ大きいだけではなく、何か比較対象を持ち出しての表現になること。「その人・物事よりも更に」と、何かと比べて状態や程度がより強くなったというニュアンスを持っています。

何が引き合いに出されているのかによって、その文脈の意味も変化するでしょう。表現の意図まで注目するようにしてくださいね。

「輪をかける」の語源は?

次に「輪をかける」の語源を確認しておきましょう。この言葉の由来については複数あり、有力なものを以下にご紹介します。

一つ目は、弓道を由来とする説。弓は、弦で作った「輪を(弓に)かけて」弦を張ります。これがしっかり行えると、弦がピンと張り、弓は強く遠くまで飛ばせるのです。ここから、輪をかける=勢いが強くなるという意味で使われるようになったという考え。

二つ目は、桶や樽の周囲にはめられている輪を由来とする説。正式には箍(たが)と呼び、桶などよりも一回り大きいことから、この「輪をかける」ことが、程度も表すことになったという考え。

どちらもなるほどと思ってしまいますが、ポイントはやはり「輪をかける」と、比較対象よりも勢いが強く大きくなること。「輪」が何かを囲んで強くするイメージから、由来も混同されるようになったのかもしれません。

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