

端的に言えば「おいそれと」の意味は「すぐに、簡単に」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んだ。一緒に「おいそれと」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「おいそれと」の意味は?
「おいそれと」には、次のような意味があります。
[副]簡単に応じるさま。「おいそれと承諾できる話ではない」
出典:デジタル大辞泉(小学館)「おいそれと」
この言葉は「簡単に引き受ける、すぐ言いなりになること」を意味する慣用表現です。「おいそれ」に、副詞「と」が付いた言葉で、「おいそれのように」という意味で成り立っています。
辞書によっては「ただちに、よく考えずに」のみに限っており、「引き受ける、応じる」という意味は記載していないものもありました。なぜ「引き受ける」が含まれるのかは、次の語源の項で解説します。
また必ず押さえておきたいのは、下に否定の語を伴うことが多いという点。「おいそれと~しない、できない」という使われ方でよく使われることを覚えておきましょう。
「おいそれと」の語源は?
次に「おいそれと」の語源を確認しておきましょう。先に述べた「おいそれ」は「おい」「それ」から成り立っている言葉です。
「おい」は、人に呼び掛けるときの言葉。「それ」は、動作を行うときの掛け声で、指示語の「あれ・それ」ではありません。「おーい(何かをしてくれ、頼む)」と呼び掛け、聞いた人が「それっ(やるか、行くか)」と引き受ける。
この一連の動作を表しているのが、「おいそれ」だったのです。それが使われていくうちに「おいそれ」のように、という意味で「おいそれと」も慣用表現になったのでしょう。
由来からすると、江戸っ子気質というか気前が良い感じですが、現在は「できない、しない」と否定形で定着したのも興味深いところです。安請け合いをして痛い目を見る江戸っ子、というのはいかにもありそうで、そんな想像も面白いのではないでしょうか。