この記事では「鼻であしらう」について解説する。

端的に言えば鼻であしらうの意味は「冷淡に扱うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「鼻であしらう」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「鼻であしらう」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鼻であしらう」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鼻であしらう」の意味は?

「鼻であしらう」には、次のような意味があります。

相手の言葉にとりあおうとせず、冷淡に扱う。鼻先であしらう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鼻であしらう」

「あしらう」という言葉には「応対する」という意味がありますが、これが「鼻であしらう」になると「相手にとりあわず冷たく扱う」という意味の慣用句になります。

「鼻先であしらう」「鼻の先であしらう」という言い回しもあり、こちらも含め使ったことや耳にしたことのある人も多い言葉ではないでしょうか。実際に鼻であしらった・あしらわれた経験がある人もいるかもしれませんね。冷たくぞんざいな印象を受けるネガティブな言葉であるため、使い方に注意しながらここで詳しく学習していきましょう。

「鼻であしらう」の語源は?

ではまず「鼻であしらう」の語源を確認しておきましょう。

「あしらう」に「応対する」という意味があるのは先程述べましたが、その他にも関連して「軽んじて適当に応対する」「うまく配合する」という意味があります。「軽んじて適当に応対する」などはこれだけで「鼻であしらう」の意味とほぼ同じと言えそうですね。

「鼻であしらう」はこのような「あしらう」という言葉に「鼻」という体の部位が付属した慣用句ですが、人に応対するときに鼻を使うと言うと、どのような仕草が想像できるでしょうか。たとえば人の話に相槌を打つとき、声や言葉を返したり身振り手振りでリアクションを取るのではなく鼻だけで「ふん」と反応を示す……少なくともされた方は気持ちのいいものではないですよね。これこそが、「鼻であしらう」の態度であり語源なのです。

軽んじて適当に応対するとき鼻だけで「ふん」と雑に反応することから、「鼻であしらう」という慣用句が生まれたというわけですね。

\次のページで「「鼻であしらう」の使い方・例文」を解説!/

「鼻であしらう」の使い方・例文

次に「鼻であしらう」の使い方を例文を使って見ていきます。「鼻であしらう」のは誰かという点に注目して、一度読んでみましょう。

1.会社の上司に返事を求めたが、鼻であしらわれてしまった。
2.あの先輩は頑固だから、あなたに忠告されても鼻であしらうだけだと思うよ。
3.あんな子供に助言される筋合いはないし、鼻であしらってやった。

まず1の例文を見ると、上司に取り合ってもらえず冷たく扱われたという意味の文章であることがわかりますね。~されたという受け身の文章形態ですが、「鼻であしらう」は「鼻であしらわれる」「鼻であしらわれてしまう」というような受け身の形で使われることが最も多い言葉です。こういう嫌な態度は、した方よりされた方が印象に残るためかもしれませんね。

2の例文は「あの先輩」が主語になる文章のセリフで、「あなた」が忠告したときの反応を想像する形で「鼻であしらう」が使われています。このように「鼻であしらう」は動作をあらわす言葉であるため、その場にいる自分や相手以外にも使うことができるのです。ただネガティブなイメージのある慣用句でもあり、その場にいない相手の動作を「鼻であしらうだけだろう」と口にすると陰口のようなニュアンスが生まれてしまうのは避けられません。注意しておきましょう。

3の例文は「鼻であしらってやった」という言葉の通り、自分が行為の主体になっている文章ですね。このように自分の動作について「鼻であしらう」と言い表すことも可能ですが、あまり多くは見ない用法です。やはりどちらかと言うと受け身の言葉として使われる方が自然な言葉だと言えるでしょう。

「鼻であしらう」の類義語は?違いは?

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それでは「鼻であしらう」の類義語を確認しておきましょう。意味は「相手にとりあわず冷たく扱う」でしたね。

「ないがしろにする」

これは漢字で「蔑ろにする」と書き、「人や物をあなどり軽んじて扱うこと」を指す言葉です。また「ないがしろ」だけでも上記のような意味を持っています。人や物事を軽く見ているところ、相手にしないところなど、ニュアンスそのものが「鼻であしらう」と似ていることがわかりますね。

よく類似した言葉ですが、異なる点で言えば「鼻であしらう」よりも「ないがしろにする」の方が若干悪意の強い言葉であるというところでしょう。「鼻であしらう」は馬鹿にしたニュアンスはあるものの、どちらかと言うと「相手にしない」という点に重きが置かれています。一方「ないがしろにする」は相手にしないという点は同じですが、「軽蔑する」というニュアンスが強めに出た言葉なのです。

よく似た類義語ではありますが、細かなニュアンスの違いに気を付けて上手く使い分けていきましょう。

\次のページで「「袖にする」」を解説!/

「袖にする」

これは「そでにする」と読み、「親しくしていた人を冷淡にあしらう」という意味の言葉です。「鼻であしらう」には「親しくしていた人」という意味は含まれていませんが、冷たくぞんざいにあしらうという点でこちらの表現も類義語と言えますね。

ただ注意したいポイントとして、「袖にする」は親しくしていた人、特に異性に対して使う表現であるのです。「恋人に袖にされた」という風な方法で使われることが多いですね。冗談めかして言う場合にあえて親しい恋仲でない人に対して使うこともあるかもしれませんが、基本的には異性に使われる、という点は必ず押さえておきましょう。

「鼻であしらう」の対義語は?

類義語を確認したところで、次は「鼻であしらう」の対義語をみていきましょう。

「厚遇する」

これは「手厚くもてなし、十分な待遇をすること」を指す言葉です。対義語には「冷遇する」という言葉があり、これが「冷たくぞんざいに待遇する」という「鼻であしらう」と似た意味も持つことからも、「鼻であしらう」の対義語と言えるでしょう。

「鼻であしらう」は何か返事や行動を求めた際に相手にされないというような行為をあらわす言葉ですから、「十分に待遇をする」という行動もあらわすこの言葉はまさに正反対ですね。ポジティブで喜ばしいイメージも持っています。

「鼻であしらう」の英訳は?

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では最後に「鼻であしらう」の英訳を見ておきましょう。

「snub」

これは「鼻であしらう、冷たく扱う」という意味の動詞英単語です。「要求を退ける」などという意味も持ち、日本語の「鼻であしらう」と同じような使い方ができそうですね。

また、「snub one's noses at」という風に「鼻」という意味の「nose」を使って、「鼻であしらう」という言葉をより正確にあらわすこともできます。日本語と英語で同じ「鼻」という言葉を用いるのも面白いところですね。

\次のページで「「鼻であしらう」を使いこなそう」を解説!/

「鼻であしらう」を使いこなそう

この記事では「鼻であしらう」の意味・使い方・類語などを説明しました。

鼻で「ふんっ」と対応する、語源からも言葉の雰囲気が想像できるわかりやすい慣用句でしたね。他人を軽んじて扱う言葉の中でも「鼻であしらう」は相手にしない、取り合わないといったニュアンスを特に強く持っています。

自分が働きかけたことを冷たく扱われたくはないですが、もしそんな冷たい態度を取られても「この人は鼻であしらう人なんだ」と捉え、あまり気にし過ぎる必要はないかもしれませんね。

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【慣用句】「鼻であしらう」の意味や使い方は?例文や類語を日本語オタクライターがわかりやすく解説!

この記事では「鼻であしらう」について解説する。

端的に言えば鼻であしらうの意味は「冷淡に扱うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「鼻であしらう」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「鼻であしらう」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鼻であしらう」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鼻であしらう」の意味は?

「鼻であしらう」には、次のような意味があります。

相手の言葉にとりあおうとせず、冷淡に扱う。鼻先であしらう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鼻であしらう」

「あしらう」という言葉には「応対する」という意味がありますが、これが「鼻であしらう」になると「相手にとりあわず冷たく扱う」という意味の慣用句になります。

「鼻先であしらう」「鼻の先であしらう」という言い回しもあり、こちらも含め使ったことや耳にしたことのある人も多い言葉ではないでしょうか。実際に鼻であしらった・あしらわれた経験がある人もいるかもしれませんね。冷たくぞんざいな印象を受けるネガティブな言葉であるため、使い方に注意しながらここで詳しく学習していきましょう。

「鼻であしらう」の語源は?

ではまず「鼻であしらう」の語源を確認しておきましょう。

「あしらう」に「応対する」という意味があるのは先程述べましたが、その他にも関連して「軽んじて適当に応対する」「うまく配合する」という意味があります。「軽んじて適当に応対する」などはこれだけで「鼻であしらう」の意味とほぼ同じと言えそうですね。

「鼻であしらう」はこのような「あしらう」という言葉に「鼻」という体の部位が付属した慣用句ですが、人に応対するときに鼻を使うと言うと、どのような仕草が想像できるでしょうか。たとえば人の話に相槌を打つとき、声や言葉を返したり身振り手振りでリアクションを取るのではなく鼻だけで「ふん」と反応を示す……少なくともされた方は気持ちのいいものではないですよね。これこそが、「鼻であしらう」の態度であり語源なのです。

軽んじて適当に応対するとき鼻だけで「ふん」と雑に反応することから、「鼻であしらう」という慣用句が生まれたというわけですね。

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