この記事では「歯に衣着せない」について解説する。

端的に言えば歯に衣着せないの意味は「遠慮なく意見や考えを言うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「歯に衣着せない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「歯に衣着せない」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「歯に衣着せない」の意味や語源・使い方まとめ

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歯に衣着せない」は(はにきぬきせない)と読みます。「歯に衣着せぬ」という言い方もありますね。それでは早速「歯に衣着せない」の意味や語源・使い方について詳しく見ていきましょう。

「歯に衣着せない」の意味は?

まず最初に、「歯に衣着せない」の意味を、辞書からの引用で確認していきましょう。

1.相手の感情などを無視して思った通りを言う。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「歯に衣を着せない」

2.思ったことや感じたことを、相手に遠慮することなく言ってのけるさまを意味する表現。

出典:Weblio辞書(実用日本語表現辞典)「歯に衣着せない」

歯に衣着せない」の「衣」は(きぬ)と読み、衣服の事です。そのままの意味ですと、「歯に衣服を着せない」ということですが、本来歯に衣服を着せるなんてことはありえません。そこで、なぜ「歯」なのかと言うと…。「歯」は口元にあり、話をする時に見えるものだからです。つまり、しゃべる時に歯を隠さないという例えで、思ったことをそのまま正直に言うことを表現しているのですね。

「歯に衣着せない」の語源は?

次に「歯に衣着せない」の語源を確認しておきましょう。由来は先述した通り、歯に衣服を着せず率直に話す、と言う比喩表現からです。では、いつ頃から使われていた言葉なのでしょう。実は「歯に衣着せない」は、古くから使われている慣用句と考えられています。現代では「衣」は「ころも」と読む方が一般的ですね。「衣」を「きぬ」と読んでいたのは、平安時代からだったそうです。そして、室町時代に記された書物に「歯に衣着せすのたまへり」と言う記述がありますので、この辺りの時代からすでに使われていた慣用句だと考えられます。

\次のページで「「歯に衣着せない」の使い方・例文」を解説!/

「歯に衣着せない」の使い方・例文

では「歯に衣着せない」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.我が社の営業部は、上司だろうが部下だろうが歯に衣着せない意見のやり取りをしている。
2.あのランキング番組の司会者は、どの年代のゲストにも歯に衣着せない物言いをするので人気がある。
3.彼は歯に衣着せない発言をするので、会話をしていると痛快な気持ちになってくる。

「歯に衣着せない」の意味だけを考えると、人に遠慮せず物事をはっきりと言うことですから、少しきつい印象に感じますが、実はいい意味合いで使われることが多い慣用句です。例文を見てわかるように、きっぱりとした強い人物像をイメージさせますし、誉め言葉としても使われていますね。それは、「歯に衣着せない」という慣用句が、その人の発言が正しい場合に使われるからです。単に批判や悪口をずけずけと言う、ということではないのですね。

また、この慣用句は「歯に衣着せない」や「歯に衣着せぬ」と言った否定形でのみ使われ「歯に衣を着せる」とは言いませんので、注意してください。

「歯に衣着せない」の類義語は?

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「歯に衣着せない」の類義語として、「忌憚のない」「直言居士」が挙げられます。

「忌憚のない」

忌憚のない」は(きたんのない)と読みます。会議などでの場やビジネスでも使われている言葉ですので、覚えておくと良いでしょう。

「忌憚」とは、嫌がること、嫌うこと、と言う意味です。そして「忌憚のない」とは、気兼ねしない、遠慮をしないという意味になります。使い方としては「忌憚のない意見をください」などと用いられていますね。このように、打ち合わせなどで、下の立場の人からの率直な意見が欲しい時などに使える言葉です。

\次のページで「「直言居士」」を解説!/

「直言居士」

直言居士」は(ちょくげんこじ)と読みます。「直言」は、思っていることを率直に言うことで、「居士」とは(そういう性質を持った)男性を指して使う言葉です。つまり、相手が誰であろうと正しい意見をはっきりと言う人、ということですね。こちらは主に男性に対して使われます。

「歯に衣着せない」の対義語は?

「歯に衣着せない」の反対語としては、「奥歯に物が挟まる」「奥歯に衣着せる」が使えます。

「奥歯に物が挟まる」

奥歯に物が挟まる」は、「歯に衣着せない」の反対の意味で、はっきりと言わずに何かを隠しているような言い方をすることです。使い方は「奥歯に物が挟まったような物言い」などと用います。まるで奥歯の間に物が挟まっていて発音が不明瞭で分かりにくい、と言う例えで、はっきりとせず曖昧に話をしている様子を表しているのです。

「奥歯に衣着せる」

奥歯に衣着せる」は(おくばにきぬきせる)と読みます。「歯に衣着せない」でも「衣」が出てきますが、こちらも同じ意味で衣服のことです。ですが、「歯に衣着せない」とは反対に、こんどは奥歯に衣服を着せるという言い方ですね。つまり、奥歯を衣服で隠すという比喩で、はっきりとせず曖昧な言い方をすると言うことです。

「歯」を使った慣用句

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「歯」を使った慣用句は多いです。身近なものも多いですから、良く使われるものをいくつか確認してみましょう。

「歯痒い」「歯の根が合わない」「歯が立たない」

「歯」に関連した慣用で、下記の三つは耳にする機会が多いと思いますので、確認していきましょう。

まず一つ目は「歯痒い」です。「歯痒い」は(はがゆい)と読みます。思うように進まずじれったくイライラしている様子を表す慣用句です。次に「歯の根が合わない」を見ていきましょう。「歯の根が合わない」は(はのねがあわない)と読みます。意味は、震えで歯の奥を噛み締められないことです。恐怖や寒さで歯がガタガタと震える様子を表します。

最後に「歯が立たない」ですが、こちらは日常的にも良く使いますね。しかし、この言葉には二つの意味がありますので注意してください。一つ目は、食べ物などが固くて食べられないという意味です。二つ目に、自分の力では太刀打ちできないと言う意味があります。どちらも覚えておきましょう。

\次のページで「「歯に衣着せない」を使いこなそう」を解説!/

「歯に衣着せない」を使いこなそう

この記事では「歯に衣着せない」の意味・使い方・類語などを説明しました。話し方に関連する慣用句に「歯」を使ったものが意外に多いことも興味深かったですね。そして、「歯に衣着せない」は、良い意味で使われる言葉であることも説明しました。「歯に衣着せない」人になるのは、なかなか大変ですが、言いにくいことも、正しいと思うならば意見をしっかり述べられると良いですね。

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【慣用句】「歯に衣着せない」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「歯に衣着せない」について解説する。

端的に言えば歯に衣着せないの意味は「遠慮なく意見や考えを言うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「歯に衣着せない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「歯に衣着せない」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「歯に衣着せない」の意味や語源・使い方まとめ

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歯に衣着せない」は(はにきぬきせない)と読みます。「歯に衣着せぬ」という言い方もありますね。それでは早速「歯に衣着せない」の意味や語源・使い方について詳しく見ていきましょう。

「歯に衣着せない」の意味は?

まず最初に、「歯に衣着せない」の意味を、辞書からの引用で確認していきましょう。

1.相手の感情などを無視して思った通りを言う。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「歯に衣を着せない」

2.思ったことや感じたことを、相手に遠慮することなく言ってのけるさまを意味する表現。

出典:Weblio辞書(実用日本語表現辞典)「歯に衣着せない」

歯に衣着せない」の「衣」は(きぬ)と読み、衣服の事です。そのままの意味ですと、「歯に衣服を着せない」ということですが、本来歯に衣服を着せるなんてことはありえません。そこで、なぜ「歯」なのかと言うと…。「歯」は口元にあり、話をする時に見えるものだからです。つまり、しゃべる時に歯を隠さないという例えで、思ったことをそのまま正直に言うことを表現しているのですね。

「歯に衣着せない」の語源は?

次に「歯に衣着せない」の語源を確認しておきましょう。由来は先述した通り、歯に衣服を着せず率直に話す、と言う比喩表現からです。では、いつ頃から使われていた言葉なのでしょう。実は「歯に衣着せない」は、古くから使われている慣用句と考えられています。現代では「衣」は「ころも」と読む方が一般的ですね。「衣」を「きぬ」と読んでいたのは、平安時代からだったそうです。そして、室町時代に記された書物に「歯に衣着せすのたまへり」と言う記述がありますので、この辺りの時代からすでに使われていた慣用句だと考えられます。

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