この記事では「蜘蛛の子を散らす」について解説する。

端的に言えば蜘蛛の子を散らすの意味は「大勢のものや人が散り散りに逃げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本文学科出身でライター業のかたわら校正もしているJasminを呼んです。一緒に「蜘蛛の子を散らす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/jasmin

日本文学を専攻し事務職を経て現在は校正者兼ライター。正しく美しい日本語を日頃から追求している。蜘蛛に遭遇することは多いがどちらかと言えば苦手で、思わずグロテスクな図を想像してしまう「蜘蛛の子を散らす」について今回は説明していく。

「蜘蛛の子を散らす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「蜘蛛の子を散らす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「蜘蛛の子を散らす」の意味は?

「蜘蛛の子を散らす」には、次のような意味があります。

《蜘蛛の子の入っている袋を破ると、蜘蛛の子が四方八方に散ることから》大勢のものが散り散りになって逃げていくことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「蜘蛛の子を散らす」

大勢の人が集まっているときに思わぬアクシデントが起こっていろいろな方向へ人が逃げていき、最終的には人数がゼロになってしまう状態を表しており「散らす」は飛び散っていくように逃げていくということで短時間でいなくなるさまを表現しているのです。実際に母グモは産卵したときに卵を蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにして縛って卵を守っていますが、それを卵嚢というもので白いふわふわとした繭のようものになります。

卵嚢の中には個体差があり数十個から数千個の卵があり、人家でよく見られる種類のクモは一度の産卵で数十匹から3百匹は孵化するといわれ、孵化してもしばらくは卵嚢の中で生活しているクモの赤ちゃん。卵嚢から出てきた大量の子グモが四方八方に散るなら、近くだけではなく様々な場所へ散っていき次のすみかを作ることになりますね。

「蜘蛛の子を散らす」の語源は?

次に「蜘蛛の子を散らす」の語源を確認していきましょう。クモの子が入っている袋(卵嚢)を破ると、中からたくさんのクモの子が出てきて四方に散ることから「蜘蛛の子を散らす」という慣用句が生まれました。誤って卵嚢を壊してしまったりすると、そこから孵化した子グモが出てきて四方八方に散らばっていくといった様子が浮かんできます。

今まで自分を守ってくれていた卵嚢が急に破られて危機にさらされた子グモが安全なすみかをめざして逃げていくといった光景は、どこか人間社会にも通じるものがありますね。

\次のページで「「蜘蛛の子を散らす」の使い方・例文」を解説!/

「蜘蛛の子を散らす」の使い方・例文

「蜘蛛の子を散らす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.急な雷雨でサッカー観戦に来ていたたくさんのサポーターたちは蜘蛛の子を散らすようにそれそれ屋根のある場所へ隠れた。

2.先生の一声でクラブ活動の最中にふざけていた生徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

3.コロナウイルスの影響により休業に追い込まれ、仕事がなくなった従業員たちはみんな蜘蛛の子を散らすように辞めていった。

4.敵軍の攻勢により我が軍の兵士たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

例文1~3はすべて人の集まっているところで自分の身の安全がおびやかされる事態になったため、自分の身を守るため急いでいろいろな場所へ逃げていくといった意味です。それぞれに場所や程度は違いますが人間の防衛本能というものでしょうか、1は雨をしのげる屋根の下へ移動して2は先生の目の届かない安全な場所、3は新たな転職先にそして4は敵軍の勢力の及ばないところへとそれぞれの安全な場所へ人々があっという間に逃げていくといった様子が目に浮かびます。

「蜘蛛の子を散らす」の類義語は?違いは?

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ここでは「蜘蛛の子を散らす」の類義語を見ていきましょう。

「算を乱す」

「算を乱す」とは散り散りにばらばらになるということ、散乱するというこという意味で「算」は算木という和算で用いられた長さ約4cm、0.5cm角の竹の棒で赤は整数、黒は負数を表しています。和算は江戸時代から明治維新以前まで発達した日本独自の数学であり日本の数学は奈良時代に中国から伝わり、関孝和をはじめとした優れた和算家たちにより江戸時代に発展し広く普及して関孝和は行列式の発明や円周率の計算などを数多くの業績を残しました。または「算を散らす」ともいわれています。

\次のページで「「バラバラに逃げる」」を解説!/

「バラバラに逃げる」

一定の方向ではなくさまざまな方向へ逃げていくことからこの表現が使われます。散り散りと同じような意味ですが、分かりやすく表現するとこうなりますね。他には「算を乱して逃げる」「四方に散らばる」などがあります。人がまとまって逃げるのではなく、それぞれの目指す方向へ散らばって逃げていくのが特徴です。

「蜘蛛の子を散らす」の対義語は?

「集まる」

対義語として明確なものではなく曖昧ですが、散るという言葉に対しての対義語は「集まる」または「集合する」です。「蜘蛛の子を散らす」はさまざまな方向へバラバラに散るという意味ですが、同じ場所に複数の人が「集まる」、「集合する」は対をなす意味ではないでしょうか。

「蜘蛛の子を散らす」の英訳は?

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「to scatter in all directions」

「蜘蛛の子を散らす」の英訳は「to scatter in all directions」。またはdirectionsの後にlike baby spiders(子グモたちのようだ)が付くこともあり「scatter in」は散らばる、「all directions」は全方向という意味で、直訳すると「すべての方向に散乱する」です。

例文としては「Seeing me comming, the children ran off in all directions」。訳すると「私が近づくと子どもらは蜘蛛の子を散らしたように逃げた」となります。

\次のページで「「蜘蛛の子を散らす」を使いこなそう」を解説!/

「蜘蛛の子を散らす」を使いこなそう

「蜘蛛の子を散らす」の意味・使い方・類語などを説明しました。日常生活でどれくらい「蜘蛛の子を散らす」という場面を見たことがあるかと聞かれたら、1度か2度ぐらいか記憶が定かではありませんが私はあまりクモが好きではないのでできれば子グモが卵嚢を破って逃げていく場面を見たくないです。実際にクモの子が逃げていく様子を見ていなくても何となく一斉に散らばって逃げていく様子が思い浮かぶのではないでしょうか。ビジネスの世界でも使われることがあり事業が好調のときは人々が集まってきますが、例文3でも紹介したように現在はコロナウイルスの影響で大勢の人が集まることが難しく、経営者のなかには感染への恐怖や仕事が減ったことにより従業員に辞められてしまうなど同じような思いをしている人も少なくないと思います。人間もクモも身の危険を感じたら安心できる場所へ逃げたいという気持ちは一緒のようですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「蜘蛛の子を散らす」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒の校正者兼ライターがわかりやすく解説!

この記事では「蜘蛛の子を散らす」について解説する。

端的に言えば蜘蛛の子を散らすの意味は「大勢のものや人が散り散りに逃げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本文学科出身でライター業のかたわら校正もしているJasminを呼んです。一緒に「蜘蛛の子を散らす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/jasmin

日本文学を専攻し事務職を経て現在は校正者兼ライター。正しく美しい日本語を日頃から追求している。蜘蛛に遭遇することは多いがどちらかと言えば苦手で、思わずグロテスクな図を想像してしまう「蜘蛛の子を散らす」について今回は説明していく。

「蜘蛛の子を散らす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「蜘蛛の子を散らす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「蜘蛛の子を散らす」の意味は?

「蜘蛛の子を散らす」には、次のような意味があります。

《蜘蛛の子の入っている袋を破ると、蜘蛛の子が四方八方に散ることから》大勢のものが散り散りになって逃げていくことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「蜘蛛の子を散らす」

大勢の人が集まっているときに思わぬアクシデントが起こっていろいろな方向へ人が逃げていき、最終的には人数がゼロになってしまう状態を表しており「散らす」は飛び散っていくように逃げていくということで短時間でいなくなるさまを表現しているのです。実際に母グモは産卵したときに卵を蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにして縛って卵を守っていますが、それを卵嚢というもので白いふわふわとした繭のようものになります。

卵嚢の中には個体差があり数十個から数千個の卵があり、人家でよく見られる種類のクモは一度の産卵で数十匹から3百匹は孵化するといわれ、孵化してもしばらくは卵嚢の中で生活しているクモの赤ちゃん。卵嚢から出てきた大量の子グモが四方八方に散るなら、近くだけではなく様々な場所へ散っていき次のすみかを作ることになりますね。

「蜘蛛の子を散らす」の語源は?

次に「蜘蛛の子を散らす」の語源を確認していきましょう。クモの子が入っている袋(卵嚢)を破ると、中からたくさんのクモの子が出てきて四方に散ることから「蜘蛛の子を散らす」という慣用句が生まれました。誤って卵嚢を壊してしまったりすると、そこから孵化した子グモが出てきて四方八方に散らばっていくといった様子が浮かんできます。

今まで自分を守ってくれていた卵嚢が急に破られて危機にさらされた子グモが安全なすみかをめざして逃げていくといった光景は、どこか人間社会にも通じるものがありますね。

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