
端的に言えば「西向く侍」の意味は「小の月の覚え方」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
学習塾経営者で国語が得意なぼすこを呼んです。一緒に「西向く侍」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ぼすこ
国立大学教育学部卒業後、学習塾を経営。読書好きが高じて蓄えた幅広い知識と、得意教科である国語力で、四字熟語をわかりやすく解説していく。
「西向く侍」の意味は?
「西向く侍」について辞書で調べると次のようになっています。
1.小の月を覚えるための言葉遊び。二(に)・四(し)・六(む)・九(く)・十一(組み合わせると「士」になる)の各月を表したもの。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「西向く士」
「西向く侍」は辞書の意味からもわかるとおり、小の月を覚えるための語呂合わせです。日本では明治以降グレゴリオ暦が用いられていますが、それ以前には和暦という暦が用いられていました。和暦は1ヶ月が30日の月と29日の月があり、それが月の満ち欠けによって変動するというものでした。30日ある月を大の月、29日の月を小の月と呼んで区別していたのです。
グレゴリオ暦では、1ヶ月が31日の月を大の月、1ヶ月が31日に満たない月を小の月と区別し、2月、4月、6月、9月、11月は小の月と固定されています。その組み合わせを覚えるために生み出された語呂合わせが「西向く侍」なんですね。
余談にはなりますが、グレゴリオ暦の前にはユリウス暦という暦が用いられていました。和暦とは違い、西洋ではユリウス暦のときから閏年が設けられていたため、小の月を固定できていたのです。それでも誤差があったため、グレゴリオ暦へと改暦が行われたのですが、その誤差に気づく天文学者たちは本当にすごいと感心してしまいますね。
「西向く侍」の語源は?
では、続いて「西向く侍」の語源について見ていくことにしましょう。
「西向く侍」が小の月を覚えるためのものということは確認しましたが、疑問に感じることもあろうポイントが、「侍」かと思います。西向くまでは、それぞれ小の月を順に読んで、「に(2)」「し(し)」「む(6)」「く(9)」となることで納得できますが、「侍」は何を表しているのでしょうか。
「侍」は元々使われていた漢字ではなく、別の由来になった漢字が。カレンダーを見てみると、31日ではない月がもう一月ありますよね。11月です。11を漢数字にすると十一、縦に並べると「士」という字になります。実はこの「士」という字には、「さむらい」という読み方があり、元々「西向く侍」ではなく、「西向く士」であったということです。「士」という表現が徐々に使われなくなっていくなかで、より馴染みがある「侍」の漢字に変化していったようですね。
\次のページで「「西向く侍」の使い方・例文」を解説!/