
端的に言えば旅の恥はかき捨ての意味は「旅先では恥ずかしいことをしてもその場限り」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコを呼んです。「旅の恥はかき捨て」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。
ライター/ヤザワナオコ
コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。
単なる趣味で年間30泊以上はホテルを利用する旅行好きらしいので、「旅の恥はかき捨て」とはどんなときに使う言葉なのか、似た言葉はあるのかなど解説してもらう。
「旅の恥はかき捨て」の意味は?
「旅の恥はかき捨て」は、一般的には次のような意味で使われます。かき捨ての「かき」は「恥を掻く」のことなので、「掻き捨て」と漢字で書かれることもありますよ。
旅先では知っている人もいないから、どんなに恥ずかしいことをしてもその場限りのものである。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
日常から離れて旅に出ると、つい気持ちが大きくなって電車の中で大騒ぎしてしまったり、宴会ではめをはずしてしまったり。普段は品行方正な人でも思わぬ失態を見せるようなこともあります。みっともないことをしても、旅が終わっていつもの暮らしに戻ればそれを知る人もいなくなり、平気な顔で暮らせる…そんな感覚になったことはありませんか。
従来なら絶対にしないようなことを、悪いと分かっていながらやってしまうときの言い訳として「旅の恥はかき捨てだからまあいいよね」と言ったり、そうした行動を適切なものに改めさせようとするときに使われたりするのがこの言葉です。
元は悪い意味ではなかった?
このように今ではすっかり「旅先では何をしてもその場限りだ(→だから何をしてもいいだろう)」という意味で使われる「旅の恥はかき捨て」ですが、元々はそういう意味で用いられた言葉ではないようです。旅先で礼儀にかなわない行為をしてしまうという点は同じなのですが、「誰が使うか」「礼儀にかなわない行為をどう捉えるか」という点が異なります。
その昔、交通機関も情報網も発達せず、遠い地域の情報に接するのが難しかった時代がありました。旅人がその地域の伝統や風習に合わない行動をとってしまったときに、「現地の人」が、「旅の恥なんて気にすることはない」と慰めるように使われたのが本来の形だそうですよ。
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