主に冬場、乾燥した手が衣服などとこすれ、そのままの状態でドアノブなどを触ると「バチっと」来るのは静電気によるもの。静電気の電圧は普段私たちが使っている電気より電圧が高く、大きな事故につながる要因にもなる。痛いだけでは済まされないわけです。本記事では、静電気が発生するメカニズムと、それがどのくらい威力を持つかについてをメンイに述べたい。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。身近な現象に結びつけて分かりやすい解説を強みとする。

1.実は静電気は危険!?

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静電気≒火花です。冬場乾燥した手でドアノブなどの金属に触れると「バチ」と来ますね。その瞬間実は小さな稲妻が見えるようです。その瞬間を捉えた写真もあり、検索したらたくさん出てきますよ。

そんな静電気ですが、バチっと来て痛いだけでは済まされず大きな事故の原因になるのです。火花が発生している時点で何かしらの事故は起きそうですね。

本当は怖いガソリンスタンド

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火気厳禁と言われるガソリンスタンド。タバコの火はもちろん静電気などの火花も火事の原因になります。なぜガソリンスタンドはそこまで火災のリスクがあるのか?それは揮発したガソリンが空気中に充満していて、それに引火する恐れがあるため。

空気中にあるガソリンも簡単に引火する

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そもそも、なぜ簡単に引火してしまうのかここで整理しておきましょう。火が生まれるためには、可燃物がありそこに一定上の熱エネルギーが与えられる必要があります。ガソリンも可燃物であるため一定以上のエネルギー(熱)が与えられると燃えてしまうのです。

しかし、静電気が走るのは空気中であり、ガソリンにはエネルギーが与えられないのではなかろうかという疑問がわいてきますね。いえ、そんなことはないのです。静電気が走るのは空気中ですが、その空気中にガソリンも含まれているのです。

ガソリンは非常に揮発性が高い物資。揮発とは気化or蒸発とほぼ同じ意味で、液体から気体に変わるイメージです。気体となったガソリンは空気中に混ざっています。つまり給油中の空気はガソリンと空気の混合気体、エンジンの燃焼室と同じような状態。ガソリンが燃えるためには酸素も必要であるためには空気も混ぜてやる必要があり、ガソリン気体:空気を14.7:1にすれば最も燃焼効率がよいとされています。この比率であれば、給油中に気化したガソリンと空気が混ざることで成立しそうですね。恐ろしい。

引火点について

ガソリンは低い温度でも燃えてしまう物質。だからこそ燃料に使われています。引火点とは可燃性を有するための最低温度のこと。この温度を超えた状態できっかけとなるエネルギーを与えてやれば燃えることができます。ガソリンの引火点はなんと-43℃。つまり常温で可燃性であることはもちろん、ガソリンエンジンの燃焼室が氷点下の低温になっていてもエンジンがかけられるわけです。

ちなみにエタノールも揮発して空気と混合すれば可燃性物質となりますが、こちらは引火点が16.6℃(濃度70%エタノール)とガソリンよりは高いですが、それでも常温の範疇に入っています。夏なら引火して、冬なら引火しないと言ったところですね。

\次のページで「2.そもそも静電気とは?」を解説!/

2.そもそも静電気とは?

静電気とは、静止したままの電荷による電気。普通の電気のように電流が流れているわけではない。電気はあるけど流れていないという状態です。

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電気の流れ=電荷の流れと言い換えられるでしょう。もっと言うと電子の流れです。全ての物体は原子が集まって構成されているもの。原子を構成するのは+の電荷を持つ原子核と-の電荷を持つ電子です。+電荷同士あるいは-電荷同士は退け合い(斥力)、+電荷と-電荷は引っ張り合う性質(引力)があります。この引力と斥力がうまくつりあって安定するように原子核や電子が配置されているもの。

前提条件として+電荷である原子核は大きく重たい、-電荷である電子は小さく軽いため、電荷の移動が必要になった場合に動くのは電子の方です。

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電気が流れるとき必ず電圧がかかっています。電圧がかかるというのは+か-に帯びた電荷を近付けた状態をイメージしましょう。電荷が近付いてくると引力斥力のバランスが崩れますね。バランスを保つため、導電体の場合は物質内の「電子が移動」します。これが電気の流れている状態。ただし、電子が移動できるのは導電体の場合のみです。

金属などに代表される「導電体」は、電子が移動しやすい構造。金属原子の最外殻には電子が存在できるポジションがそこら中にあるので、1か所に留まらず自由に移動できます。いわゆる自由電子です。前述のように電圧をかけた時、引力斥力のバランスを保つために電子がスムーズに移動していきます。

金属などに代表される「導電体」は、電子が移動しやすい構造です。金属原子の最外殻には電子が存在できるポジションがそこら中にあるので、1か所に留まらず自由に移動できます。いわゆる自由電子です。前述のように電圧をかけた時、引力斥力のバランスを保つために電子がスムーズに移動していきます。しかし、プラスチックなどの絶縁体は基本的に電気を流さないですが、絶縁体にも電子が存在することに注目しましょう。電流の元になる電子はあるのですが、原子構造上電子は移動しにくく流れてくれないだけです。金属の場合は、最外殻の電子が存在できるポジションがたくさんありますが絶縁体の場合、電子は限られたポジションにしか存在できないもの。電子軌道内にちょうど満員状態で電子が存在し場所替えが出来ないものと考えましょう。

自由に動けないとは言え、電子が存在する限り絶縁体にも「電気」という概念があります。それが静電気です。大切なのは1文字目の「静」、静止を意味します。電子は存在するが、静止していて流れていないということです。

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絶縁体であれ導体であれ、通常は+電荷とー電荷がバランスよく配置されているもの。よって電気が流れることはありません。絶縁体の場合は電荷が自由に移動出来ないため、電圧を発生させるのは難しそうですね。ではどのような時に絶縁体で電気が発生するのか。それは物理的に電荷のバランスが崩された時です。電荷のバランスが崩れると電位差が発生し、これが電気が「流れようとする」原動力となります。

本来、+電荷なる原子核と-電荷なる電子は引力斥力がつり合うようバランスよくポジションを取っているもの。しかし、擦るなどして物理的に配置バランスを崩してやると、その配置が崩れます。セーターや下敷きを擦った時も電荷のバランスは崩れているもの。擦ったせいで電子ばかり1箇所に集中したとしましょう。-電荷ばかりが集まると、お互いに斥力が働きます。電子からするとどこかに逃げ出したくたまらない。+電荷なる原子核が集まっている方に移動したいところですね。しかし、絶縁体では電子が自由に移動できない。元に戻りたくても戻れない。その結果電荷が偏って電位差(電圧)が発生している(帯電している)状態、これが静電気です。

3.なぜ帯電するの?

金属などの導体であれば溜まった電荷は流れていきますが、絶縁体は電荷が自由に移動出来ないため、溜まった電荷はそのままになります。つまりそのまま放置しておくとずっと静電気がある状態なのです。

4.静電気の威力は?

静電気の電圧は高いです。衣服等で発生する静電気は3000〜1万V程度と言われています。乾電池が1.5V、家庭用の電源タップで100V、電車に供給される電圧が600〜1500V程度ですから、それよりもはるかに高いわけです。


 

ちなみに、ガソリンエンジンではエンジンを動かすために意図的に電気を発生させていますが、その電圧が1万〜3万V程度と言われています。衣服などに発生している静電気と同じか少し大きい程度。空気中のガソリンが発火してしまうのも頷けますね。

 

\次のページで「流れたくてうずうずしている静電気」を解説!/

流れたくてうずうずしている静電気

静電気は絶縁体の中で移動出来ない電荷が無理やり移動しようとしている状態

連続的に流れるものではありませんが、電圧ベースで見ると大きなエネルギーを持っています。手や衣服に発生する静電気がガソリンを引火させるくらいのエネルギーがあるのです。

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化学理科電磁気学・光学・天文学

「帯電」すると何故危険なのか?痛いだけでは済まされない!理系ライターがわかりやすく解説!

主に冬場、乾燥した手が衣服などとこすれ、そのままの状態でドアノブなどを触ると「バチっと」来るのは静電気によるもの。静電気の電圧は普段私たちが使っている電気より電圧が高く、大きな事故につながる要因にもなる。痛いだけでは済まされないわけです。本記事では、静電気が発生するメカニズムと、それがどのくらい威力を持つかについてをメンイに述べたい。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。身近な現象に結びつけて分かりやすい解説を強みとする。

1.実は静電気は危険!?

image by iStockphoto

静電気≒火花です。冬場乾燥した手でドアノブなどの金属に触れると「バチ」と来ますね。その瞬間実は小さな稲妻が見えるようです。その瞬間を捉えた写真もあり、検索したらたくさん出てきますよ。

そんな静電気ですが、バチっと来て痛いだけでは済まされず大きな事故の原因になるのです。火花が発生している時点で何かしらの事故は起きそうですね。

本当は怖いガソリンスタンド

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火気厳禁と言われるガソリンスタンド。タバコの火はもちろん静電気などの火花も火事の原因になります。なぜガソリンスタンドはそこまで火災のリスクがあるのか?それは揮発したガソリンが空気中に充満していて、それに引火する恐れがあるため。

空気中にあるガソリンも簡単に引火する

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そもそも、なぜ簡単に引火してしまうのかここで整理しておきましょう。火が生まれるためには、可燃物がありそこに一定上の熱エネルギーが与えられる必要があります。ガソリンも可燃物であるため一定以上のエネルギー(熱)が与えられると燃えてしまうのです。

しかし、静電気が走るのは空気中であり、ガソリンにはエネルギーが与えられないのではなかろうかという疑問がわいてきますね。いえ、そんなことはないのです。静電気が走るのは空気中ですが、その空気中にガソリンも含まれているのです。

ガソリンは非常に揮発性が高い物資。揮発とは気化or蒸発とほぼ同じ意味で、液体から気体に変わるイメージです。気体となったガソリンは空気中に混ざっています。つまり給油中の空気はガソリンと空気の混合気体、エンジンの燃焼室と同じような状態。ガソリンが燃えるためには酸素も必要であるためには空気も混ぜてやる必要があり、ガソリン気体:空気を14.7:1にすれば最も燃焼効率がよいとされています。この比率であれば、給油中に気化したガソリンと空気が混ざることで成立しそうですね。恐ろしい。

引火点について

ガソリンは低い温度でも燃えてしまう物質。だからこそ燃料に使われています。引火点とは可燃性を有するための最低温度のこと。この温度を超えた状態できっかけとなるエネルギーを与えてやれば燃えることができます。ガソリンの引火点はなんと-43℃。つまり常温で可燃性であることはもちろん、ガソリンエンジンの燃焼室が氷点下の低温になっていてもエンジンがかけられるわけです。

ちなみにエタノールも揮発して空気と混合すれば可燃性物質となりますが、こちらは引火点が16.6℃(濃度70%エタノール)とガソリンよりは高いですが、それでも常温の範疇に入っています。夏なら引火して、冬なら引火しないと言ったところですね。

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