宇宙で一番速いものと言えば「光」。たった1秒間で地球を7周半もしてしまうほどの「超高速」。そんな超高速であるとは言え、速度の上限は「光速度」と決まっている。この記事では、速度の上限が決まている理由と、仮に光速度で移動できた場合に起きる現象について解説していく。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。専門用語を日常生活に関連づけて初心者に分かりやすい解説を強みとする。

1.光速度とは?

image by iStockphoto

宇宙のとごを探しても光より速いモノはありません。アインシュタインの相対性理論によれば、光の速度である秒速30万キロ(地球7周半)が速度の上限であるとされています。なぜ無限大の速度は実現せず、これが上限なのでしょうか。そして仮に、光速度で移動することが出来たらどんなことが起きるのでしょうか。

光速度が上限である理由パート1

image by iStockphoto

なぜ上速度に上限があるかとと言うと、最も軽い粒子(光子)に無限大のエネルギーを与えたときにその速度になるからです。粒子にエネルギーを与えればそれが運動エネルギーに変わり速度を持ちます。なるべく軽い粒子になるべく大きなエネルギーを与えると速度は大きくなりますが、どこかに限界があり、無限大の速度は実現し得ないのです。質量が宇宙で最も小さい光子(光の元になる粒子)に無限大のエネルギーを与えた時の速度が上限となり、これが光速度となります。

image by Study-Z編集部

式だけ見ると無限大の速度が実現しそうですが

運動エネルギーの式から速度について解いてみると、根号の中は分子がエネルギーで分母が質量。エネルギーを無限大にすれば速度も無限大に発散するはずですね。しかしそうはなりません。なぜなら後述の通り質量mが変化するからです。光速度に近いレベルの速度になると質量mがだんだん大きくなると考える必要があります。

\次のページで「2.質量が無限大?」を解説!/

2.質量が無限大?

古典的な表現では運動量はmvですが、光速度に近い領域での運動量がγm'vという表し方になります。速度が上がるにしたがって質量も変化させる考え方であり、光速度では質量が無限大に発散し、γは以下に示す式の通りです。

image by Study-Z編集部

光速度よりはるかに遅い速度域ではγ=1とみなせるため運動量はmvと考えてOKですが、光速度に近づくとγの影響も考える必要が出てきます。γm'=mとして、低速域(γ=1とみなせる)と光速度に近い領域(γの影響を無視できない)での運動量が等しいとすると、γが0に近づくとm'は無限大に発散してしまいますね。この考え方に従えば、光速度で移動する物体は質量が無限大に発散します。

光速度が上限である理由パート2

さて、話を戻しましょう。速度について解いた式において根号内の分子はエネルギー、分母は質量となりますが、前述の通り光速度に近い領域ではエネルギーだけでなく質量も無限大に発散することを確認しました。よって、エネルギー無限大の時、速度=無限大/無限大の形であり何かしらの極限値を持つことを意味します。その極限値こそが「光速度」です。

おことわり

本記事では相対性理論で登場するエネルギーの式E=mc^2を用いず、なじみのある運動エネルギーの式のみで解説しています。そのため、多少粗い解説になっている点ご承知おきください。

番外編~光速度を超える速度が観測されることがある~

理論上、速度の最大値は「光速度」ですがそれを上回る速度が観測されることがあります。それはなぜか?測定器の誤差の問題でしょうか。それとも本当に光速度を超える速度が発生しているのでしょうか。

答えはどちらでもありません。光速度以上の速度が観測されしまう理由は「測定原理」にあります。

image by Study-Z編集部

上記イラストのご覧ください。点ABに沿って移動する宇宙ジェットを点Oから観測するとしましょう。実際はA→Bに向かって移動していますが、観測すると点A'→点Bに移動しているように見えるとします。

ジェットはA→Bの移動にtだけかかるとしましょう。Aから放たれな光線は経路A'Oをたどって観測され、Bから放たれた光線は経路BOをたどって観測されますね。すると、Aからの光線を観測する時とBからの光線を観測する時で、光線がOに至るまでの時間がズレます。Aからの光線を観測する時は、AA'分だけ余計な経路をたどっているわけです。O地点で測定した光線の移動時間をt'としましょう。

A地点からの光線が届いた瞬間にタイマーをスタートしB地点からの光線が届いた瞬間にストップさせ記録される時間がt'です。A地点からの光線が届くのが遅れている分、タイマーをスタートさせるのも遅れるため、O地点で測った移動時間の測定値t'は実際の移動時間tよりもAA'の移動分だけ短く観測されます。これらの情報を元に式を立てると以下のようになりますね。

 

image by Study-Z編集部

観測される速度v'について、Θが十分に小さくてvが光速度に近くβ≒1とみなせる場合は光速度を超えてしまいます。式がやや複雑なため、グラフ描画して確認してみましょう。

グラフの通り、Θがある値の時にv'が最大値を取りそれが光速度を超えていることが分かりますね。また、少し乱暴ですがβ=1としてv'の式に代入して変形し、Θを0に近づけるとv'は無限大に発散することからも光速度cを超える可能性があることが予想されますね(以下式)。

image by Study-Z編集部

3.時間が止まる(理由も含めて)

実は速度を持ったでは時間の流れが遅くなり、光速度では完全に時間が止まるのです。これは「相対速度」の考え方から導くことが出来ます。相対速度とは観測する基準を任意に変え、そこから観測した速度のことです。

系と相対速度

系と相対速度

image by Study-Z編集部

系とは「観測する基準」のことで、例えば、踏切で立ち止まって待っているAさんから見た場合を系A、電車に乗っているBさんから見た場合を系Bとしましょう。時速10kmで電車と同じ方向に進む自転車は系Aから見ると右向きに時速10km、系Bから見ると左向きに時速50km。距離や時間、速度を議論する時はどこ基準で見るかを決める必要があり、その基準のことを系と呼びます。系は静止状態とか電車の中とか自転車だとイメージしてください。

image by Study-Z編集部

同じ動きを観測していても、観測する基準によって速度や移動距離が変わってきます。例えば、Aさんが時速21kmで壁と平行に走りながら時速72kmで壁に向かってボールを投げたとしましょう。Aさんからみるとボールの速度は?時速72kmですね。では止まっている人から見たボールの速度は?そもそも止まっている人から見たらボールは壁に真っ直ぐ向かっておらずAさんと共に横方向にも時速21kmで動いていますね。イラストに示す斜め方向に向かっておりその速度は三平方の定理から時速75kmとなります。このように、同じ動きを捉えていても系(観測する基準)によって速度は異なるもの。

image by Study-Z編集部

前項で壁までの距離が24mだったとしましょう。ボールが壁にぶつかるまでの移動距離は何mでしょうか?まずAさんから見るとボールは真っ直ぐ壁に向かって行ったように観測されるためボールの移動距離は24m。一方静止状態から観測するとボールは斜めに投げられたのだから作図より移動距離は25mと求まりますね。横方向に動いているAさんからしたら、横方向の動きは無視出来るため速度も移動距離も壁なら垂直な向きのみとなりますが、静止している人から見ると横方向の動きも考慮する必要があり速度も移動距離も長く観測されます。

時間の遅れ

時間の遅れ

image by Study-Z編集部

なぜ速度を持っていると時間の流れがゆっくりになるか?

イラストのように、速度vで進む系の垂直方向に光を発射します。Lだけ離れた鏡で反射させ戻って来るまでの時間を考えましょう。速度がゼロの静止系の観測者は壁に到達するまで速度vの系にいる人はt=L/cだと言っており、静止系の観測者はそれより長いと言っております。速度vの系から見ると光の移動距離は短いですが、速度はどちらもc。速度vの系からからだと移動距離が短く観測されますが、辻褄を合わせるため経過時間も短くなるのです。

速過ぎると決して快適ではない

この記事では、速度の上限(光速度)があることとその理由、および光速度で移動した場合に起きる現象について解説しました。

光速度で移動すると、質量が無限大になり時間の経過が止まってしまいます。もし、重さを感じることが出来たら無限大の重さを永遠に感じ続けることになりますね。速度が速すぎることが快適な状態かどうかは分かりません。

" /> 光速度で移動するどうなるか?理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説! – Study-Z
物理理科電磁気学・光学・天文学

光速度で移動するどうなるか?理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説!

宇宙で一番速いものと言えば「光」。たった1秒間で地球を7周半もしてしまうほどの「超高速」。そんな超高速であるとは言え、速度の上限は「光速度」と決まっている。この記事では、速度の上限が決まている理由と、仮に光速度で移動できた場合に起きる現象について解説していく。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。専門用語を日常生活に関連づけて初心者に分かりやすい解説を強みとする。

1.光速度とは?

image by iStockphoto

宇宙のとごを探しても光より速いモノはありません。アインシュタインの相対性理論によれば、光の速度である秒速30万キロ(地球7周半)が速度の上限であるとされています。なぜ無限大の速度は実現せず、これが上限なのでしょうか。そして仮に、光速度で移動することが出来たらどんなことが起きるのでしょうか。

光速度が上限である理由パート1

image by iStockphoto

なぜ上速度に上限があるかとと言うと、最も軽い粒子(光子)に無限大のエネルギーを与えたときにその速度になるからです。粒子にエネルギーを与えればそれが運動エネルギーに変わり速度を持ちます。なるべく軽い粒子になるべく大きなエネルギーを与えると速度は大きくなりますが、どこかに限界があり、無限大の速度は実現し得ないのです。質量が宇宙で最も小さい光子(光の元になる粒子)に無限大のエネルギーを与えた時の速度が上限となり、これが光速度となります。

image by Study-Z編集部

式だけ見ると無限大の速度が実現しそうですが

運動エネルギーの式から速度について解いてみると、根号の中は分子がエネルギーで分母が質量。エネルギーを無限大にすれば速度も無限大に発散するはずですね。しかしそうはなりません。なぜなら後述の通り質量mが変化するからです。光速度に近いレベルの速度になると質量mがだんだん大きくなると考える必要があります。

\次のページで「2.質量が無限大?」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: