この記事では「焼けぼっくい」について解説する。

端的に言えば焼けぼっくいの意味は「燃え残った木の棒」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「焼けぼっくい」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。現在はほぼ年中無休で物書きを行う。言葉の解説は得意だが、恋愛の解説は苦手。一方的に好きになるのはしょっちゅうだが、焼けぼっくいに火が付いたことなんてない。

「焼けぼっくい」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「焼けぼっくい」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「焼けぼっくい」の意味は?

「焼けぼっくい」には、次のような意味があります。

1.焼けた杭。燃えさしの棒杭。
2.「焼け木杭に火が付く」の略。「再三―になった後今はどうやら腐縁とでも云うような間柄になって」〈荷風・腕くらべ〉

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焼け木杭」

焼けぼっくい」(やけぼっくい)自体は1の意味です。しかし、今日ではこの言葉単体で使われることは少なく、2の意味で使われることが多くなりました。よって、「焼けぼっくいに火が付く」の意味も確認していきましょう。

一度焼けた杭は火がつきやすいところから、以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻ることのたとえ。主に男女関係についていう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焼け木杭に火が付く」

別れた夫婦がよりを戻すといった場面で、「焼けぼっくいに火が付く」(やけぼっくいにひがつく)という言葉がよく使われます。「焼けぼっくい」とは、この意味で使われることが多くなりました。「棚からぼたもち」を略して「たなぼた」というようなものです。

確かにキャンプへ行ってたき火をしたとき、「この燃え残りを片付けて帰ろう」とは言いますが、「この焼けぼっくいを片付けて帰ろう」とはなかなか言わないですよね。これが本来の使い方のはずですが、違和感があるのはなんだか不思議な事象です。

「焼けぼっくい」の語源は?

次に「焼けぼっくい」の語源を確認しておきましょう。「焼けぼっくいに火が付く」を略したものだと説明しましたが、では「焼けぼっくい」の「ぼっくい」とは何のことでしょうか。

ぼっくい」とは「木の棒」のことです。「ぼっくい」はもともと「棒杭」(ぼうくい)と呼ばれ、時代とともに音が変化して「ぼうくい」が「ぼっくい」となりました。「焼けぼっくい」は、木の棒が燃えて残ったもののことです。

ぼっくいは燃え残ると炭化し、いったん火が消えたとしてもいつまた燃え出してもおかしくない状態となります。そのことが、一度は途絶えた関係、特に男女の仲が再び修復するときに例えられました。「恋は炎のように燃え上がる」とはよく言ったものですよね。

「焼けぼっくい」の使い方・例文

「焼けぼっくい」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.一度は別れた二人だったが、焼けぼっくいに火が付いて復縁した。
2.久々に参加した同窓会で陽奈子と再会して、焼けぼっくいに火が付いた。
3.あいつら、男の方が浮気して前に別れたけど、焼けぼっくいとやらでまた付き合いだしたよ。

すべて復縁する、または復縁しそうなシチュエーションですよね。「焼けぼっくい」はそういった場面で活躍する言葉です。1と2が「焼けぼっくい」の後ろに「~に火が付く」が合わさった形、3は「焼けぼっくいに火が付く」を略して「焼けぼっくい」と言った形の例文として挙げました。

ちなみに「焼けぼっくいには火が付きやすい」という表現もあります。「かつて縁があった者同士は一度別れても元の関係に戻りやすい」という意味です。「焼けぼっくい」の使い方のレパートリーの1つとして、覚えておいて損はありません。

\次のページで「「焼けぼっくい」の類義語は?違いは?」を解説!/

「焼けぼっくい」の類義語は?違いは?

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「焼けぼっくい」に類義語はあるのでしょうか。略して使われるものを探すとアレがありました。

「元鞘」

元鞘」(もとさや)は、正しくは「元の鞘に収まる」という慣用句です。いったん縁が切れて仲違いになった者が元の関係に戻ることを言います。抜かれた刀が普段収めておくべき鞘に戻ることに例えて言われるようになりました。

「元鞘」と略されるようになったのは、昭和の時代になってからとされます。辞書によっては「元鞘」という形で掲載されていません。「元の鞘に収まる」のみの掲載です。

たまに「元の鞘に戻る」という表現を目にしますが、辞書の掲載はありません。「よりが戻る」との混同が考えられます。「よりが戻る」も「元鞘」と同じ意味なので仕方ないかもしれません。

「焼けぼっくい」の対義語は?

では、「焼けぼっくい」の対義語は何でしょうか。

「袂を分かつ」

「焼けぼっくい(に火が付く)」が復縁を意味しますので、離縁を意味する言葉が対義語となります。「袂を分かつ」(たもとをわかつ)がその1つです。

「袂」(たもと)とは、着物などで袖の下が垂れ下がって袋状になっている部分を言います。手(た)の本(もと)が語源です。ポケットのように物を入れたりもしました。

未婚の女性が振袖を着て、結婚したら留袖にするのはご存知ですよね。かつては結婚する前に振袖を仕立て直して袂を小さくしたのです。そして、新生活のために実家の家族と別れて暮らすことを「袂を分かつ」と呼ぶようになりました。

「焼けぼっくい」の英訳は?

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さらに、「焼けぼっくい」の英訳についてもふれていきましょう。

「charred stake」「ember」

charred stake」と「ember」、どちらも「焼けぼっくい」の英訳を検索すると出てくる言葉です。「charred」は「炭にする、黒焦げにする」という意味の動詞「char」の過去形または過去分詞、「stake」は「杭、棒」という意味があります。「ember」は1語で「燃えさし、残り火」という意味の単語です。

では、「焼けぼっくいに火が付く」で検索した場合はどうなるでしょうか。いくつか検索結果が得られたので紹介します。

\次のページで「「焼けぼっくい」を使いこなそう」を解説!/

1.「wood  half-burned is easily kindled」(半焼けの木は火が付きやすい)

2.「burnt wood stakes catch fire」(燃えた木の棒は火が付く)

3.「an old flame has been rekindled」(古い炎は再燃する)

1は直訳すると「半焼けの木は火が付きやすい」です。「half-burned」で「半分焼けた」、「kindle」は「火を付ける、燃やす」という意味となります。

2はわりと日本語の直訳と言えますよね。「燃えた木の棒は火が付く」と訳すことができます。

3は日本語訳すると「古い炎は再燃する」、「flame」は枠のフレーム(frame)ではなく「炎」、「re」+「kindle」で「再び燃え上がる」です。

「焼けぼっくい」の英訳は定着していないという印象でした。英語の慣用句には「焼けぼっくいに火が付く」に相当するものがハッキリしていないということになります。

「焼けぼっくい」を使いこなそう

この記事では「焼けぼっくい」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「焼けぼっくい」という言葉、現代では本来の意味であまり使われていません。「~に火が付く」とセットで復縁を表すことがほとんどです。「焼けぼっくい」単独でその役割をすることさえあります。

世間では、特に男性の方が別れた元カノに未練があるものです。あわよくば「焼けぼっくい」にならないものかと狙っていますよね。ただし相手にパートナーがいる場合は控えた方がいいでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「焼けぼっくい」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「焼けぼっくい」について解説する。

端的に言えば焼けぼっくいの意味は「燃え残った木の棒」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「焼けぼっくい」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で現代日本語学を専攻。現在はほぼ年中無休で物書きを行う。言葉の解説は得意だが、恋愛の解説は苦手。一方的に好きになるのはしょっちゅうだが、焼けぼっくいに火が付いたことなんてない。

「焼けぼっくい」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「焼けぼっくい」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「焼けぼっくい」の意味は?

「焼けぼっくい」には、次のような意味があります。

1.焼けた杭。燃えさしの棒杭。
2.「焼け木杭に火が付く」の略。「再三―になった後今はどうやら腐縁とでも云うような間柄になって」〈荷風・腕くらべ〉

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焼け木杭」

焼けぼっくい」(やけぼっくい)自体は1の意味です。しかし、今日ではこの言葉単体で使われることは少なく、2の意味で使われることが多くなりました。よって、「焼けぼっくいに火が付く」の意味も確認していきましょう。

一度焼けた杭は火がつきやすいところから、以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻ることのたとえ。主に男女関係についていう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焼け木杭に火が付く」

別れた夫婦がよりを戻すといった場面で、「焼けぼっくいに火が付く」(やけぼっくいにひがつく)という言葉がよく使われます。「焼けぼっくい」とは、この意味で使われることが多くなりました。「棚からぼたもち」を略して「たなぼた」というようなものです。

確かにキャンプへ行ってたき火をしたとき、「この燃え残りを片付けて帰ろう」とは言いますが、「この焼けぼっくいを片付けて帰ろう」とはなかなか言わないですよね。これが本来の使い方のはずですが、違和感があるのはなんだか不思議な事象です。

「焼けぼっくい」の語源は?

次に「焼けぼっくい」の語源を確認しておきましょう。「焼けぼっくいに火が付く」を略したものだと説明しましたが、では「焼けぼっくい」の「ぼっくい」とは何のことでしょうか。

ぼっくい」とは「木の棒」のことです。「ぼっくい」はもともと「棒杭」(ぼうくい)と呼ばれ、時代とともに音が変化して「ぼうくい」が「ぼっくい」となりました。「焼けぼっくい」は、木の棒が燃えて残ったもののことです。

ぼっくいは燃え残ると炭化し、いったん火が消えたとしてもいつまた燃え出してもおかしくない状態となります。そのことが、一度は途絶えた関係、特に男女の仲が再び修復するときに例えられました。「恋は炎のように燃え上がる」とはよく言ったものですよね。

「焼けぼっくい」の使い方・例文

「焼けぼっくい」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.一度は別れた二人だったが、焼けぼっくいに火が付いて復縁した。
2.久々に参加した同窓会で陽奈子と再会して、焼けぼっくいに火が付いた。
3.あいつら、男の方が浮気して前に別れたけど、焼けぼっくいとやらでまた付き合いだしたよ。

すべて復縁する、または復縁しそうなシチュエーションですよね。「焼けぼっくい」はそういった場面で活躍する言葉です。1と2が「焼けぼっくい」の後ろに「~に火が付く」が合わさった形、3は「焼けぼっくいに火が付く」を略して「焼けぼっくい」と言った形の例文として挙げました。

ちなみに「焼けぼっくいには火が付きやすい」という表現もあります。「かつて縁があった者同士は一度別れても元の関係に戻りやすい」という意味です。「焼けぼっくい」の使い方のレパートリーの1つとして、覚えておいて損はありません。

\次のページで「「焼けぼっくい」の類義語は?違いは?」を解説!/

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