今回は「デンプンの分解」について詳しく勉強していこう。

デンプンはグルコースという単糖がつながってできた多糖で、鎖のような構造をしているんです。消化酵素はこの鎖を切るハサミのようなはたらきをしているぞ。

ご飯にも含まれるデンプンの消化の仕組みについて生化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.デンプンとは

デンプンといえばお米などの炭水化物に含まれている物質であり、炭素を含む有機物ですね。デンプンは植物が光合成をして根や実などに蓄えたものを指す場合もあれば、それを精製して得た製品そのものを指すこともあるでしょう。カタクリという植物を原料とする片栗粉(ただし現在は馬鈴薯を原料とするものが流通のメインとなっている)やお菓子作りなどに用いられるトウモロコシ由来のコーンスターチなどが知られています。

1-1.デンプンの糊化

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米を炊いてご飯になるように、デンプンに水を加えて加熱すると白く硬かった米は透明感とツヤが出てふっくらとしたご飯に変化しますね。それと同時にパラパラの状態から粘り気のある状態へと変化します。これがデンプンの糊化(こか)です。アルファ化と呼ばれることもありますよ。

1-2.デンプンの老化

デンプンの変化としてもう1つ知っておきたいのが老化(ベータ化)です。ご飯を炊いた後に放置してしまうとどんな変化が起こるか知っていますか?柔らかかったご飯は水分を失って固くなり、表面はパサパサになってしまいますよね。生米ほどではないものの、消化しにくい状態といえるでしょう。

\次のページで「2.糖類の分類」を解説!/

2.糖類の分類

デンプンは分子式 (C6H10O5)n で表される高分子化合物です。これは C6H10O5 のまとまりが鎖状につながっていることを意味しています。炭水化物といえばブドウ糖(グルコース)を連想する人も多いでしょうが、これは分子式 C6H12O6 という構造を持つ単純な糖(単糖)です。デンプンをはじめとする多くの糖質は、このような単糖がいくつもつながってできる多糖構造をとっています。

image by Study-Z編集部

このように、糖類は単糖類・少糖(オリゴ糖)類・多糖類のように分類されます。基本となる分子1つからなるものが単糖類2つ以上の少数が結合してできたものが少糖類です。また「少ない」を意味するギリシャ語を用いてオリゴ糖と呼ばれたりしますよ。デンプンはこれらの糖がより長くつながってできた構造をしていて、数多くの分子からなるので多糖類に分類されます。それゆえに高分子化合物の1つでもあるのです。

セルロース、ガラクトース、スクロース、フルクトース…このようにオ(母音)ースとよばれる物質は糖類(炭水化物)であり、これらのいずれかに分類されると考えていいでしょう。

3.デンプンの分解

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デンプンは先述のとおりお米に含まれる糖類・炭水化物であり、私たちのパワーの源ですよね。「ちゃんとご飯を食べなさい、食べないと力が出ないよ!」なんて言われるのもこのためです。

ところで、「疲れたときには甘いものが一番」「集中した後は糖分補給しなきゃ」「勉強前にはチョコが効く」ということは聞いたことがありますか?実際に「勉強前にオススメのチョコレート」「糖分補給のブドウ糖タブレット」などが売られていますよね。これらの商品は本当に効果があるのでしょうか。それにはデンプンの消化が大きく関わっているのです。

\次のページで「3-1.消化酵素による消化・分解」を解説!/

3-1.消化酵素による消化・分解

食物に含まれるデンプンはデンプンのまま消化吸収されるのではありません。まず唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素によって麦芽糖(マルトース)に分解されます。長い鎖状の分子が二糖類である麦芽糖になるまで、細かく切られていく過程です。よく噛んで食べましょうといわれるのは、ごくんと飲み込むまでにできるだけ分解を進めるためということなのですね。口の中で麦芽糖になり切れなかったデンプンは、十二指腸で完全に麦芽糖へと分解されます。アミラーゼはすい臓から出るすい液にも含まれており、腸内でも作用するのです。

こうして小さな分子になった麦芽糖が小腸までやってくると、小腸壁から分泌されるマルターゼという消化酵素がはたらきます。麦芽糖は単糖類であるブドウ糖に分解されて最小単位の糖類となり、ようやく吸収できるようになるのです。

3-2.ブドウ糖の吸収

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ブドウ糖小腸の内側の柔毛から吸収されます。柔毛は無数のヒダでできていて、その中にある毛細血管からブドウ糖は吸収されるのです。吸収されたのちは肝臓に運ばれ、一部は肝臓でグリコーゲンという物質に姿を変えて蓄えられます。(このグリコーゲンは動物デンプンともよばれる多糖類です。せっかく分解したのに、また分子をつなげて蓄えるなんて不思議ですよね。しかし体内にエネルギーを保存しておくにはまとまっているほうが都合がいいのかもしれませんね。)残りのブドウ糖は全身に送られ、私たちの運動や生命維持活動のためのエネルギーとして細胞へ届きます。

デンプンは麦芽糖、ブドウ糖と小さな分子に分解されることで本当の意味で体内に吸収されるようになるということです。つまり、体がエネルギー源として欲しているのはブドウ糖であるといえるでしょう。

3-3.疲れたときには甘いものを

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さあ、もうお分かりですね。体がエネルギーを欲しているとき、疲れているときにはブドウ糖を補給してあげるのが一番です。食べてからエネルギーとして利用されるまでの時間を少しでも短くしようとするなら、ブドウ糖タブレットのようなものがいいでしょう。甘みのあるラムネのようなものなので、食べやすく作られています。運動前後などミネラルを補給したいときにはブドウ糖入り塩タブレットのようなものもいいですね。

また、甘いお菓子には砂糖(ショ糖・スクロース)が含まれていて、体内に入るとブドウ糖と果糖に分解されて吸収されます。これもよりスピーディーで効率よくブドウ糖を補給するには最適です。さらにチョコレートにはリラックス効果や学習能力をアップさせる効果があるとされています。勉強前後や休憩に甘いものを食べるのは理にかなっているということがわかりましたね。

消化酵素は糖の鎖を断ち切るハサミ

デンプンは多数の単糖がむすびついてなる多糖類です。口から入ったデンプンはアミラーゼによって麦芽糖へ分解され、さらに腸内でマルターゼによってブドウ糖へと変わります。このブドウ糖がヒトの体にとってのエネルギーとなり、使われたり蓄えられたりするのです。これと同様、タンパク質も長い鎖からペプチドとよばれる短い分子になり、最終的にはアミノ酸へと分解されます。これにも消化酵素の存在が欠かせません。炭水化物・タンパク質・脂質など基本的な食物の消化の過程については消化酵素を合わせて覚えておきましょう。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

3分で簡単「デンプンの分解」消化酵素のはたらきとは?元塾講師がわかりやすく解説

3-1.消化酵素による消化・分解

食物に含まれるデンプンはデンプンのまま消化吸収されるのではありません。まず唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素によって麦芽糖(マルトース)に分解されます。長い鎖状の分子が二糖類である麦芽糖になるまで、細かく切られていく過程です。よく噛んで食べましょうといわれるのは、ごくんと飲み込むまでにできるだけ分解を進めるためということなのですね。口の中で麦芽糖になり切れなかったデンプンは、十二指腸で完全に麦芽糖へと分解されます。アミラーゼはすい臓から出るすい液にも含まれており、腸内でも作用するのです。

こうして小さな分子になった麦芽糖が小腸までやってくると、小腸壁から分泌されるマルターゼという消化酵素がはたらきます。麦芽糖は単糖類であるブドウ糖に分解されて最小単位の糖類となり、ようやく吸収できるようになるのです。

3-2.ブドウ糖の吸収

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ブドウ糖小腸の内側の柔毛から吸収されます。柔毛は無数のヒダでできていて、その中にある毛細血管からブドウ糖は吸収されるのです。吸収されたのちは肝臓に運ばれ、一部は肝臓でグリコーゲンという物質に姿を変えて蓄えられます。(このグリコーゲンは動物デンプンともよばれる多糖類です。せっかく分解したのに、また分子をつなげて蓄えるなんて不思議ですよね。しかし体内にエネルギーを保存しておくにはまとまっているほうが都合がいいのかもしれませんね。)残りのブドウ糖は全身に送られ、私たちの運動や生命維持活動のためのエネルギーとして細胞へ届きます。

デンプンは麦芽糖、ブドウ糖と小さな分子に分解されることで本当の意味で体内に吸収されるようになるということです。つまり、体がエネルギー源として欲しているのはブドウ糖であるといえるでしょう。

3-3.疲れたときには甘いものを

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さあ、もうお分かりですね。体がエネルギーを欲しているとき、疲れているときにはブドウ糖を補給してあげるのが一番です。食べてからエネルギーとして利用されるまでの時間を少しでも短くしようとするなら、ブドウ糖タブレットのようなものがいいでしょう。甘みのあるラムネのようなものなので、食べやすく作られています。運動前後などミネラルを補給したいときにはブドウ糖入り塩タブレットのようなものもいいですね。

また、甘いお菓子には砂糖(ショ糖・スクロース)が含まれていて、体内に入るとブドウ糖と果糖に分解されて吸収されます。これもよりスピーディーで効率よくブドウ糖を補給するには最適です。さらにチョコレートにはリラックス効果や学習能力をアップさせる効果があるとされています。勉強前後や休憩に甘いものを食べるのは理にかなっているということがわかりましたね。

消化酵素は糖の鎖を断ち切るハサミ

デンプンは多数の単糖がむすびついてなる多糖類です。口から入ったデンプンはアミラーゼによって麦芽糖へ分解され、さらに腸内でマルターゼによってブドウ糖へと変わります。このブドウ糖がヒトの体にとってのエネルギーとなり、使われたり蓄えられたりするのです。これと同様、タンパク質も長い鎖からペプチドとよばれる短い分子になり、最終的にはアミノ酸へと分解されます。これにも消化酵素の存在が欠かせません。炭水化物・タンパク質・脂質など基本的な食物の消化の過程については消化酵素を合わせて覚えておきましょう。

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