
実際のクローン技術とはどのようなものかを生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。
ライター/オリビン
理系の大学院を卒業してから医学部の実験助手として働いている。遺伝子解析をメインとした実験をしているため、分子生物学の知識が豊富。
クローン技術とは

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クローン技術と聞くと、自分と全く同じヒトを作り出す事ができる技術という認識の人は多いと思います。実際はその認識で概ね正解です。もう少し専門的な言い方をすると、「遺伝的に同じ個体を作り出す技術」といえますね。クローンは科学技術を使わなくても自然界の無性生殖では普通に行われています。例えば、単細胞生物は分裂によって個体を殖やしますが、この時殖えた個体は元の個体と全く同じDNAを持っているんです。その他にも、挿し木やじゃがいもの塊茎も同じDNAの個体が作られる殖え方なので、殖えた個体は元の個体のクローンと言えるでしょう。
有性生殖でクローンが生まれることはありえないため、有性生殖を行う生物でもクローンが生まれるように人工的に操作する技術がクローン技術なんです。クローン技術は家畜の改良を進めるための大きな可能性として期待されています。この技術によって良質な肉や乳量の多い牛を作れるかもしれないのです。
体細胞クローン技術

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未受精卵に体細胞の核を移植させることでクローン動物を作る技術です。現在主流になっているクローン技術は体細胞クローン技術なんですよ。はじめは体細胞からの核では子どもを作ることが不可能とされていましたが、核移植技術の向上により可能となりました。体細胞の核を使用するため、用意した受精卵の数だけ無限にクローンを作成できると言われています。
受精卵クローン技術

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未受精卵に他の個体同士の受精卵からの核を移植させることでクローンを作る技術です。同じ遺伝子をもつ動物を一度に複数作成することができます。いわば人工的に双子や三つ子を作れるのです。しかし、受精卵を卵割させて分かれた細胞の核を使用するため、一度に作成できるクローンの数には限りがあります。
クローン技術の歴史
1997年に成体の体細胞からクローン羊であるドリーが誕生したことを知っていますか?この時は誰もがクローン技術なんて不可能だと思っていましたが、核移植技術の発展により可能になりました。
なぜ不可能だと思われていたかというと、クローンの研究が始まったばかりの頃は体細胞の核を受精卵へ入れることでクローンを作ろうとしていたからです。体細胞の核が入った受精卵は体細胞クローンと呼ばれ、もともとその体細胞があった臓器にしか分化しないため、こそから子どもを作ることはできないとされてきました。
しかし、体細胞核の移植技術はどんどん発展していったため、体細胞クローンから子どもを作れるようになりました。
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