この記事では「脂が乗る」について解説する。
端的に言えば、脂が乗るの意味は「調子が出て仕事や勉強がはかどる」ことです。ビジネスシーンでも出てくる表現だから、使い方をマスターして使いこなせるようにしよう。「脂」と「油」の違いもあわせて説明します。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「脂が乗る」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「脂が乗る」の意味・語源・例文など

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さっそく「脂が乗る」の意味と語源を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「脂が乗る」の意味

まずは辞書で「脂が乗る」の意味をチェックしましょう。

1 魚や鳥などが季節によって脂肪が増え、味がよくなる。
2 調子が出て仕事や勉強がはかどる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「脂が乗る」

魚などが体内に脂肪を蓄えると風味や甘みが増しておいしくなります。これが「脂が乗る」の元の意味です。そこから転じて「調子が出て仕事や勉強がはかどる」という意味になりました。

「脂が乗る」の語源

産卵の前や、水温が下がってきたときなど、魚は体内に脂肪を蓄えます。脂肪がたくさん蓄えられた魚、つまり脂が乗った魚は風味が増し、食べごろになりますね。人間の場合は30代、40代になり、知識や経験を積んで成熟すると仕事もはかどるようになります。これを「脂が乗る」と表現するようになったのです。

「脂が乗る」の例文

次に「脂が乗る」の例文で使い方を見てみましょう。

1.新鮮で脂が乗ったサンマは、目が澄んでいて、口の先端が黄色く、頭の後ろが盛り上がっている。
2.彼は若手落語家の中でも早くから頭角を現していた。最近は古典だけでなく新作落語も評価が高く、ますます脂が乗っているようだ。
3.デビューして10年、新聞や週刊誌の連載はいずれも人気があり、彼女は今、作家として最も脂が乗っているといっても過言ではない。

\次のページで「「脂」と「油」はどう違う?」を解説!/

最初の例文は、脂の乗ったサンマの見分け方についてです。「脂が乗る」の元の意味を使った例文ですよ。サンマは安くておいしい秋の味覚ですが、近年は不漁続きで価格が高騰していますね。2番目の例文は、落語家としてとても勢いがあるという意味です。3番目の例文は、作家としての仕事ぶりがとても充実しているという意味ですね。

「脂」と「油」はどう違う?

「脂」と「油」の違いをご存じでしょうか。「脂」常温で個体です。バターや牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)など動物性油脂が多いのですが、例外としてココナッツオイルなど植物性油脂もあります。

一方で「油」常温で液体です。ごま油やオリーブオイルなど植物性油脂が多いですね。ちなみに魚油(ぎょゆ)は動物性油脂ですが、常温では液体なので「油」です。しかし「あぶらが乗った魚」というときは「油」ではなく「脂」と書きますよ。

「脂が乗る」の類義語

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「脂が乗る」と似たような意味を持つ言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。「調子が出て仕事や勉強がはかどる」という意味の類義語について見ていきましょう。

「順風満帆(じゅんぷうまんぱん)」:物事が順調に進む

「満帆」は「まんぽ」ではなく「まんぱん」と読みます。「順風満帆」は「帆に風をいっぱい受けて、船が順調に進む」という意味です。転じて「物事が順調にうまくいく」という意味になりました。「順風に帆を揚げる」ともいいますよ。

\次のページで「「波に乗る」:勢いに乗る」を解説!/

「波に乗る」:勢いに乗る

「波」という言葉には、海や川の波から転じて「個人では対応できない変化が次々に起きる」というがあります。そこから「波に乗る」は、「時代の流れにうまくあって栄える」「勢いに乗る」という意味ができました。

「水を得た魚(うお)のよう」:生き生きと活躍する

「魚」は「さかな」ではなく「うお」と読みます。「水を得た魚のよう」「その人に合った場所で、生き生きと活躍する」という意味です。「彼女は転職してから水を得た魚のように元気になった」というふうに使います。

「脂が乗る」の反対語

「脂が乗る」と反対の意味を持つ言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「頭打ち」:それ以上、上がらなくなる

「頭打ち」は相場用語で「ずっと上がっていた相場が、それ以上、上がらなくなる」という意味です。転じて「それまで上昇したり向上したりを続けていた物事が上限に達して、これ以上、上がらなくなる」という意味になりました。

「足踏みする」:停滞する

「足踏み」は、両足で交互に地面の同じ場所を踏むことです。転じて「物事の進行が停滞し、同じような状態が続く」という意味になりました。「雨天が続き、工事は足踏みしている状態だ」などといった使い方をします。

「脂が乗る」の英訳

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英語では「脂が乗る」はどのように表現するのでしょうか。「調子が出て仕事や勉強がはかどる」という意味の英訳について見ていきましょう。

「in full swing」:調子が出ている

「in full swingは仕事などが「最高潮で」「調子が出ている」という意味です。

\次のページで「「in one’s prime」:脂が乗る」を解説!/

The business is now in full swing.
事業は今、脂が乗っている。

「get into the swing of」は「仕事などの調子をつかむ」、「go with a swing」は「会や仕事などが成功裡に進む」という意味で、「in full swing」「パーティや仕事などが最高潮で」「調子が出ている」という意味です。

「in one’s prime」:脂が乗る

「in one’s prime「脂が乗る」「働き盛りで」という意味です。

He is now in his prime.
彼は働き盛りだ。

「prime」は、形容詞としては「最も重要な」「最初の」「最適な」などの意味があり、名詞としては「最高に脂が乗った状態」「全盛期」などの意味があります。

「脂が乗る」を適切に使いこなそう!

この記事では、「脂が乗る」の意味を調べ、例文や類義語などを解説しました。

「脂が乗る」のもともとの意味は「魚などが体内に脂肪を蓄えると風味や甘みが増しておいしくなる」ことでした。そこから転じて「調子が出て仕事や勉強がはかどる」という意味になりました。調子が出て仕事や勉強がはかどるのはよいことですが、食べ過ぎでおなかに脂が乗ることはあまりよいこととは言えませんので注意しましょう。

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「脂が乗る」の意味は?「脂」と「油」の違いは?語源・例文・類義語も日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「脂が乗る」について解説する。
端的に言えば、脂が乗るの意味は「調子が出て仕事や勉強がはかどる」ことです。ビジネスシーンでも出てくる表現だから、使い方をマスターして使いこなせるようにしよう。「脂」と「油」の違いもあわせて説明します。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「脂が乗る」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「脂が乗る」の意味・語源・例文など

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さっそく「脂が乗る」の意味と語源を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「脂が乗る」の意味

まずは辞書で「脂が乗る」の意味をチェックしましょう。

1 魚や鳥などが季節によって脂肪が増え、味がよくなる。
2 調子が出て仕事や勉強がはかどる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「脂が乗る」

魚などが体内に脂肪を蓄えると風味や甘みが増しておいしくなります。これが「脂が乗る」の元の意味です。そこから転じて「調子が出て仕事や勉強がはかどる」という意味になりました。

「脂が乗る」の語源

産卵の前や、水温が下がってきたときなど、魚は体内に脂肪を蓄えます。脂肪がたくさん蓄えられた魚、つまり脂が乗った魚は風味が増し、食べごろになりますね。人間の場合は30代、40代になり、知識や経験を積んで成熟すると仕事もはかどるようになります。これを「脂が乗る」と表現するようになったのです。

「脂が乗る」の例文

次に「脂が乗る」の例文で使い方を見てみましょう。

1.新鮮で脂が乗ったサンマは、目が澄んでいて、口の先端が黄色く、頭の後ろが盛り上がっている。
2.彼は若手落語家の中でも早くから頭角を現していた。最近は古典だけでなく新作落語も評価が高く、ますます脂が乗っているようだ。
3.デビューして10年、新聞や週刊誌の連載はいずれも人気があり、彼女は今、作家として最も脂が乗っているといっても過言ではない。

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