この記事では「肌身離さず」について解説する。

端的に言えば「肌身離さず」の意味は「物を大切にする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「肌身離さず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。大学生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で、慣用句を分かりやすく説明する。

「肌身離さず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「肌身離さず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肌身離さず」の意味は?

「肌身離さず」には、次のような意味があります。

常に身につけて離さずに。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「肌身離さず」

「肌身離さず」の意味は、漢字を見ていただければ想像しやすいですね。「肌」や「身」つまり自分の体から常に離さないくらい、ものを大切にするという意味になります。

体から離さないという意味であるのならば、「肌」か「身」のどちらかでいいのではないかと疑問に思いませんか?

「肌」とは、ご存じの通り人間の体全体を包み込んでいる皮膚のことです。「身」とは、その中身のにあたる肉体のことですね。つまり、「肌から離さない」にした場合魂や中身のない皮膚の状態を指すことになり、大切なものを扱っているという印象に欠けます。反対に、「身から離さない」にした場合「もの」と「身」の間にある「皮膚」を除外してしまっているため、少しも離さずに寄り添うような印象が欠けるということが分かりますね。どちらの場合にも意味は通じますが、少し意味合いが弱まるということです。

以上のことから、「肌身離さない」という慣用句は自分が大切に思っているものを常に自分のそばから離さないという印象を強調するために、「肌」と「身」のどちらも用いていることがお分かりいただけたかと思います。

「肌身離さず」の使い方・例文

「肌身離さず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「肌身離さず」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.当社の会員カードを発行していただくと、各店舗にご来店の際商品を格安の価格でご購入いただけるサービスや便利な情報がお客様に届くシステムとなっておりますので、肌身離さずお持ちください。
2.会社の上司は多忙でなかなか家に帰ることが出来ていないようだが、通勤前に家族の写真をお守りとしてスーツの胸ポケットにいれて、肌身離さず持ち歩いている家族思いの人だ。
3.個人情報が無断でサイトに転載される悪質な詐欺が増加しているので、やむを得ず個人情報が記録されている文書やデータを持ち歩く際には肌身離さず、日常的に存在を確認する様に癖付けてください。

以上のように「肌身離さず」は個人情報や自分にとって大切なものを紛失しないようにするために、なるべく自分のそばから離さないようにするというニュアンスを含んでいる言葉だということがお分かりいただけるかと思います。

また、いくら自分にとって大切なものといっても用いるのは所有物にむける時のみであり、人に対して使うことはありません

なぜなら「離さず」は、「離れない」ではなく「離さない」からです。人に対して「離さない」という言葉を使ってしまうと単なる独占欲となり相手を自分の所有物として扱ってしまうことになります。

なので、「肌身離さず」という言葉は自分の所有物に対してのみ使うようにしましょう。

「肌身離さず」の類義語は?違いは?

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「肌身離さず」とは、「大切なものを離さずに常に持ち歩く」という意味があると説明してきました。同じ様子を指すその他の言葉はあるのでしょうか?

ここからは「肌身離さず」の類語や違いを見ていきましょう。

「手放さない」

「手放さない」は、言葉の通り自分の手から離さないようにしっかりと持っておくという意味ですね。「手」も、「肌」と「身」から成り立っているものなので基本的には意味も使い方も同じです。

あえて違いを取り上げるとすれば、「手放さない」よりも「肌身離さず」の方が「肌」と「身」を分けて強調しているだけあり、密着感が強い印象でより大切に持っておくという意味合いがあります。

「帯同する」

少し使い方が異なる例も紹介します。

「帯同する」は、自分を行動の主軸において人を連れていくという意味で用いられる言葉です。「肌身離さず」と違う点は人を連れ立って歩くという時にのみ用いられ、「物を帯同する」とは使わないという所。つまり、「もの」に対して使う「肌身離さず」と「人」に対して使う「帯同する」とでは使う状況、使い方が異なるということです。

しかし、「肌身離さず」も「帯同する」も自分に主導権があるという点で意味が共通します。

「帯同する」において行動の主軸が相手にある場合には、自分は相手に対して「同行する」という言葉を用いるので注意しましょう。

\次のページで「「肌身離さず」の対義語は?」を解説!/

「肌身離さず」の対義語は?

「肌身離さず」の意味の反対は、そのまま考えれば物を放置したり乱雑に扱うことですね。

それでは「肌身離さず」の対義語を見ていきましょう。

「捨て置く」

「捨て置く」は、「捨てておく」や「放っておく」という意味で用いられる言葉です。

「大切にする」や「傍に置いておく」とは正反対の意味を表すことが分かりますね。このように「捨て置く」は、ただ「捨てる」だけでなく「構わずに放っておく」という意味合いも含むことによって「肌身離さず」と反対の意味を表すことになります。

また「肌身離さず」が物を対象にした時しか使わないように、「捨て置く」も「人を捨て置く」という風に用いることはありません

 

「置き去りにする」

「肌身離さず」も「捨て置く」も、物を対象にした時のみに用いられる言葉でした。

ここではもう一つ、「放っておく」や「捨てる」などを表す際に人と物のどちらにも用いることの出来る言葉も紹介します。

「置き去りにする」とは、人や物をその場に残したまま行ってしまうことを指す言葉。

このように「捨て置く」とは異なり人に対しても用いることが出来ますが、対象になる人は子供や老人など、自分が相手の人生を扶養している場合に用いることが多いです。

一人で生きていくことが出来るほどの経済力やその他の能力がない人の元から突然去るということは、その人の存命を見捨てるということになりますね。反対に、お互いが自立している関係性の場合には離れても「置き去りにする」という表現にはなりません。

以上のことから、「置き去りにする」とは人に対しても用いることが出来る言葉ですが自分が相手の人生の責任を負っている、つまり主導権がある場合においてのみ表現することが好ましいということが分かります。

「捨てる」や「放っておく」という言葉自体が自分を主軸においた行動を指す表現なので、人に対して用いる場合はどうしても経済的・社会的立場が関係してくるということですね。

 

 

「肌身離さず」を使いこなそう

この記事では「肌身離さず」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「肌身離さず」とは大切なものを常に持ち歩くという意味があることが分かりましたね。

行動の主軸が自分にあるのか、相手にあるのかということで表現する言葉が変わるということは日本語の面白いところなのではないでしょうか?

自分に主導権がある時と相手に主導権がある時によって使う言葉を変えることが出来るようになると、言葉の表現の幅が広がりますよね。

「肌身離さず」を使いこなして、身の周りの物を大切にしましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「肌身離さず」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「肌身離さず」について解説する。

端的に言えば「肌身離さず」の意味は「物を大切にする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「肌身離さず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。大学生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で、慣用句を分かりやすく説明する。

「肌身離さず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「肌身離さず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肌身離さず」の意味は?

「肌身離さず」には、次のような意味があります。

常に身につけて離さずに。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「肌身離さず」

「肌身離さず」の意味は、漢字を見ていただければ想像しやすいですね。「肌」や「身」つまり自分の体から常に離さないくらい、ものを大切にするという意味になります。

体から離さないという意味であるのならば、「肌」か「身」のどちらかでいいのではないかと疑問に思いませんか?

「肌」とは、ご存じの通り人間の体全体を包み込んでいる皮膚のことです。「身」とは、その中身のにあたる肉体のことですね。つまり、「肌から離さない」にした場合魂や中身のない皮膚の状態を指すことになり、大切なものを扱っているという印象に欠けます。反対に、「身から離さない」にした場合「もの」と「身」の間にある「皮膚」を除外してしまっているため、少しも離さずに寄り添うような印象が欠けるということが分かりますね。どちらの場合にも意味は通じますが、少し意味合いが弱まるということです。

以上のことから、「肌身離さない」という慣用句は自分が大切に思っているものを常に自分のそばから離さないという印象を強調するために、「肌」と「身」のどちらも用いていることがお分かりいただけたかと思います。

「肌身離さず」の使い方・例文

「肌身離さず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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