この記事では「舌が回る」について解説する。
端的に言えば舌が回るの意味は「すらすらとよどみなくしゃべること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「舌が回る」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ヤマトススム
10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。
「舌が回る」には、次のような意味があります。まずは、国語辞典の意味をチェックして正確な意味をつかんでから、詳しい意味まで見ていきましょう。
1.よどみなくしゃべる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「舌が回る」
「舌が回る」は、しゃべること全般についてレベルが高いということです。「舌が回る」という表現から、量的なものや質的なものや正確性などのレベルが高いということにつながります。
具体的には、しゃべる量が多いことから「たくさんしゃべること」、しゃべる質が高いことから「巧みにしゃべること」、しゃべる発音が正しいことから「正確にしゃべること」などがありますよ。
次に「舌が回る」の語源を確認しておきましょう。
「舌が回る」は、「回る」の意味がもとになっている慣用句です。「回る」には、よく動く、よく働くといった意味があります。そのため、「舌が回る」で「舌がよく動く、舌がよく働く」という意味合いにつながっていますよ。
よく動く舌ということから、たくさん動くことや質的によく機能しているという意味合いなど、様々な意味合いを含んでいます。
\次のページで「「舌が回る」の使い方・例文」を解説!/
「舌が回る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.彼は細胞分裂関連の基盤研究を国際的な学会で発表したが、英語でもよく舌が回っていた。
2.液体を充填する過程で成分を解析する新製品のプレゼンについて、よく舌が回る部下に任せた。
3.舌が回るかどうかは、個人の体質的な特性や素質もあるが、性格のほか家族や仲間の中でどういう役割を担う存在であるかによるところも大きい。
いずれの例文でも、舌がよく動いていることが伝わる文です。
例文1.は、英語でも舌が回るということから、正しく流暢にしゃべっているようすがわかります。例文2.のほうは、また違ったニュアンスであり、製品の説明をすることから、巧みにしゃべるという意味合いで使われていますね。
最後の例文3.は、「舌が回る」の様々な意味合いが込められた文です。身近な人とどんな会話をしてどう反応するかという日常が影響するので、舌が回るようになるかどうかは環境も重要な要素になります。
「舌が回る」の類義語には、「懸河の弁(けんがのべん)」があります。意味は、水を上から流すように、とどこおりなく話すことです。「懸河」は勢いよく流れる川のことを表していることから、激しく流れていく水のように流暢に話すという意味につながっています。
なお、「立て板に水(たていたにみず)」ということわざも全く同じ意味であり、語源もほぼ同じで立てかけてある板に流れ落ちていく水に例えていますよ。
\次のページで「「弁が立つ」」を解説!/
もう一つの類義語には、「弁が立つ(べんがたつ)」があります。しゃべることがうまい、雄弁であるという意味です。「弁」は話したり説明したりすること、「立つ」は技能などが優れているという意味があることから、話すことがうまいという意味につながっています。
「舌が回る」には幅広い意味がありましたが、「弁が立つ」はそのうちの「巧みしゃべること」にあたる意味合いを表す慣用句です。
次に、「舌が回る」の対義語についての説明です。対義語については、うまく話すことができないという意味合いの表現について詳しく見ていきましょう。
「舌が回る」の対義語には、同じ「舌」を含む「舌がもつれる(したがもつれる)」があります。思い通りにしゃべることができないようすという意味です。「もつれる」ということから、しゃべろうとしても舌が思うように動いてくれない状況を表しています。
その原因としては、体調や病気による可能性もありますが、主には、驚きや焦りなどの感情によるもの、もともとしゃべることが得意でないことなどがありますよ。
もう一つの対義語には、「言いよどむ(いいよどむ)」があります。すらすらと言葉が出ずに口ごもることとという意味です。「よどむ」は「淀む」とも書き、水や空気がとどこおっていることから物事がうまくすすまないという意味につながっています。
舌がうまく動いてくれないという場合にも使われますが、よい言い方が思いつかなかったり、内容が言いづらいために言うかどうかをためらっている場合にも使われる表現です。
「舌が回る」の英訳には、「talk a lot」があります。意味は「よくしゃべる」ということで、量的に多いことを表す表現です。基本は「She talks a lot.(彼女はよくしゃべる)」として使いますが、強調するときには「He does talk a lot.(彼は実によくしゃべる)」と「do」を使用した表現もあります。
その他、「speak … fluently」は、言語を流暢に話すという意味です。「My father speaks English fluently.(私の父は英語流暢に話す)」といった使い方になります。
\次のページで「「舌が回る」を使いこなそう」を解説!/
今回の記事では「舌が回る」の意味・使い方・類語などを説明しました。
「舌が回る」の基本の意味は、すらすらとよどみなくしゃべることです。この慣用句は、しゃべることに関してレベルが高いということで、さまざまな要素を含んでいます。その要素を分類すると、「たくさんしゃべること」「巧みな物言いであること」「正確に話すこと」などです。