この記事では「上前をはねる」について解説する。

端的に言えば上前をはねるの意味は「取り次いだ代金の一部をかすめとること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学部卒の現役webライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「上前をはねる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「上前をはねる」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「上前をはねる」の意味や語源・使い方まとめ

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上前をはねる」は(うわまえをはねる)と読みます。主に、ビジネスや売買のシーンで使われることが多い慣用句です。それでは早速「上前をはねる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「上前をはねる」の意味は?

まずは「上前をはねる」の意味を、辞書からの引用で確かめていきましょう。

1.取り次ぐ代金(品物など)の一部分を(黙って)自分のものにする。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「上前をはねる」

2.他人に取り次ぐ賃金や代金の一部を自分のものとする。かすめとる。上前を取る。ピンはねをする。

出典:goo辞書「上前を撥ねる」

上前をはねる」とは、本来取り次ぐべき代金や商品の一部を、仲介者が自分の物にしてしまう、という意味です。「上前」とは「人の取り分の一部」のことで、「はねる」は(撥ねる)と書き、ここではかすめ取ると言う意味で使われています。つまり、売買などの間に入った仲介者が、売り手や買い手に渡すべき代金や物品を、不正にかすめとってしまうと言うことです。「ピンはねする」と言うとイメージしやすいでしょうか。「ピンはね」は俗語ですが、「上前をはねる」と同じ意味で使われており、よく知られている言葉です。

「上前をはねる」の語源は?

次に「上前をはねる」の語源を確認しておきましょう。

先述した通り、「上前」は「利益の一部」と言う意味ですが、実は江戸時代の「上米」(うわまい)と言う言葉に由来しています。「上米」とは、年貢米を運んで神領(神社の領有地)や関所を通過する際の通行料として取られていたお米のことです。年貢米の一部をかすめ取るこの行為から、「上米をはねる」と使われるようになり、「うわまい」が「うわまえ」と変化し、現在の「上前をはねる」と言う慣用句になりました。

余談ですが、日本史で登場する江戸時代の「上米の制」(あげまいのせい)とは、漢字が同じでも別物ですから注意してくださいね。

\次のページで「「上前をはねる」の使い方・例文」を解説!/

「上前をはねる」の使い方・例文

それでは「上前をはねる」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.親切面をして仕事の世話を焼いてきた友人が、紹介料だと言って上前をはねていたと知ってショックだ。
2.昔この土地を売った時、覚えのない手数料がひかれていたが、きっと上前をはねられたんだろう。
3.会員から集めた積立金の上前をはねていたことが発覚して、彼の信用はガタ落ちだ。

このように「上前をはねる」は、売買やビジネス、お金の授受のシーンで使われることが多い慣用句です。そして、たんに手数料を取るのではなく、不当に着服するという意味が含まれています。または、必要もないのに間に入って、一見は正当なふりをして手数料を取ることも「上前をはねる」と言えるでしょう。

「上前をはねる」の類義語は?

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「上前をはねる」の類義語には「ピンはね」、「頭をはねる」があります。

「ピンはね」

先ほど少し述べましたが、「ピンはね」は「上前をはねる」と同じ意味の俗語です。とても身近な言葉で、見聞きしたしたことも多いでしょう。

「ピンはね」の「ピン」は、実はポルトガル語の「pinta」から来ていると考えられています。「pinta」は「点」や「1」を表していて、賭博用語では「1」を「ピン」と言うのですが、これは現在でも使われていますね。そして、お金や儲けの一割をもらうと言う意味で「ピンはね」が使われ始めたと考えられています。このように、もともとは隠語のように使われていた「ピンはね」ですが、じょじょに庶民に伝わり、現在でも広く使われていると言うわけです。

それでは、「ピンはね」の使い方も、実際の例文で確認してみましょう。

\次のページで「「頭をはねる」」を解説!/

1.実際に振り込まれた金額は、サービス料と言う名目でピンはねされていた。

2.給料から紹介料を差し引く場合、許可を得ている紹介業者で、金額が給与の数パーセントの範囲内ならピンはねには該当しない。

「頭をはねる」

頭をはねる」もまた「上前をはねる」と同じ意味を持っており、他人に支払うべき利益の一部をかすめ取ることです。「頭をはねる」は、興行師の仲間内で使われていたと考えられています。

「頭をはねる」の例文も見ておきましょう。

直接雇われたわけではなく、下請けからの依頼だったので、日当の頭をはねられてしまった。

「上前をはねる」の対義語

「上前をはねる」の反対の意味で使う言葉は「謹厳実直」が良いでしょう。

「謹厳実直」

「謹厳実直」とは、真面目でつつしみ深く正直であると言う意味の四字熟語です。

「上前をはねる」が、取引などの仲介者として不正に利益をかすめ取ることですから、仕事や役目を「謹厳実直」にこなしている、という使い方をすると対義語としてふさわしいでしょう。では、実際に使い方を例文で確認してみましょう。

1.彼は仲介者として謹厳実直な人間だから、信用して仕事を任せたのだ。

2.この会社は、謹厳実直を社訓にしていて、不正な謝礼はびた一文も受け取らないそうだ。

\次のページで「「上前」を使ったことわざ」を解説!/

「上前」を使ったことわざ

「上前」を用いた言葉で「狸から上前」と言うことわざがあります。語彙力向上のためにも併せて覚えておきましょう。

「狸から上前」

「狸から上前」(たぬきからうわまえ)は、とてもずる賢いと言う意味です。「狸」には昔から、ずる賢く人を化かすなどの迷信がありますね。つまり、人をだます狸をだし抜いて、上前をはねるほどに悪知恵が働く、ということです。

「上前をはねる」を使いこなそう

この記事では「上前をはねる」の意味・使い方・類語などを詳しく見てきました。「上前をはねる」は主に、ビジネスや契約、金銭の授受で不正な着服があった場合に使われますから、現実には遭遇したくないシチュエーションですね。他には、家族や友人同士のちょっとした軽口で「マージンをとった」や「ピンはねした」などは使ったりしたことがあるでしょうか。お菓子を代わりに買ってきてあげたから、ひとくち「ピンはね」した、と言ったジョークならば可笑しく使えそうですね。

また、今回は「上前」に関することわざも挙げました。覚えた言葉に関連する慣用句やことわざを調べることで、よりいっそう理解が深まりますね。

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【慣用句】「上前をはねる」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒WEBライターがわかりやすく解説!

この記事では「上前をはねる」について解説する。

端的に言えば上前をはねるの意味は「取り次いだ代金の一部をかすめとること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学部卒の現役webライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「上前をはねる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「上前をはねる」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「上前をはねる」の意味や語源・使い方まとめ

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上前をはねる」は(うわまえをはねる)と読みます。主に、ビジネスや売買のシーンで使われることが多い慣用句です。それでは早速「上前をはねる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「上前をはねる」の意味は?

まずは「上前をはねる」の意味を、辞書からの引用で確かめていきましょう。

1.取り次ぐ代金(品物など)の一部分を(黙って)自分のものにする。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「上前をはねる」

2.他人に取り次ぐ賃金や代金の一部を自分のものとする。かすめとる。上前を取る。ピンはねをする。

出典:goo辞書「上前を撥ねる」

上前をはねる」とは、本来取り次ぐべき代金や商品の一部を、仲介者が自分の物にしてしまう、という意味です。「上前」とは「人の取り分の一部」のことで、「はねる」は(撥ねる)と書き、ここではかすめ取ると言う意味で使われています。つまり、売買などの間に入った仲介者が、売り手や買い手に渡すべき代金や物品を、不正にかすめとってしまうと言うことです。「ピンはねする」と言うとイメージしやすいでしょうか。「ピンはね」は俗語ですが、「上前をはねる」と同じ意味で使われており、よく知られている言葉です。

「上前をはねる」の語源は?

次に「上前をはねる」の語源を確認しておきましょう。

先述した通り、「上前」は「利益の一部」と言う意味ですが、実は江戸時代の「上米」(うわまい)と言う言葉に由来しています。「上米」とは、年貢米を運んで神領(神社の領有地)や関所を通過する際の通行料として取られていたお米のことです。年貢米の一部をかすめ取るこの行為から、「上米をはねる」と使われるようになり、「うわまい」が「うわまえ」と変化し、現在の「上前をはねる」と言う慣用句になりました。

余談ですが、日本史で登場する江戸時代の「上米の制」(あげまいのせい)とは、漢字が同じでも別物ですから注意してくださいね。

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