「尾ひれをつける」という言葉は、「話を誇張する」という意味の慣用句です。まぁ、よくない意味の言葉ですよね。今回はその「尾ひれをつける」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「尾ひれをつける」の意味や語源は?

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「話に尾ひれをつける」…という言い回し、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。ただ、意味や語源はよく分からないという人も多いかもしれませんね。そこでまずは、「尾ひれをつける」の意味や語源を解説していきます。

「尾ひれをつける」の意味は「話を誇張する」

まずは「尾ひれをつける」の意味を辞書を参考にしつつ確認していきましょう。国語辞典では「尾ひれをつける」は次のような意味が掲載されています。

事実以外のことをつけ加えて、話を誇張する。

出典:広辞苑 第七版(岩波書店)「尾鰭をつける」

「尾ひれをつける」は「事実以外の内容をつけ加えて話を誇張する」という意味の慣用句です。「事実以外の内容をつけ加えて」…つまりはウソの内容をつけ加えて…ということですね。自分を実際よりももっと良く見せたかったり、誰かを貶めたりするときに、人はウソの内容を交えて大げさに話をしてしまうものです。

なお、「尾ひれがつく」という言い方も存在します。こちらは「事実以外のことがつけ加わって話が大げさになる」という意味の、「話」が主題となっている言い方です。

「尾ひれをつける」の語源は魚の「尾」と「ひれ」

「尾ひれをつける」という言葉は、実は「尾びれ」をつけるのではありません。「尾」と「ひれ」の2つをつけるという意味なのです。この「尾」と「ひれ」が、本体に対する「付属」を意味するようになり、そこから「ありもしない事実をつけ足す」というニュアンスで「尾ひれをつける」というようになったと考えられています

なお、「尾ひれをつける」という表現は古くから使われているようです。江戸時代の初め(1603年~1604年)にキリスト教宣教師のために創刊された日本語の辞典「日葡辞書」には、「尾ひれをつける」の例文が既に掲載されています。

「尾ひれをつける」の使い方を例文とともに確認!

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次に、「尾ひれをつける」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「尾ひれをつける」は、マイナスのニュアンスで使用されることの方が多い表現です。事実にウソをつけ加えているのですから、当然と言えば当然ですよね…。

1.戦時中は交戦中の両陣営が真実に尾ひれをつけて情報を発表することが多い。発表を日本で報道する際は気をつけないといけない。
2.山田さんは話によく尾ひれをつけるから信用できない。
3.大事な報告は尾ひれをつけずに行ってほしい。

例文1では、「交戦中の両陣営が真実にウソの情報を脚色して情報を発表することが多い」という意味で「尾ひれをつける」が使用されています。戦争では自国民や他国の支持を取り付けたり、交戦相手の戦意を削ぐことが大切になるため、真実にウソを交えた情報を発信することが多いのです。

例文2では、「山田さんは話によくウソをつけ加えて大げさにするから信用できない」という意味で「尾ひれをつける」が使用されています。話にウソをつけて大げさにする人、信用されなくて当然ですよね。

例文3では、「大事な報告は誇張をせずに行ってほしい」という意味で「尾ひれをつける」が使用されています。大事な報告事項に事実以外の内容を加えることはトラブルのもとです。避けましょう。

\次のページで「「尾ひれをつける」の類義語は?」を解説!/

「尾ひれをつける」の類義語は?

次に、「尾ひれをつける」の類義語を確認していきましょう。「尾ひれをつける」の類義語は「話を盛る」と「大風呂敷を広げる」です。「尾ひれをつける」と比較をしつつ、意味などを見ていきましょう。

「話を盛る」:話を大げさにする

「話を盛る」は「話を脚色して大げさにする」という意味の慣用表現です。「尾ひれをつける」と意味の違いはありません。ただ、「話を盛る」は「尾ひれをつける」と比べると少しくだけた表現です。友人や家族に対して使うぶんには問題ありませんが、上司など目上の人に対して使うのは避けた方が良いでしょう。

「大風呂敷を広げる」:誇大なことを言う

「大風呂敷を広げる」は「実際にはできそうにない誇大なことを言う」という意味の慣用句です。「尾ひれをつける」とは事実を誇張するという点では似ていますが、「大風呂敷を広げる」はあくまで物事の計画段階で用いられる言葉ですね。実際に考えられうる計画よりも大げさに言ったり、できないことも含めてできると主張したりするような場合に、「大風呂敷を広げる」を使用します。

「尾ひれをつける」の英語表現は?

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続いて、「尾ひれをつける」の英語表現を確認していきましょう。「尾」や「ひれ」、「つける」という単語を組み合わせても絶対に「尾ひれをつける」と同じ意味やニュアンスにはなりませんよ。このような場合は慣用句の意味から英語表現を考えることが大切です。

「exaggerate」:誇張する

「exaggerate」は「誇張する、大げさに言う」という意味の英語の動詞です。「尾ひれをつける」の根幹の意味は「誇張する」ですので、翻訳として使うのには問題ないでしょう。例文は以下の通りです。

\次のページで「「embellish」:脚色する」を解説!/

1.I dislike Mr. Smith because he often exaggerates his stories.
スミス氏はよく話に尾ひれをつけるから嫌いだ。

2.Mr. Rey, who had reported to President Smith an exaggerated war situation, was removed from his post.
スミス大統領に尾ひれをつけた戦況を報告したレイ氏が更迭された。

「embellish」:脚色する

「embellish」は「装飾する」「(文章や物語などを)脚色する」という意味の英語の動詞です。「(文章や物語などを)脚色する」という意味で用いられる場合、「尾ひれをつける」と似たようなニュアンスで使われることがあります。例文を確認していきましょう。

1.Mr. Johnson later got into trouble because he reported embellished results to the president.
ジョンソン氏は社長に対し尾ひれをつけた業績を報告したため、のちにトラブルになった。

2.Ms. Julia embellishes her stories sometimes.
ジュリアさんは時々話に尾ひれをつける

大事なことは、「尾」も「ひれ」も付けずに話しましょう!

今回は「尾ひれをつける」について解説しました。「尾ひれをつける」は「事実以外の内容をつけ加えて話を誇張する」という意味の慣用句でしたね。

例文でも示しましたが、話に「尾ひれをつける」ことは他者からの信頼を失う行為です。飲みの席で話を盛り上げる場合などは例外として問題ありませんが、それ以外の場合では「尾」も「ひれ」もつけずに話をすることが大切と言えるでしょう。

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国語言葉の意味

「尾ひれをつける」の意味は?尾びれではなく「尾+ひれ」?語源や類義語も院卒日本語教師がわかりやすく解説

「尾ひれをつける」という言葉は、「話を誇張する」という意味の慣用句です。まぁ、よくない意味の言葉ですよね。今回はその「尾ひれをつける」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「尾ひれをつける」の意味や語源は?

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「話に尾ひれをつける」…という言い回し、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。ただ、意味や語源はよく分からないという人も多いかもしれませんね。そこでまずは、「尾ひれをつける」の意味や語源を解説していきます。

「尾ひれをつける」の意味は「話を誇張する」

まずは「尾ひれをつける」の意味を辞書を参考にしつつ確認していきましょう。国語辞典では「尾ひれをつける」は次のような意味が掲載されています。

事実以外のことをつけ加えて、話を誇張する。

出典:広辞苑 第七版(岩波書店)「尾鰭をつける」

「尾ひれをつける」は「事実以外の内容をつけ加えて話を誇張する」という意味の慣用句です。「事実以外の内容をつけ加えて」…つまりはウソの内容をつけ加えて…ということですね。自分を実際よりももっと良く見せたかったり、誰かを貶めたりするときに、人はウソの内容を交えて大げさに話をしてしまうものです。

なお、「尾ひれがつく」という言い方も存在します。こちらは「事実以外のことがつけ加わって話が大げさになる」という意味の、「話」が主題となっている言い方です。

「尾ひれをつける」の語源は魚の「尾」と「ひれ」

「尾ひれをつける」という言葉は、実は「尾びれ」をつけるのではありません。「尾」と「ひれ」の2つをつけるという意味なのです。この「尾」と「ひれ」が、本体に対する「付属」を意味するようになり、そこから「ありもしない事実をつけ足す」というニュアンスで「尾ひれをつける」というようになったと考えられています

なお、「尾ひれをつける」という表現は古くから使われているようです。江戸時代の初め(1603年~1604年)にキリスト教宣教師のために創刊された日本語の辞典「日葡辞書」には、「尾ひれをつける」の例文が既に掲載されています。

「尾ひれをつける」の使い方を例文とともに確認!

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次に、「尾ひれをつける」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「尾ひれをつける」は、マイナスのニュアンスで使用されることの方が多い表現です。事実にウソをつけ加えているのですから、当然と言えば当然ですよね…。

1.戦時中は交戦中の両陣営が真実に尾ひれをつけて情報を発表することが多い。発表を日本で報道する際は気をつけないといけない。
2.山田さんは話によく尾ひれをつけるから信用できない。
3.大事な報告は尾ひれをつけずに行ってほしい。

例文1では、「交戦中の両陣営が真実にウソの情報を脚色して情報を発表することが多い」という意味で「尾ひれをつける」が使用されています。戦争では自国民や他国の支持を取り付けたり、交戦相手の戦意を削ぐことが大切になるため、真実にウソを交えた情報を発信することが多いのです。

例文2では、「山田さんは話によくウソをつけ加えて大げさにするから信用できない」という意味で「尾ひれをつける」が使用されています。話にウソをつけて大げさにする人、信用されなくて当然ですよね。

例文3では、「大事な報告は誇張をせずに行ってほしい」という意味で「尾ひれをつける」が使用されています。大事な報告事項に事実以外の内容を加えることはトラブルのもとです。避けましょう。

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