この記事では「手を染める」について解説する。端的に言えば「手を染める」の意味は「物事に取り掛かること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「手を染める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「手を染める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「手を染める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「手を染める」の意味は?

「手を染める」には、次のような意味があります。

関係をもちはじめる。手をつける。「相場に―・める」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手を染める」

この言葉は「何かあることを始める、着手する。事業などに関係を持つ」という意味の慣用表現です。

「手」には、物事を始めたり、取り掛かるという意味を持つことが多く、似た慣用句として「手を付ける(取り掛かる)」「手を下す(自分で物事を行うこと)」などがあります。「着手」という言葉もありますね。合わせて押さえておきましょう。

よく使われる言い方として、「悪事に手を染める」という表現を聞いたことがあるでしょうか。「染まる」という意味から、濃い色がつく=悪事と捉えられやすいのかもしれませんが、悪いことに限定はされていないことも押さえておきましょう。悪事に関する慣用句としては「足を洗う(悪事から手を引く)」があります。「手」と「足」の類似もあるため、混同にも注意が必要です。

「手を染める」の語源は?

次に「手を染める」の語源を確認しておきましょう。これは「染める」が「初(そ)める」と同じ意味を持っていたことから作られた言葉のようです。「初」は「何かを始める」ということ。「染める」で考えれば、「色を付け始める」という意味で使われていますね。

先に述べたように「手」には「何かにとりかかる」ニュアンスを持つことも多く、「初める」と合わせて使われるようになったと考えられます。それが、染物などで染料が手について落ちなくなるイメージから「染め」に変化し、また「なかなか抜け出せない(特に悪事から)」という限定された使われ方として捉えられるようになったのでしょう。

\次のページで「「手を染める」の使い方・例文」を解説!/

「手を染める」の使い方・例文

「手を染める」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・藍染職人として名を馳せていた彼だが、仕事がなく生活に困ったという背景から、犯罪に手を染めてしまった。

・煩悩を捨てるため修行僧として山に籠っていたが、そこで学んだ様々なことを活かすため、俗世間の生活に手を染めることになった。

・仕事柄、研究者として常に運動不足で不健康だったが、空手に手を染めて以来、肌色も良くなり裸足でも生活できるほど健康になった。

何か物事を始める、着手する」という意味合いが伝わりますでしょうか。例文二番目のような使い方であれば、「関係を持つ、環境が変わる」というニュアンスも表現できるでしょう。

語源の項でも説明したように、この言葉の語源は「初め」が変化したものと考えられています。そのためもともとは「濃い色(悪いこと)に染まって、抜け出せない」という意味はなく、悪事に限定されないことが納得できるでしょう。多くの人が限定された意味で覚えていることがNHKのホームページにも掲載されるなど、よく取り上げられる話題です。試験でも出題される可能性が高いため、しっかり押さえてくださいね。

「手を染める」の類義語は?違いは?

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「手を染める」の類義語は先に述べたように「着手する」「手を付ける」がありますが、ここでは「口火(くちび)を切る」をご紹介します。

「口火を切る」

「口火を切る」は「物事を最初に始める、きっかけを作る」という意味の慣用表現です。「手を染める」も「物事を始める」という意味でしたが、こちらは「最初に」と動作の一番目であることに焦点が合っています。

例文で解説すると、「習い事を始めた(手を染めた)」という動作よりも、「彼が最初に習い始めた(口火を切った)」と、誰が最初にやったのかに注目される文章になるということ。違いを押さえておきましょう。ちなみに「口火」とは火縄銃に着火する火のこと。そのため攻撃的な印象も受ける言葉ですが、慣用句の意味自体には強い弱いのニュアンスは含まれていません。

\次のページで「「手を染める」の対義語は?」を解説!/

同窓会で恩師にお礼を言おうと口火を切ったのだが、他の皆も釣られて押しかけ、恩師とは少ししか話せないままになってしまった。

「手を染める」の対義語は?

「手を染める」の対義語は「手を引く」「手を切る」がいいでしょう。

「手を引く」「手を切る」

「手を引く」は「関わっていたことから身を退くこと。関係を断つこと」。限定はされていませんが、事業や物事から離れる時に使うことが多い言葉です。

「手を切る」は「関係を絶つこと」。こちらは特に人と人との関係に言われることが多く、男女の仲や友人など、縁を切る場面などで耳にするでしょう。「手」を使った慣用句は非常に多く、物事の始めや終わりを表現するものもたくさんです。興味があればぜひ調べてみましょう。

・長い間帰属していた漫画クラブだったが、構成しているメンバーも大きく変わってしまい、このあたりで手を引こうと思った。

・本来は悪い奴ではないのだが、どうしても自分のことしか考えられないあの旧友とは手を切ることにした。

「手を染める」の英訳は?

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「手を染める」の英語訳は「get one's feet wet」で表すことができます。

「get one's feet wet」

これは直訳すれば「~の足を濡らす」。辞書にも載っている慣用表現で、「(特に初めてのことを)試みる、参加する」という意味になります。

乾いている足を濡らすのは、汚れや失敗も気にしないでチャレンジする、ということでしょうか。「命令形で使われることが多い」と掲載している辞書もあり、英語圏の軍隊で上官が部下に使った言葉なのかもしれませんね。

\次のページで「「手を染める」を使いこなそう」を解説!/

If you want to change yourself, don't be afraid to get your feet wet.
自分を変えたいと思うのなら、始める(何かに手を染める)ことを恐れてはいけない。

「手を染める」を使いこなそう

この記事では「手を染める」の意味・使い方・類語などを説明しました。

どうしても「染める」という言葉のイメージから、「悪いことなどから手を引けない」という印象を持ってしまう慣用表現ですね。「悪事から身を引く」という意味で「足を洗う」があることもその一因でしょう。人間の手や足は、身体の先端にあって動作の始まりとなるもの。似た意味が多いことに混乱してしまわないように、しっかり覚えるようにしてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「手を染める」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

「手を染める」の使い方・例文

「手を染める」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・藍染職人として名を馳せていた彼だが、仕事がなく生活に困ったという背景から、犯罪に手を染めてしまった。

・煩悩を捨てるため修行僧として山に籠っていたが、そこで学んだ様々なことを活かすため、俗世間の生活に手を染めることになった。

・仕事柄、研究者として常に運動不足で不健康だったが、空手に手を染めて以来、肌色も良くなり裸足でも生活できるほど健康になった。

何か物事を始める、着手する」という意味合いが伝わりますでしょうか。例文二番目のような使い方であれば、「関係を持つ、環境が変わる」というニュアンスも表現できるでしょう。

語源の項でも説明したように、この言葉の語源は「初め」が変化したものと考えられています。そのためもともとは「濃い色(悪いこと)に染まって、抜け出せない」という意味はなく、悪事に限定されないことが納得できるでしょう。多くの人が限定された意味で覚えていることがNHKのホームページにも掲載されるなど、よく取り上げられる話題です。試験でも出題される可能性が高いため、しっかり押さえてくださいね。

「手を染める」の類義語は?違いは?

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「手を染める」の類義語は先に述べたように「着手する」「手を付ける」がありますが、ここでは「口火(くちび)を切る」をご紹介します。

「口火を切る」

「口火を切る」は「物事を最初に始める、きっかけを作る」という意味の慣用表現です。「手を染める」も「物事を始める」という意味でしたが、こちらは「最初に」と動作の一番目であることに焦点が合っています。

例文で解説すると、「習い事を始めた(手を染めた)」という動作よりも、「彼が最初に習い始めた(口火を切った)」と、誰が最初にやったのかに注目される文章になるということ。違いを押さえておきましょう。ちなみに「口火」とは火縄銃に着火する火のこと。そのため攻撃的な印象も受ける言葉ですが、慣用句の意味自体には強い弱いのニュアンスは含まれていません。

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