君はチャートという岩石のことを知っているか?
チャートという岩石は中学校の理科で習うぞ。ですが、チャートと一緒に習う石灰岩という岩石はチャートに似ている部分が多いため、両者を混同する人も多のです。また、チャートという岩石は露頭で見てもすぐにチャートだと判断できるものではなく、身近にあっても見逃している人がとても多のです。

今回はチャートの特徴と石灰岩との見分け方について、地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

大学院を地球科学専攻で卒業した岩石大好き人間。趣味は岩石・鉱物収集のため家中に採集した石が転がっている。

チャートとは

image by iStockphoto

チャートは主成分が二酸化ケイ素でできている堆積岩です。二酸化ケイ素は石英と同じ成分をしています。石英と同じ成分でできているということは、チャートはとても硬い岩石なんです。チャートは割とどこでも見られる岩石で、河川敷などでも拾うことができます。チャートはとても硬いため、他の岩石が川を下る間に砕けてぼろぼろになってもチャートは小石として残っていることが多いです。

チャートのでき方

チャートを作っているのは、放散虫という二酸化ケイ素の殻をもったプランクトンです。チャートは放散虫が水深3000~4000メートルの海洋底で降り積もってできます。海洋で形成されたチャートはプレートに乗って大陸まで運ばれ、大陸プレートに付加されるのです。これを付加体と呼びます。チャートは海洋底で形成されるため、大陸起源の泥などの不純物は殆どありません。

日本は付加体でできているため、いたるところでチャートの露頭を見ることができます。一見石灰岩と区別することが難しですが、ハンマーで傷をつけようとしたときに岩石の方に傷が付けば石灰岩、ハンマー側に傷が付けばチャートです。露頭でチャートを探す時はこの見分け方を覚えておきましょう。

チャートの色

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チャートは基本的に白色ですが、赤・灰色・黒・緑・褐色など様々な色があるため、それぞれが別の岩石と勘違いされることが多いです。チャートの色は不純物として何をどれくらい含んでいるかによって決まります。カラーバリエーションが多いので、色違いのチャートだけを集めても面白いですよ。

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チャートの露頭

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とても硬くて丈夫なチャートですが、露頭ではどのように見えるでしょうか?

岐阜県の南側から愛知県北部は多くのチャート露頭があります。まず岐阜県各務原市の木曽川沿いにあるチャートは赤色のチャートと緑灰色のチャートが層状になって産出しているんです。2色のチャートが層状になっている理由は、無酸素環境と貧酸素環境が交互におとずれていることを表しているからなんですよ。この層準は古生代と中生代の間にあるため、古生代と中生代の境界(P/T境界)で起こった生物の大量絶滅は極端な酸素の欠乏が原因であると言われています。

愛知県犬山市にも同じように大規模な層状チャートがあり、各務原市の層状チャートと並んで有名なチャート露頭です。

チャートと石器

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旧石器時代や縄文時代の東海地方では、チャートが石器として好んで使われていたそうです。チャートをハンマーで叩いて割ってみると、刃物のように鋭利になります。このような特徴を利用して、当時の人々は石器にしていたのですね。

ちなみに最も石器に使われている岩石は黒曜石という岩石です。黒曜石は火山ガラスといってマグマが急冷することで鉱物が結晶になれず、ガラス状に固まったものなんですよ。切れ味はガラスとほぼ同じなので取り扱いには注意しましょう。

チャートと石灰岩の見分け方

チャートと石灰岩の見分け方

image by Study-Z編集部

チャートと石灰岩は同じ堆積岩であり、両者とも基本的に白い岩石なので見分けることが難しいと思っている人が多いです。しかし、実際は全く別物で見分けることも容易なので見分け方は是非押さえておきましょう。

まず、チャートと石灰岩は主成分が全く異なっています。チャートの主成分が二酸化ケイ素という硬い物質であるのに対し、石灰岩の主成分は炭酸カルシウムです。炭酸カルシウムは酸に弱いため、石灰岩に薄めた塩酸をかけると泡を出して溶けていきます。チャートは薄めた塩酸をかけても全く無反応です。

また、チャートは非常に硬い岩石なので岩石片でハンマーをこするとハンマーに傷が付きます。一方、石灰岩片でハンマーをこすると石灰岩が削れて白い線が付くんです。基本的には以上の2点をチェックすればチャートと石灰岩の区別はつくでしょう。それでも区別が難しければ化学分析という手もありますが、大体の場合ここまでしなくても判別できます。

チャートと石灰岩が同時に見られる場所

チャートと石灰岩はどちらも海洋底堆積物によってできた岩石ですが、成分や含まれている化石は全く異なっています。基本的にこの2つが同時に産出することはありませんが、岐阜県にはチャートと石灰岩の互層があるんです。

なぜこの2つが互層になっているかについてはいろいろな議論がなされています。石灰岩は構造運動(プレート運動など)時に流動変形しやすく、この石灰岩がチャート層の層間に後から注入されたのではないかという仮説が最も有力なんだそうです。とても不思議な構造なので見に行ってみたいですね。

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放散虫とは

ではチャートの材料となっている放散虫いついてご紹介します。放散虫は海に生息するプランクトンの一種で、珪酸質の殻をもっているんですよ。珪酸質の殻はとても丈夫なので化石になりやすく、放散虫の化石は世界中で見つかっているんですよ。放散虫はアンモナイトや三葉虫のように時代によって大繁殖と絶滅を繰り返しているため、化石が含まれていた時代を決める示準化石としても利用されています。

放散虫の形はとても様々で、電子顕微鏡で撮影した放散虫は非常に美しいです。その美しさに魅せられて進化学者となった人もいます。

チャートが利用されているもの

チャートは私達の生活の中でなにかに利用されているのでしょうか?実は、チャートの工業利用はあまり一般的ではありません。理由は、チャートが硬くて加工しづらいからです。しかし、この硬さを利用して石材になることもあります。庭石や観賞魚用の砂利にも含まれているため、金魚などを飼っている人はチェックしてみましょう。

身近にチャートがあるのか調べてみよう

チャートは海洋底に降り積もった放散虫の殻で、プレート運動によって大陸まで運ばれてきたものです。チャートの材料となる放散虫は先カンブリア時代から現代まで生息している生き物で、示準化石にもなる生き物でした。日本は付加体でできているため、チャートや石灰岩といった海洋性の堆積岩をたくさん見ることができます。

チャートは日本列島全域に分布しているため、意外と身近なところに産出しているはずです。山や河川敷などはもちろん、実はコンクリートの中の小石にも紛れていることもあるんですよ。チャートは水に濡れると少し透明感が出るため、他の岩石と区別することは容易です。是非、身近にチャートがあるのか探してみましょう。

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地学岩石・鉱物理科

チャートとはどのような岩石?特徴や石灰岩との見分け方・色・利用例も地球科学専攻卒が簡単にわかりやすく解説

君はチャートという岩石のことを知っているか?
チャートという岩石は中学校の理科で習うぞ。ですが、チャートと一緒に習う石灰岩という岩石はチャートに似ている部分が多いため、両者を混同する人も多のです。また、チャートという岩石は露頭で見てもすぐにチャートだと判断できるものではなく、身近にあっても見逃している人がとても多のです。

今回はチャートの特徴と石灰岩との見分け方について、地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

大学院を地球科学専攻で卒業した岩石大好き人間。趣味は岩石・鉱物収集のため家中に採集した石が転がっている。

チャートとは

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チャートは主成分が二酸化ケイ素でできている堆積岩です。二酸化ケイ素は石英と同じ成分をしています。石英と同じ成分でできているということは、チャートはとても硬い岩石なんです。チャートは割とどこでも見られる岩石で、河川敷などでも拾うことができます。チャートはとても硬いため、他の岩石が川を下る間に砕けてぼろぼろになってもチャートは小石として残っていることが多いです。

チャートのでき方

チャートを作っているのは、放散虫という二酸化ケイ素の殻をもったプランクトンです。チャートは放散虫が水深3000~4000メートルの海洋底で降り積もってできます。海洋で形成されたチャートはプレートに乗って大陸まで運ばれ、大陸プレートに付加されるのです。これを付加体と呼びます。チャートは海洋底で形成されるため、大陸起源の泥などの不純物は殆どありません。

日本は付加体でできているため、いたるところでチャートの露頭を見ることができます。一見石灰岩と区別することが難しですが、ハンマーで傷をつけようとしたときに岩石の方に傷が付けば石灰岩、ハンマー側に傷が付けばチャートです。露頭でチャートを探す時はこの見分け方を覚えておきましょう。

チャートの色

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チャートは基本的に白色ですが、赤・灰色・黒・緑・褐色など様々な色があるため、それぞれが別の岩石と勘違いされることが多いです。チャートの色は不純物として何をどれくらい含んでいるかによって決まります。カラーバリエーションが多いので、色違いのチャートだけを集めても面白いですよ。

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