
「指をくわえる」の使い方・例文
では次に「指をくわえる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。
下の1と2は一つ目の「うらましいものの手が出せずにいる」という意味、3は二つ目の「きまり悪そうにする」という意味を使った例文です。
1.今日はどうしてもお金がなく、人気の書籍が次々とレンタルされていくのを指をくわえて見ているしかなかった。
2.新入りだからと研究会の連中に相手にされなくても、ただ指をくわえているわけにはいかない。
3.元々はオーナーと話すつもりなどなかったので、指をくわえてかげから出てきた。
「指をくわえる」で一番多いのは1の例文のような用法でしょう。これは資金がなくて自分はレンタル出来ないため、人気の書籍が次から次へと借りられていくのを手が出せず眺めている、といった意味の文ですね。元々は食べ物に対するうらやましさから生まれたこの言葉ですが、慣用句としては食べ物に限らず何に対してでも使うことが出来ます。ただ「見ているしかない」と言うよりも「指をくわえて」と表現することで、より一層飢餓感やそこから生まれる無力感が強調されているような感じがしますね。
2の例文の用法も基本的には1の例文と同じです。異なるのは1なら「指をくわえて見ている」となっている部分が、2では「指をくわえている」となっている点ですね。このように、「指をくわえて〇〇している」という風にしなくても、「指をくわえている」というそのままの形で使うことも出来ます。よく見かけるのはやはり1の用法ではありますが、こちらの使い方ももちろん違和感なく文中に置くことが可能です。前後の文章にも合わせ、シンプルな文にしたいときなどは試してみてください。
3の例文は「きまり悪そうに」という意味を使用したものですね。わかりやすいように現代文で例文を示しましたが、実際現代ではあまり使われない用法ではあります。一つ目の意味は知っていても「きまり悪そうに」という意味は知らないという人も多くいるため、こちらの意味で「指をくわえる」を使うとかえってややこしくなってしまうかもしれません。用語として個人的に意味を把握しておくのは良いことですが、必要に迫られたとき以外は使用しない方がいいかもしれませんね。
「手をこまねく」
「手をこまねく」とは「何も出来ないでいる」という意味の慣用句です。中国の敬礼が語源となっているこの言葉ですが、「したくても出来ない」というニュアンスが「指をくわえる」と非常に近いと言えるでしょう。また、キーワードが「指」「手」と体の似た部位であるところも面白いですね。
「手をこまねく」には単に「腕を組む」という意味もありますが、「指をくわえる」と異なる点で言えば「うらましい」というニュアンスを含まないところが挙げられるでしょう。たとえばショーウインドウの中の高価な洋服が欲しくて指をくわえるとは言っても、手をこまねくとは言えませんね。
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