君は石灰岩という岩石を知っているか?
小学校の理科でも登場するくらい、覚えていて欲しい岩石の一つです。石灰岩は日本中いろいろなところで産出し、石灰岩台地と呼ばれる場所は観光名所としても非常に有名です。その他にも、実は俺達の身近なものにもたくさん石灰岩が利用されているんです。

今回は石灰岩の特徴と、石灰岩によく似ているチャートとの見分け方について地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

地球科学専攻で大学院を卒業した地学大好き人間。出身大学の近くにカルスト台地があったため、石灰岩はとても身近な岩石であった。

石灰岩とは

image by iStockphoto

まずは石灰岩とは何かを説明しましょう。石灰岩は堆積岩の一つで、主成分は炭酸カルシウムです。英語ではlimestone(ライムストーン)と呼ばれます。炭酸カルシウムは石灰岩の50%以上を占めており、その他はマグネシウムやケイ素等で構成されているんですよ。基本的に白色ですが、含まれている不純物によって黒みがかっていたり黄色がかることもあります。日本では北から南まで多くの場所で産出し、現在は200以上の石灰岩鉱山が稼働しているそうです。

石灰岩はとても小さな鉱物結晶の集合体なんですよ。この鉱物は主に方解石かアラゴナイトで、石灰岩の起源や生成された環境などでどの鉱物で成り立っているかが異なります。

石灰岩が地下で熱による変成作用を受けると、結晶質石灰岩(大理石)になるんですよ。

石灰岩とチャートの違い

中学校の理科ではほぼ同時に石灰岩とチャートについて学びます。どちらも堆積岩で見た目も似ていることから「石灰岩とチャートってどこが違うんだろう?」と思った方も多いでしょう。しかし、石灰岩とチャートは全く異なっています。

まず石灰岩は最初に説明したとおり、炭酸カルシウムを主成分とする堆積岩でしたね。しかし、チャートの主成分は二酸化ケイ素です。二酸化ケイ素とは石英と同じ成分でしたね。両者に薄めた塩酸をかけると、石灰岩は泡を出して溶けますがチャートは何も起きません。これは石灰岩に含まれる炭酸カルシウムが塩酸と反応して二酸化炭素を出すため、石灰岩でだけ反応が起きたのです。

また、石灰岩はナイフで削ると石灰岩に傷ができますが、チャートの場合はナイフの方に傷ができます。チャートは石灰岩よりずっと硬いのです。

石灰岩と石灰石の違い

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地球科学の分野では炭酸カルシウムを主成分とした堆積岩を石灰岩と呼んでいますが、石灰岩を鉱業的な資源として取り扱う場合は鉱石名として「石灰石」と呼びます。どの視点から見るかによって名前が変わるだけで同じものです。

ちなみに、石灰岩が熱変成作用を受けることでできる大理石ですが、石材に使われる石灰石も大理石と呼ばれる場合もあるためさらにややこしくなっています。

石灰岩のでき方

石灰岩はほとんどが炭酸カルシウムでできていますが、どうしたら炭酸カルシウムがそんなにも堆積できるのでしょうか?石灰岩のでき方には2通りあるので1つずつ解説します。

\次のページで「生物起源のでき方」を解説!/

生物起源のでき方

生物起源のでき方

image by Study-Z編集部

石灰岩には2つの起源があり、そのうちの1つが生物を起源とするものです。生物と言っても、サンゴ礁やプランクトンなどの遺骸や殻は炭酸カルシウムを主成分としているため、それらが堆積したものになります。サンゴ以外ではウミユリや貝殻、有孔虫、フズリナなどが主な原料です。

サンゴなどの生物活動は現在も続いているため、現在進行系で石灰岩は作られています。

日本の石灰岩は2~3億年前の赤道付近で礁を形成したサンゴや有孔虫がプレート運動によって現在の日本まで移動して付加されたものです。これを付加体といいます。付加体に含まれている石灰岩は外洋で形成されているため、大陸起源の泥などの不純物を含んでいません。そのため炭酸カルシウムの純度がより高くなっており、品位が高いことで有名です。品位の高い石灰岩は鉄鉱石から鉄を生成する際の還元剤として利用されています。

また、同じように付加体に含まれる石灰岩はベトナムやタイなどでも見ることができるそうです。

化学起源のでき方

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水に炭酸カルシウムが溶け込んでいる場合、それらが沈殿して石灰岩を形成する場合もあります。温泉水やカルスト泉と呼ばれるものがそれに当たるんですよ。水に炭酸カルシウムが溶け込んでいる場合、地殻に石灰岩地形が存在していることが多いです。石灰岩でできた洞窟で鍾乳石と呼ばれるつららのような岩石を見ることができますが、これも石灰岩の一つになります。

石灰岩に塩酸をかけると…

石灰岩に塩酸をかけると泡を出しながら溶けていきます。この泡の正体は二酸化炭素です。石灰岩に含まれている炭酸カルシウムは塩酸と反応して、塩化カルシウムと水と二酸化炭素になります。

実は石灰岩とチャートを見分ける方法の1つが薄めた塩酸をかけることです。濃塩酸だと激しく反応して飛沫が飛び、危ないため必ず薄めるようにしましょう。石灰岩かチャートと思われる岩石に薄めた塩酸をかけた時、泡が出れば石灰岩、出なければチャートということです。

石灰岩が利用されているもの

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採掘された石灰岩の約半数はセメントに利用されます。他にはコンクリートの骨材用であったり、鉄工用やソーダ・ガラス楊など多岐にわたるんですね。工業業界では排ガスの有毒物質を取り除いて環境に配慮するためにも使われているんですよ。

意外な石灰岩の利用先としてがあります。国語辞書などに使われている紙は光沢があって、厚みの割に重いと思ったことはありませんか?紙に石灰岩の粉末を使うことで白色度が上がり、インクも乗りやすくなるんです。アート紙などは紙に石灰岩粉末の塗膜がなされています。このおかげで絵具のにじみ具合や筆跡に個性が出て独特な絵を完成させられるのですね。

また、食品添加物としても使用されているんですよ。食品のpHの調整や発酵の促進や抑制などに利用されています。また、こんにゃくの凝固剤として使われているんですよ。

日本ではどこで石灰岩が産出するのか調べてみよう

石灰岩は炭酸カルシウムを主成分とした堆積岩のことです。似ている岩石としてチャートがありますが、硬さや化学的特性が全く違うため区別は簡単なんですよ。サンゴや貝殻、プランクトンからできた石灰岩は海で生成されるため、石灰岩が産出した場所は元々海だったと言えます。

日本3大カルストといえば山口県美祢市の秋吉台、愛媛県と高知県の県境にある四国カルスト、福岡県北東部から北九州市へ広がる平尾台ですね。どれも広大な石灰岩台地ですが、山口県の秋吉台は特に絶景なのでおすすめですよ。あなたの住んでいる地域には石灰岩は産出するでしょうか?ぜひ石灰岩を見つけて、壮大な地球史を感じてみましょう。

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地学岩石・鉱物理科

簡単でわかりやすい「石灰岩」!チャート・石灰石との違いやでき方も地球科学専攻卒ライターが詳しく解説

君は石灰岩という岩石を知っているか?
小学校の理科でも登場するくらい、覚えていて欲しい岩石の一つです。石灰岩は日本中いろいろなところで産出し、石灰岩台地と呼ばれる場所は観光名所としても非常に有名です。その他にも、実は俺達の身近なものにもたくさん石灰岩が利用されているんです。

今回は石灰岩の特徴と、石灰岩によく似ているチャートとの見分け方について地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

地球科学専攻で大学院を卒業した地学大好き人間。出身大学の近くにカルスト台地があったため、石灰岩はとても身近な岩石であった。

石灰岩とは

image by iStockphoto

まずは石灰岩とは何かを説明しましょう。石灰岩は堆積岩の一つで、主成分は炭酸カルシウムです。英語ではlimestone(ライムストーン)と呼ばれます。炭酸カルシウムは石灰岩の50%以上を占めており、その他はマグネシウムやケイ素等で構成されているんですよ。基本的に白色ですが、含まれている不純物によって黒みがかっていたり黄色がかることもあります。日本では北から南まで多くの場所で産出し、現在は200以上の石灰岩鉱山が稼働しているそうです。

石灰岩はとても小さな鉱物結晶の集合体なんですよ。この鉱物は主に方解石かアラゴナイトで、石灰岩の起源や生成された環境などでどの鉱物で成り立っているかが異なります。

石灰岩が地下で熱による変成作用を受けると、結晶質石灰岩(大理石)になるんですよ。

石灰岩とチャートの違い

中学校の理科ではほぼ同時に石灰岩とチャートについて学びます。どちらも堆積岩で見た目も似ていることから「石灰岩とチャートってどこが違うんだろう?」と思った方も多いでしょう。しかし、石灰岩とチャートは全く異なっています。

まず石灰岩は最初に説明したとおり、炭酸カルシウムを主成分とする堆積岩でしたね。しかし、チャートの主成分は二酸化ケイ素です。二酸化ケイ素とは石英と同じ成分でしたね。両者に薄めた塩酸をかけると、石灰岩は泡を出して溶けますがチャートは何も起きません。これは石灰岩に含まれる炭酸カルシウムが塩酸と反応して二酸化炭素を出すため、石灰岩でだけ反応が起きたのです。

また、石灰岩はナイフで削ると石灰岩に傷ができますが、チャートの場合はナイフの方に傷ができます。チャートは石灰岩よりずっと硬いのです。

石灰岩と石灰石の違い

image by iStockphoto

地球科学の分野では炭酸カルシウムを主成分とした堆積岩を石灰岩と呼んでいますが、石灰岩を鉱業的な資源として取り扱う場合は鉱石名として「石灰石」と呼びます。どの視点から見るかによって名前が変わるだけで同じものです。

ちなみに、石灰岩が熱変成作用を受けることでできる大理石ですが、石材に使われる石灰石も大理石と呼ばれる場合もあるためさらにややこしくなっています。

石灰岩のでき方

石灰岩はほとんどが炭酸カルシウムでできていますが、どうしたら炭酸カルシウムがそんなにも堆積できるのでしょうか?石灰岩のでき方には2通りあるので1つずつ解説します。

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