この記事では「だしに使う」を勉強していきます。

慣用句「だしに使う」の意味は、「自分の利益のために他のものを利用すること」です。己のために親しい友達をだしに使ったりしていないよな?利用された側は気分が良くないぞ。今回の言葉はあまりいい意味の言葉ではないが、覚えておいて損はない。

正しく自信を持って使えるように、「だしに使う」の使い方や言葉の意味について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「だしに使う」の意味・語源は?

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ここでは「だしに使う」の言葉の正しい意味と語源をしっかり押さえましょう。

「だしに使う」の意味は「自分の利益のために他のものを利用すること」

まずは辞書で意味を確認してみましょう。

自分のために他のものを利用する。手段に利用する。口実に使う。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「出に使う」

「だしに使う」の意味は”自分のために他のものを利用すること”です。「だし」とは、主に和食料理の旨味となる「だし汁」を作るために使う、かつおぶしや煮干し、昆布などの素材のこと。また、そのような「だし」を火にかけて煮出す行為を、料理の言葉で「だしを取る」と言いますね。漢字で書くと「出し」や「出汁」です。

だしに使われたあとはどうなる?

慣用句「だしに使う」は、料理の「だし」こそが語源です。だしとなる煮干しや昆布は美味しい料理のための「だし汁」に使われています。しかし、だしを取ったあとは不用となり捨てられてしまうのです。使うだけ使ってあとは知りません。このような様から、他人や他のものを利用して自分の利益にすることを「だしに使う」と言い表すようになりました。

同じ意味で「だしにする」「だしにされる」という形もありますので、覚えておくと便利でしょう。人に使う場合、あまり良い意味ではありませんのでご注意ください。

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「だしに使う」の使い方は?

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「だしに使う」の意味がわかったところで、使い方を解説していきます。

例文で「だしに使う」の使い方をチェック!

いくつか「だしに使う」を使った例文に触れていきましょう。

1.久々の外回りをだしに使って、ランチは人気のお店で食べることにしよう。
2.共通の友人をだしに使って、気になる彼女の連絡先を手に入れた。
3.飲み会で飲まない人が車を出すなんて風潮は、だしに使われた気分になる。

1は、めったにない外回りを口実に、人気店でランチを食べようということ。外に出れば誰に見張られることもなく、どこにでもいけますよね。お昼の時間帯を少しずらせば行列のお店でもランチをすることは可能です。外回りをだしに使わない手はないでしょう。

2は、気になる女性とつながるために、共通の友達を利用したということ。どんな形で利用したかは想像におまかせしますが、あまり良い印象じゃないことが伝わってきますね。人をだしに使う典型的なケースと言えるでしょう。

3は、「だしに使われる」と受身になった表現です。飲み会でお酒を飲まない自分が、飲む人のために車を出すという意味になります。飲む人が明らかに利益を得ていますから、飲まない人は「だし」にされるだけですね。こういった使い方も覚えておくと良いでしょう。

「だしに使う」と似たような意味を持つ言葉は?

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「だしに使う」と似たような言葉があるので、一緒に覚えてしまいましょう。

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「人の褌で相撲を取る」:他人のものを利用して自分のためにする

「人の褌で相撲を取る(ひとのふんどしですもうをとる)」は”他人のものを利用して自分のためにする”という意味のことわざ。自分のふんどしがなければ相撲はできません。わざわざ他人のふんどしを使って相撲を取るという行為が”他人のものを自分の利益に転用する”という言葉になったのです。

たとえば「彼だけに話した企画内容を、知らぬ間に彼が企画者となって進んでいる。人の褌で相撲を取るような行為だ」であれば、自分の企画内容をそっくり真似されて彼のものにされたという意味になります。目も当てられない行動ですね。

「踏み台にする」:目的のためほかのものを足がかりとして利用すること

「踏み台にする(ふみだいにする)」は、”自分の目的達成のために足がかりとして利用する”という意味。「踏み台」ですから、人を足場に見立てて踏みつけるというイメージです。「だしに使う」と同じように人を対象に使うことが多いでしょう。マイナスな印象で使います。

たとえば「あの上司は自分がミスしても、いつも部下を踏み台にして平気な顔をしている」であれば、仕事上のミスがあったときは、面目を保つために部下を犠牲にするという意味です。上司のずる賢い感じが伝わってきますね。

「だしに使う」と反対の意味を持つ言葉は?

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「だしに使う」と反対の意味を持つ言葉は何があるのでしょうか。いくつか見ていきましょう。

「敵に塩を送る」:敵の弱っているときにその苦境を救う

「敵に塩を送る」は”敵の弱みを利用せず、逆に救うこと”の意味です。スポーツの場面でよく使われています。たとえば「あれだけ罵り合っていた二人だったが、流血まみれの敗者に最後はS選手が寄り添い、敵に塩を送る形で幕を閉じた」のような使い方です。

敵対関係にある二人でしたが、スポーツを通じて心が通い合ったのでしょうか。相手が弱っているところに「だしに使う」ような卑劣なことはせず、スポーツマンシップを重んじて真摯に手を差し伸べているのです。「敵に塩を送る」はこのようにポジティブな言葉になります。

「世のため人のため」:世の中のためや他人のためになること

「世のため人のため」は”世の中のためや他人のためになること”を表す言葉です。テレビドラマなどで聞いたことがあるのではないでしょうか。とても前向きな言葉ですね。たとえば「世のため人のために生きていくことが一番だ」であれば、自分以外のすべての人のために尽くすことが大切だという意味になります。

ボランティア精神に溢れているようで聞こえは良いですが、人によっては難しい印象を与えかねません。本当に尽くしたい気持ちがあるときに使ってください。

「だしに使う」の意味を理解して正しく使ってみよう!

この記事では「だしに使う」の意味や語源・使い方・類語・対義語などを説明しました。「だしに使う」の語源は、和食の基礎「だし汁」のために使われる、かつおぶしや昆布などの「だし」のことでした。転じて”自分の利益のために他人や他のものを利用する”という意味の慣用句です。

ビジネスやスポーツの世界では、出世やランキングなど他との競い合いが多いことから誰かを「踏み台」にしたり、自分が「だし」にされたりすることが日常茶飯事かもしれませんね。

皆さんは、そういったずる賢い争いには巻き込まれないようにしてください。なんでもだしに使わず、自分の力で素直に生きていくのが一番良いでしょう。

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国語言葉の意味

”だし”って料理の?「だしに使う」の正しい意味や語源・使い方・類語など現役日本語教師がわかりやすく解説

この記事では「だしに使う」を勉強していきます。

慣用句「だしに使う」の意味は、「自分の利益のために他のものを利用すること」です。己のために親しい友達をだしに使ったりしていないよな?利用された側は気分が良くないぞ。今回の言葉はあまりいい意味の言葉ではないが、覚えておいて損はない。

正しく自信を持って使えるように、「だしに使う」の使い方や言葉の意味について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

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「だしに使う」の意味・語源は?

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ここでは「だしに使う」の言葉の正しい意味と語源をしっかり押さえましょう。

自分のために他のものを利用する。手段に利用する。口実に使う。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「出に使う」

「だしに使う」の意味は”自分のために他のものを利用すること”です。「だし」とは、主に和食料理の旨味となる「だし汁」を作るために使う、かつおぶしや煮干し、昆布などの素材のこと。また、そのような「だし」を火にかけて煮出す行為を、料理の言葉で「だしを取る」と言いますね。漢字で書くと「出し」や「出汁」です。

だしに使われたあとはどうなる?

慣用句「だしに使う」は、料理の「だし」こそが語源です。だしとなる煮干しや昆布は美味しい料理のための「だし汁」に使われています。しかし、だしを取ったあとは不用となり捨てられてしまうのです。使うだけ使ってあとは知りません。このような様から、他人や他のものを利用して自分の利益にすることを「だしに使う」と言い表すようになりました。

同じ意味で「だしにする」「だしにされる」という形もありますので、覚えておくと便利でしょう。人に使う場合、あまり良い意味ではありませんのでご注意ください。

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