この間クラス内で中間テストがあり、今日が返却だったんです。で、ある生徒の結果があまり良くありませんでした。結果を渡したときに「今日は朝から母さんに叱られたし、傷口に塩だ…」と漏らしていましたよ。

本人には可哀想ですが、言葉の使い方には感心しました。正しい。今の話で簡単な意味は理解できたのではないでしょうか。今回は、その「傷口に塩」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「傷口に塩」の意味や使い方は?

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「傷口に塩」という言葉、何となく聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。見聞きしたことがないという人も、何となく意味は想像できそうですよね。まずは、その「傷口に塩」の意味と使い方について確認していきましょう。

「傷口に塩」の意味は「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかる」

最初に、「傷口に塩」の辞書での意味を確認していきましょう。「傷口に塩」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「傷口に塩」

「傷口に塩」は「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること」という意味の表現です。何か悪い事態が発生し、その事態が完全には解決していないうちに別の悪い事態が襲い掛かってくることを表現します。「傷口に塩を塗る」という言い方をする場合も多いですね。

傷口はただでさえ痛いものですが、そこに塩を塗るとどうなるかは想像できますよね…?そうです。さらに痛くなりますね。この痛みがさらにひどくなる様子から、「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること」という意味を表すようになったと考えられています。

「傷口に塩」の使い方を例文とともに確認

続いて、「傷口に塩」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「傷口に塩」が文中で使用されている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、見ていきましょう。

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1.朝は母さんに怒られ、学校では先生に怒られる。まさに傷口に塩とはこのことだ。家に帰りたくないなぁ。
2.上司にミスを咎められ退勤が遅くなってしまった。そして人身事故が発生し電車が1時間以上遅延している。まさに傷口に塩だ。
3.いじめ被害を相談してきた子どもを無視するなんて、子どもの傷口に塩を塗るようなひどい行為だ。

例文1では、朝に母親に怒られるという第1の悪い事態が発生。その後学校で先生に怒られるという第2の悪い事態が発生していますね。このように悪い事態が立て続けに発生した場合に、「傷口に塩」はその状況を表すピッタリの表現です。

例文2では、上司にミスを咎められ退勤が遅くなるという第1の悪い事態の後、人身事故で電車が遅延するという第2の悪い事態が発生。こちらも、悪い事態が立て続けに発生していますよね。

例文3では、第1の悪い事態は「子どもがいじめられたこと」です。そして第2の悪い事態は、「子どもの相談を先生が無視したこと」ですね。こちらも悪い事態が立て続けに発生していますが、学校の先生たちは子どもたちのいじめの問題には真剣に向き合って対処してほしいですよね。

「傷口に塩」の類義語は?

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次に、「傷口に塩」の類義語を確認していきましょう。「傷口に塩」の類義語は「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」「弱り目に祟り目」「一難去ってまた一難」です。意味やニュアンスを確認し、「傷口に塩」と比較してみてください。

「泣きっ面に蜂」:不運・不幸が重なること

「泣きっ面に蜂」は「不運・不幸が重なること」という意味のことわざです。何か悪いことが起きて泣いているところに、顔を蜂に刺されたらさらに嫌ですよね。意味やニュアンスは「傷口に塩」と違いはありません。

辞書では「泣き面に蜂」という形で掲載されている場合が多いです。ただ、実際に話す際に使う場合は、「っ」を入れた「泣きっ面に蜂」を用いることが多いですね。

「踏んだり蹴ったり」:続けざまにひどい目に遭うこと

「踏んだり蹴ったり」は「続けざまにひどい目に遭うこと」という意味の慣用句です。良くないことや不幸なことが立て続けに発生した際に、その状況を嘆く際に使用される表現ですね。意味やニュアンスは「傷口に塩」と大差ありません。

大元の意味は「踏まれたうえに蹴られる」です。他人に踏まれたうえにさらに蹴られたら、それはもう嫌な事態の連続ですよね…。

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「弱り目に祟り目」:不運が重なること

「弱り目に祟り目」は「不運が重なること」「困っている時にさらに重ねて災難に遭うこと」という意味のことわざです。「落ち目に祟り目」という場合もあります。意味やニュアンスは「傷口に塩」とほぼ同じですね。

「一難去ってまた一難」:一つ災難がすぎ、すぐに次の災難が発生

「一難去ってまた一難」は「一つ災難がすぎ、すぐに次の災難が発生すること」という意味のことわざです。「傷口に塩」と似たような場面で使用されますが、「一難去ってまた一難」の場合、1つ目の悪い事態は既に終結しているというニュアンスが含まれています。一方の「傷口に塩」の場合、1つ目の悪い事態は完全には終結していません。

「傷口に塩」の英語表現は?

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最後に、「傷口に塩」の英語表現を確認していきましょう。「傷口に塩」の英語表現は「rub salt into the wound」です。意味や使い方を確認していきましょう。

「rub salt into the wound」:傷口に塩をすり込む

「rub salt into the wound」は、直訳すると「傷口に塩をすり込む」となり、「傷口に塩」と同じ意味を表す英語表現です。使われている単語も意味も日本語と同じという、なかなか珍しい表現ですね。例文を確認していきましょう。

1.The day she dumped me, I found out she was cheating on me. I feel like salt was rubbed into the wound.
彼女にフラれたその日に、彼女の浮気が発覚した。傷口に塩を塗られた気分だ。

2.I overslept and forgot my passport. Today is like rubbing salt into the wound.
寝坊した上にパスポートを忘れた。今日は傷口に塩のような1日だ。

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「傷口に塩」を塗られても、ひるまないで!

今回は「傷口に塩」について解説しました。「傷口に塩」は「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること」という意味の表現です。何か悪い事態が発生し、その事態が完全には解決していないうちに別の悪い事態が発生することを表現します。

人間、生きていれば「傷口に塩」を塗られたように感じる時も多々あることでしょう。ただ、そこで怯んだり腐ったりしないように。諦めずに前に進んでいけば、いつかきっといい事がありますよ。

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国語言葉の意味

簡単に想像がつく二重の痛み…「傷口に塩」の意味や類義語などを院卒日本語教師が分かりやすく解説

この間クラス内で中間テストがあり、今日が返却だったんです。で、ある生徒の結果があまり良くありませんでした。結果を渡したときに「今日は朝から母さんに叱られたし、傷口に塩だ…」と漏らしていましたよ。

本人には可哀想ですが、言葉の使い方には感心しました。正しい。今の話で簡単な意味は理解できたのではないでしょうか。今回は、その「傷口に塩」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「傷口に塩」の意味や使い方は?

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「傷口に塩」という言葉、何となく聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。見聞きしたことがないという人も、何となく意味は想像できそうですよね。まずは、その「傷口に塩」の意味と使い方について確認していきましょう。

「傷口に塩」の意味は「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかる」

最初に、「傷口に塩」の辞書での意味を確認していきましょう。「傷口に塩」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「傷口に塩」

「傷口に塩」は「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること」という意味の表現です。何か悪い事態が発生し、その事態が完全には解決していないうちに別の悪い事態が襲い掛かってくることを表現します。「傷口に塩を塗る」という言い方をする場合も多いですね。

傷口はただでさえ痛いものですが、そこに塩を塗るとどうなるかは想像できますよね…?そうです。さらに痛くなりますね。この痛みがさらにひどくなる様子から、「悪い状態の上に、さらに災難がふりかかること」という意味を表すようになったと考えられています。

「傷口に塩」の使い方を例文とともに確認

続いて、「傷口に塩」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「傷口に塩」が文中で使用されている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、見ていきましょう。

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