
端的に言えば舌を出すの意味は「陰で人をあざ笑うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「舌を出す」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/イオリ
日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。
「舌を出す」の意味は?
「舌を出す」には、次のような意味があります。
1.陰で人をばかにしたり、あざけり笑ったりする。また、そういうときの動作。
2.恥ずかしさなどをごまかす動作。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「舌を出す」
ペロッと「舌を出す」仕草を思い浮かべたとき、どんな状況が想像出来るでしょうか?現実ではあまり身に覚えがなくても、漫画やアニメなどでそんなシーンを目にしたことがある人も多いかもしれません。そしてその「舌を出す」仕草は、まさに上にある「人をばかにする」や「恥ずかしさをごまかす」といった状況で見かけるものではないでしょうか。
「舌を出す」は、恥ずかしさをごまかすときに思わずやってしまうクセのような動作のことです。そして「舌を出す」を慣用句的に用いると、実際に舌を出す動作を伴わなくても「陰で人をばかにしてあざけり笑う」といった意味を表すことも出来ます。
ここで注意したいポイントは、「動作と状態」を表すか「動作だけ」を表すかというところですね。「舌を出す」と言って「陰でばかにする」の意味を表現するときは、動作だけでなく感情の状態も表せます。しかし「恥ずかしさをごまかす」の意味で用いるときは動作そのものしか表せません。実際に舌を出してはいないものの恥ずかしいのをごまかす、という状態を「舌を出す」とは言い表せないということですね。
では何故、「舌を出す」が上記のような意味を表すのでしょうか。語源や使い方、類義語なども含め一緒に見ていきましょう。
「舌を出す」の語源は?
まず「舌を出す」の語源を確認しておきましょう。
と言っても、語源は非常にシンプルなものです。先ほど想像してもらった「舌を出す」場面は「人をばかにするとき」にこっそり陰で舌を出していたり、「恥ずかしいとき」に舌を出しておどけてみたりというものでしたね。そしてこれがそのまま、言葉の語源として成り立つのです。
たとえば舌を出す動作で人をばかにするもの…というと、日本ではあかんべえがありますよね。本来あかんべえとは下瞼を引き下げる動作のことを指していたのですが、今ではどちらかと言うと舌を出す方に重点が置かれています。べーっと相手に舌を出すだけでもあかんべえと見なされたりもしますね。つまりベーっと舌を出す行為は「相手をばかにする行為」とイコールで結ぶことが出来るのです。これが「舌を出す」の一つ目の意味「人をあざけりばかにする」に繋がっています。
そして恥ずかしいときに舌を出すというのも、恥をごまかす代償行為としてよく行われていたことなのです。焦ったり恥ずかしくなったとき無意識に唇を舐めてしまうクセと言えば、思い当たる人もいるのではないでしょうか。舌を出す行為もこれとよく似たもので、恥ずかしいときに舌を出してしまうのは心理的にも認められていることなのです。
このようにして、「舌を出す」という言葉は動作と動作の根源にある感情を表す慣用句として、使われるようになりました。
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