この記事では「奉納」について解説する。

端的に言えば奉納の意味は「神仏にお供えや芸能披露などをして喜んでもらうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「奉納」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「奉納」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「奉納」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「奉納」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「奉納」の意味は?

「奉納」には、次のような意味があります。

1. 神仏を楽しませ鎮めるために、供物を供えたり、その前で芸能・競技などを演じたりすること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)

「奉納」(ほうのう)の「奉」(ほう)は、「ささげる」という意味で使われる場合が多く「奉納」の場合も「ささげ、差し上げる」という意味で使われています。しかし、「奉」は「目上の人に仕える」場合や「上からの命を受ける」などの意味でも使われ、例えば、「奉公する」(ほうこうする)や奉仕する(ほうしする)などはよく使われる言葉ですよね。さまざまなケースで使われる「奉」ですが、神仏や目上の人に対して使われる漢字だと理解しておけばよいのではないでしょうか?

「奉納」(ほうのう)「納」(のう)も「役所におさめる納税(のうぜい)」や「主君に献上(けんじょう)する」など、「納める」という意味で使われる場合が多い漢字ですが、「納得する」など、受け入れるなどの意味で使用される場合もあります。

「奉納」の語源は?

古来から日本人も生活の中で、人間の力ではどうにもならない圧倒的な力を持つものとして「神」や「自然」を意識し、敬いながら、あるいは畏怖(いふ)を感じながら祀ってきました。狩猟生活をする山の民は、「山の神」を信仰し、農耕を営む人々は「田の神」を称え、漁を行う漁村の人々は、「海の神」に祈りながら大漁を願ったのです。人々が神に捧げたものはさまざま。金銭や宝物にはじまり、神楽(かぐら)や謡曲(ようきょく)を神に捧げ、山車(だし)や神輿(みこし)に神を乗せ町を練り歩きました。

いつのころから奉納が始められたのかは特定できませんが、神話の時代、「古事記」(こじき)や「日本書紀」(にほんしょき)にも既に踊りを奉納する場面が登場します。岩の向こう側に閉じこもってしまった天照大神(アマテラスオオミカミ)のために他の神々たちは、踊りを奉納したのです。その賑やかな様子に興味を持ったアマテラスが岩の陰から覗いたところを他の神が岩を取り除き、再び世の中を太陽が照らしはじめたと言われています。

\次のページで「「奉納」の使い方・例文」を解説!/

「奉納」の使い方・例文

「奉納」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 寺社に奉納されるのは、金品や商品、お供えといった物品だけでなく、伝統音楽や神楽(かぐら)などの芸能や相撲などの競技なども捧げられています。

2. 現在では、絵馬に願い事を書いて神社に奉納することが習慣になっていますが、もともとは本物の馬を奉納していたと言われています。

奉納は、お金や物品だけでなく、いろいろなかたちで捧げられているのですね。

「奉納」の類義語は?違いは?

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次に「奉納」の類義語を見ていきましょう。

「寄進」

「奉納」と同様に「神仏を敬い財物を寄付する」という意味を有する言葉が「寄進」(きしん)です。「奉納」が「逸品や産品、お酒」のお供えや、「芸能や競技」を披露など、広義な物品や行為が対象になるのに対して、「寄進」は、現在では特に「土地」や「金銭」を寄付する場合によく使われますが、室町時代や戦国の世では、「太刀」や「甲冑」(かっちゅう)、「弓矢」などの武具も寄進されました。「寄進」は自らの意思で寄付する行為のことを言いますが、人に対して、仏道に励むことを勧め、寄付金を募ることを「勧進」(かんじん)と言います。

\次のページで「「寄贈」」を解説!/

「寄贈」

「奉納」と同様に個人や企業が「物品などを提供する、無償で差し出す」ことを示す言葉に「寄贈」(きそう)という言葉もありますね。但し、「寄贈」の場合は「寄贈先」が寺社以外の場合に使われます。例えば、図書館や美術館、病院や施設など公共性の高い場所に寄付することも多いですね。

「奉納」の対義語は?

次に「奉納」の反対語を見ていきましょう。「奉納」とは、「神仏にお供えすることや踊りなどを披露すること」でしたね。「奉納」の目的とは、農耕社会であれば、その年の豊作を願い、実際に豊作だった場合には、神に与えられた自然の恵みを感謝して行われる場合も多かったのです。その反対の意味を考えてみましょう。

「罰が当たる」

「奉納」とは、「神の恵みに対して人々が献上するもの」ですから対義語については、「人々が神の怒りに触れて、神から苦難や不幸な状況を受けること」になるのではないでしょうか?そんな意味を持つ言葉に「罰が当たる」(ばちがあたる)があります。昔話の定番に「猟師が無断で入ってはいけない地域に入り込み、そこで出会った白い大蛇を殺して食べてしまったが、実はその大蛇は村の守り神の化身であり、猟師の家族や一族が次々に謎の死を遂げた。」という話もあります。多くの地域でタブーを犯して「罰が当たる」という事態を引き起こすという民話はありますね。

「奉納」の英訳は?

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それでは、次に「奉納」の英訳を見ていきましょう。

「dedication」

「奉納」にピッタリの英単語のひとつが、「dedication」(dèdɪkéɪʃən)です。「奉納」という言葉の他に「献身」(けんしん)や「献上」(けんじょう)、「進呈」(しんてい)の意味でも使われます。「奉納」が神様、仏様に対しての言葉であるのに対して、「dedication」は、神仏以外にも広い対象に使われ、「捧(ささ)げる対象」はなんであっても構いません。捧げる内容も「金品」から「物品」、「サービス」から「労働」まで、どんな種類にでも使えるのです。名詞、「dedication」の動詞は、「dedicate」(dédɪkèɪt) となります。

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「奉納」を使いこなそう

この記事では、「奉納」の意味や使い方について解説してきました。「奉納」とは、神仏を楽しませ鎮めるために、供物をしたり、その前で芸能・競技などを演じたりすることでした。それぞれの町に伝統的なお祭りがありますが、本来は、神仏に奉納するための催しだったのですね。それはそれとして、いくつもの屋台が並び、神輿(みこし)を担いで練り歩く日本独特の祭りの雰囲気はこれからもずっと残していきたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「奉納」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「奉納」について解説する。

端的に言えば奉納の意味は「神仏にお供えや芸能披露などをして喜んでもらうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「奉納」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター、eastflower。「奉納」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「奉納」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「奉納」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「奉納」の意味は?

「奉納」には、次のような意味があります。

1. 神仏を楽しませ鎮めるために、供物を供えたり、その前で芸能・競技などを演じたりすること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)

「奉納」(ほうのう)の「奉」(ほう)は、「ささげる」という意味で使われる場合が多く「奉納」の場合も「ささげ、差し上げる」という意味で使われています。しかし、「奉」は「目上の人に仕える」場合や「上からの命を受ける」などの意味でも使われ、例えば、「奉公する」(ほうこうする)や奉仕する(ほうしする)などはよく使われる言葉ですよね。さまざまなケースで使われる「奉」ですが、神仏や目上の人に対して使われる漢字だと理解しておけばよいのではないでしょうか?

「奉納」(ほうのう)「納」(のう)も「役所におさめる納税(のうぜい)」や「主君に献上(けんじょう)する」など、「納める」という意味で使われる場合が多い漢字ですが、「納得する」など、受け入れるなどの意味で使用される場合もあります。

「奉納」の語源は?

古来から日本人も生活の中で、人間の力ではどうにもならない圧倒的な力を持つものとして「神」や「自然」を意識し、敬いながら、あるいは畏怖(いふ)を感じながら祀ってきました。狩猟生活をする山の民は、「山の神」を信仰し、農耕を営む人々は「田の神」を称え、漁を行う漁村の人々は、「海の神」に祈りながら大漁を願ったのです。人々が神に捧げたものはさまざま。金銭や宝物にはじまり、神楽(かぐら)や謡曲(ようきょく)を神に捧げ、山車(だし)や神輿(みこし)に神を乗せ町を練り歩きました。

いつのころから奉納が始められたのかは特定できませんが、神話の時代、「古事記」(こじき)や「日本書紀」(にほんしょき)にも既に踊りを奉納する場面が登場します。岩の向こう側に閉じこもってしまった天照大神(アマテラスオオミカミ)のために他の神々たちは、踊りを奉納したのです。その賑やかな様子に興味を持ったアマテラスが岩の陰から覗いたところを他の神が岩を取り除き、再び世の中を太陽が照らしはじめたと言われています。

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